元信金マンが 染工場に光を当てる (上)

2020年11月18日(Wed曜日)

信金を辞め、トーゴへ

 日本には、世界的に見ても優れた技術を持つ染色工場が多数存在する。しかし、その多くは安い加工料金しか得られず、採算難に苦しんでいる。この状況を何とかしたいと思った信用金庫の営業マンがいた。彼のアイデアは、西アフリカのトーゴの綿生機と京都の染色技術を組み合わせるというにわかには理解し難いもの。しかし、尋常ならざる行動力で、そのアイデアを形にしつつある。おぼろげに見えてきた彼の構想は、これまでにないものだった。

(文中敬称略)

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 京都信用金庫の営業員だった中須俊治(30)はある日、取引先の一つである手捺染・手書き染色工場、アートユニ(京都市)の代表である西田清の「この道40年以上の職人技」を見て息をのんだ。その技を求めて、誰もが知るフランスの著名ブランドも来日すると言う。

 「スーツでビシッと決めた自分より、染料で汚れた西田氏の方がカッコいい」と思った。ところが、工賃が安く採算は良くないと言う。何百社もの財務分析を行ってきた中須は、職人技という数字で表わせない価値が、正当に評価されていないことに気付く。そして、自分ならではのやり方でその価値に光を当てたいと思い始めた。

 中須は大学4年生の時に休学し、西アフリカのトーゴに行き、同国のラジオ局の番組制作を半年間担当した。前年に起きた東日本大震災をテーマにした番組は特に好評で、新規スポンサー2社の獲得にもつながった。公用語のフランス語は話せなかったが、覚えたての現地語(単語)と身振り手振りで、人々と交流。同国の文化に引かれていった。

 この時の記憶が、職人の価値にどうすれば光を当てることができるかという中須の試案に重なる。「アフリカと京都を組み合わせることで何とかできないか」と思い始めた。上司に引き留められたが、4年ちょっと務めた信金を辞め、2018年10月にAFURIKA DOGSを京都市に設立。同月、トーゴに飛んだ。

 トーゴに着いた中須は、現地の生活を良く知るためにマルシェ(市場)を見て回った。そして同国が、「ケンテ」と呼ばれる先染め織物の産地であることを知る。ケンテは、西アフリカで最も高価で、かつては王族しか使用できなかった生地だ。それを作っている工場へ行くと、15人ほどで手織りしていた。その工場に生成の綿糸でケンテを織ってもらい、京都の西田の工場で染めてもらおうと思った。