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2020年秋季総合特集Ⅰ(8)/top interview 東洋紡/本部年商を1.5倍に/専務執行役員生活・環境ソリューション本部長 西山 重雄 氏/3本柱を強化・拡充

2020年10月26日(Mon曜日) 午前11時21分

 東洋紡は4月1日付の組織改正で、これまでの5本部を「フイルム・機能マテリアル」「モビリティ」「生活・環境」「ライフサイエンス」の4ソリューション本部体制に再編した。狙うのは、顧客や社会の課題解決に貢献するソリューション提供型の取り組みを社内に浸透させること。生活・環境ソリューション本部には衣料繊維事業や不織布事業、エクスラン(アクリル)事業、スーパー繊維事業などが集結した。初代本部長に就任した西山重雄専務執行役員に中期的な戦略を聞いた。

  ――4月1日付で大がかりな組織再編を実施しました。

 これまでの5本部をフイルム・機能マテリアル、モビリティ、生活・環境、ライフサイエンスの4ソリューション本部体制に再編しました。これまでは素材別にくくった組織体制をとってきましたが、社会的課題に貢献するとともに、顧客にソリューションを提供し続けていくにはマーケットや用途を切り口とする体制が望ましいということで今回の4本部制となったわけです。

 最初に決まったのがモビリティ本部、次いでフイルム、ライフサイエンスが固まりました。四つ目を何にするかで議論し、生活・環境に落ち着きました。悪く言えば寄せ集めのような組織ですが、お客さんがいろいろとお困りの中、当本部には攻めていける武器が数多くそろっています。当社の中核を担う強い本部へと成長させていきます・

  ――特に重視している事業は。

 とがったゾーンでトップシェアを占めている高機能不織布、RO膜(逆浸透膜)や海水淡水化装置といった環境ビジネス、スーパー繊維やクッション材「ブレスエアー」などの機能資材、この3本柱を伸ばします。本部の年商は現状で1100億円ぐらいです。これを25年度をめどに1・5倍規模に引き上げます。

  ――不織布事業の最近の状況はいかがですか。

 新型コロナウイルス感染拡大に伴い空調や空気清浄機の売れ行きが好調なため、当社のAC材料(フィルター)にも各方面から引き合いが舞い込んでいます。メルトブロー不織布を主力にしてきたエレクトレット濾材「エリトロン」を展開しており、大手空調機メーカー向けが順調なほか韓国メーカー向けにもデリバリーしています。

 また、新型コロナ禍によるマスク需要の増大という追い風を受けてメルトブローの販売量が急増しています。ある大手ユーザーからはもっと高性能タイプが欲しいという要望が寄せられており現在、「エリトロン」などを複合する新しい原反の開発を急いでいるところです。

 一方、スパンボンドはもうひとつです。土木資材がよくありませんし、ばね受け材も苦戦気味です。しかし、土木建築資材は年度後半に受注のピークを迎えるため、そのタイミングに向けた作り込みを進めています。

 日本列島は最近、毎年のように自然災害に見舞われており、災害対策のための土木資材の開発に大学などとの共同で取り組んでいます。これらは、いずれ東南アジアへも提案し商圏拡大を目指します。

  ――機能材は好調なようですが。

 クッション材「ブレスエアー」が絶好調で推移しています。敦賀事業所で生産設備を再建して以降、増産が続いています。16~17年に販売量のピークを記録していたんですが、20年度で過去最高の更新が確実になってきました。

 巣ごもり需要の増大でマットレス向けの販売が急増しています。ある有名な商品は使っているうちにへたってくるんですが、「ブレスエアー」はへたりません。

 来年の春に増設を計画しており、そのときに広幅化も検討しています。防ダニ性能を求める要望が寄せられているため、来春投入のスケジュールで防ダニタイプの開発にも力を入れています。「ブレスエアー」は家庭洗濯ができ、すぐに乾くのも特徴ですから、この点を病院や介護施設に売り込んでいき用途拡大につなげていきます。マレーシアではある程度の規模の医療機関でテストを続けています。

 新幹線の最新車両N700Sのシート材には「ブレスサーモ」が搭載されており、そのほかの民間の電鉄会社での採用も進んでいます。バイクのシート材にも広げていこうと思っています。

  ――スーパー繊維はいかがですか。

 新型コロナ禍で自動車業界が苦戦に転じたため、耐切創手袋向けが好調だった「ツヌーガ」の販売が苦戦に転じました。特にインド向けが大きかったため、現地のロックダウン(都市封鎖)によって大打撃を受けました。しかし、第4四半期からは回復すると見通しています。

 「イザナス」では、低クリープ性(伸びにくい)が特徴の新タイプ開発にめどを付けました。もう一度、改めてロープや係留用ホーサーの用途に攻勢をかけたいと考えています。近々、1・5倍増に増やす増設にも着手します。

  ――衣料繊維事業はかなり苦しいのでは。

 ユニフォームは実用衣料ですから新型コロナ禍の影響は相対的に小さいのですが、レストランのユニフォームなどにマイナスの影響が出ています。反対にメディカル白衣、介護施設向けのユニフォームは堅調です。交換回数が増えたのかリネン向けの商材も好調です。

 一般衣料では、在宅勤務の浸透で巣ごもり需要が発生したニットシャツ「Zシャツ」が絶好調で推移しています。抗ウイルス加工「ナノバリアー」をつけてほしいという要請が少なくないため現在、開発を急いでいます。アクリルでは「エクスラン」が低迷していますが、アクリレートは好調です。

〈私の新常態/エアロバイクを購入しトレーニング〉

 運動といえば毎日の通勤と土日のゴルフくらいだったのが、新型コロナ禍に伴い「日常的に体を動かすようになった」という。ユーチューブの腹筋で体を鍛える番組を見ながら自らも腹筋にトライ。あるいは、エアロバイクを購入し、「多いときは15~20分のトレーニングを3セットこなす」。走った距離が表示されるため、大阪~京都間相当分を走った時は、「小旅行に行ったような気分に浸れる」と満足そう。食べ物にも気を使い、自分で作った蜂蜜ニンニクを「よく食べるようになった」そう。

〈略歴〉

 にしやま・しげお 1983年4月東洋紡績(現・東洋紡)入社。2014年4月参与繊維生産・技術総括部長兼テキスタイル生産技術・開発部長及び東洋紡STCへ出向、16年4月参与繊維生産技術総括部長兼テキスタイル生産技術・開発部長及び東洋紡STCへ出向、17年4月執行役員東洋紡STC社長、18年6月取締役兼執行役員、19年4月取締役兼常務執行役員、20年6月専務執行役員