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2020年秋季総合特集Ⅰ(7)/top interview ユニチカ/マーケットインを徹底/常務執行役員 機能資材事業本部長 竹歳 寛和 氏/部門連携で川下戦略を推進

2020年10月26日(Mon曜日) 午前11時20分

 ユニチカグループは2020年4月から長期ビジョン「G―ステップ30」、中期3カ年計画「G―ステップ30ファースト」に着手した。連結業績を19年度の売上高1195億円、営業利益55億円から22年度をめどに1470億円、110億円に引き上げる。同時に、4月から新組織へと移行し、高分子、機能資材の2本部制に再編した。好調なフィルム事業の陰に隠れ、この間、元気な話題に乏しかったユニチカの繊維事業。初代本部長に就任した竹歳寛和常務執行役員に中期的な拡大戦略を聞いた。

  ――4月1日付で組織再編を実施しました。

 機能資材事業本部を新設し、その傘下にACF事業部、ガラス繊維事業部、ガラスビーズ事業部と高分子事業本部にあった不織布事業部、繊維事業本部にあった産業繊維事業部を置きました。繊維事業本部がなくなり、これまでの3事業本部を当事業本部と高分子事業本部の2本部制に集約しました。

 当社は長くプロダクトアウト型の組織で各事業を展開してきました。しかし、各事業を出口から見て、もっとマーケットインを徹底していくために今回の組織再編を実施しました。

 自動車も土木・建築も工業資材も生活資材も共通するテーマがけっこうあります。これまでは各部門がばらばらに取り組んできましたが、横串を入れて部門間の連携を強化し、新規事業、新規アイテムを掘り起こしていこうということです。

  ――具体的な開発は進んでいますか。

 これまでは原糸、原反の材料売りがほとんどでした。各部門がそれぞれの材料を持ち寄って、加工を含めて融合させた商材で川下展開ができないかをいろいろと考えています。

 ガラス繊維による透明な不燃シートや大規模商業施設用の延焼防止用のボード、あるいは東京ドームのような天井用の膜などを既に具体化しています。あるメーカーが販売しているものすごく軽い不燃の天井材は当社製です。

  ――5G(第5世代移動通院システム)がらみのビジネスが好調なようですが。

 通信スピードが100倍に高まるため、高熱が発生するので誘電率の低い素材が求められるようになっています。当社はCCL(プリント基板)向けにガラス繊維で開発に取り組んでいます。極薄タイプを作れるのは世界に当社を含む2社しかなく、既に一部で採用が進んでいます。

  ――新本部となった20年度の状況はいかがですか。

 4月を例年通りに迎えることができたんですが、5月から新型コロナウイルス感染拡大の影響が出始め、6月になってマイナスの影響が顕在化してきました。だいたい3カ月遅れでわれわれのところには効いてくるみたいです。

 分野別に状況を見てみると、自動車関連で大きなマイナスが発生しています。不織布や産業繊維、塗料の粉砕分散向けに販売するガラスビーズなどが苦戦に転じました。

 次に良くないのが建築関連。ICクロス向けに展開するガラス繊維はこれまでは好調だったんですが、ここに来て中国や韓国大手が販売するスマートフォンに勢いが失われつつあり、当社からの荷動きも鈍化しています。

  ――2020年度から新しい中期3カ年計画をスタートさせました。

 大きく伸ばしていきたいのは、高付加価値ゾーンをターゲットとするガラス繊維による各種商材です。5G狙いの取り組みを強化しており、既にCCLメーカーを経由する海外の大手スマートフォンメーカーに向けた商流が動き出しています。

 産業繊維も伸ばしていきたいと考えています。新型コロナ禍の影響で把握しにくいのですが、事業性のいいものと悪いものとに分類し、いい方に力を入れていきます。例えば、膜の材料・支持体向けの不織布、ポリエステル短繊維の販売は現在も堅調を維持していますから今後もっと拡大します。

  ――ポリエステル高強力糸の増産を進めていましたが。

 2成分のバインダー繊維構造を持たせてあるため、例えばネットを作る時にバインダーが溶けて樹脂化しネットそのものがしっかりと固まります。新型コロナ禍で機械メーカーの技術担当が当社の工場に来られないので、残念ながら設備投資は計画通りに進んでいません。年内に何とかしたいところですが、今は不透明な情勢です。

  ――不織布事業の最近の状況はいかがですか。

 スパンボンドは新型コロナ禍でいまひとつです。欧米向けの輸出が低調なため、タイ・タスコでの進捗(しんちょく)は当初計画よりも遅れ気味に推移しており、早く軌道に乗せなければなりません。

 スパンレースはインバウンド需要が消滅したフェースマスク向けや冷夏で制汗シート向けが苦戦に転じたため、昨年はさえなかったんですが、20年度に入り足元の状況はかなり改善されてきています。新型コロナ禍でユニチカトレ―ディングがアイソレーションガウン400万枚を受注したこともプラスに作用しました。合弁で展開する愛媛県のUMCTで先に新工場がスタートしたことですし、今年は相当、期待できます。

  ――中期計画でどのような設備投資を考えていますか。

 ガラス繊維では拡大投資ではなく産資工場を建て替え、レイアウトの見直しなどで効率化を図ります。ポリエステル高強力糸では当初の計画を早く実現しなければと考えています。スパンレースでは合弁工場で新系列が立ち上がったことですし、あとは拡販するだけです。

〈私の新常態/愛犬の散歩に夢中〉

 新型コロナウイルス感染拡大で、仕事が終わってからまっすぐに帰宅する機会が増えた。「時間というものを感じるようになった」そうだ。以前は会食する機会の多い日常を過ごしていたのが、いざ時間ができると、何をしたらいいのかを考えている自分がいることに気付いたりすると言う。こんなとき「仕事を引退した後って、こんな感じになるのかと不安になる」。これを機会に自分を発見できるように努めながら、最近は愛犬のチワワ2匹の散歩にはまっている。

〈略歴〉

 たけとし・ひろかず 1983年4月ユニチカ入社、2010年6月ユニチカトレ―ディング取締役、12年7月執行役員特需部担当ユニチカトレ―ディング常務取締役兼任、13年7月執行役員特需部担当ユニチカトレ―ディング代表取締役社長兼任、15年4月上席執行役員繊維事業本部長兼特需部担当ユニチカトレ―ディング代表取締役社長兼任、16年4月上席執行役員繊維事業副本部長兼特需部担当ユニチカトレ―ディング代表取締役社長兼任、17年4月執行役員特需部担当ユニチカトレ―ディング代表取締役社長、19年4月上席執行役員機能材事業本部長、20年4月常務執行役員機能資材事業本部長