明日へ これが我が社の生きる道 染色加工編(90)

2020年11月20日(Fri曜日)

値が通ればそれでいい  大本染工

 「ロットを求めるな。値が通ればそれでいい」「特定顧客への依存度を下げろ」。この二つの方針で業容を拡大した染工場がある。フラットスクリーン捺染・インクジェット捺染受託の大本染工(京都市)だ。2015年12月期に4億8千万円だった売上高が、19年12月期には6億7千万円になった。従業員も毎年増え、現在27人だ。新型コロナウイルス禍で今年は厳しいが、染工場が発展するための方向の一つを示しているように思える。

 同社は手捺染で創業し、現在はスクリーン捺染とインクジェット捺染のみを受託している。インクジェット捺染を開始したのは、濱野公達社長(46)が入社した2000年。濱野社長は銀行に勤めていたが、当時の社長であり父の幸夫氏が大病を患ったため入社することにした。

 濱野氏を迎えた父は、同社にはなかったインクジェット捺染機を1台買い、「それを使って好きにビジネスしてみろ」と言った。内にも外にもベテランがいる手捺染、スクリーン捺染の世界よりも、インクジェットという新しい世界の方がやりやすいだろうという心遣いだった。

 濱野氏は、営業から、デジタルデータの処理、機械の操作まで一人でこなした。水着向けを中心に注文が増加。翌年から服地向けの引き合いも増えたため、増設を続ける。15年に社長に就任すると、新たな営業方針を打ち出した。

 方針の一つは、「ロットを求めるな。値が通ればそれでいい」というもの。作業に要する時間から加工料金を割り出し、インクジェット捺染は1㍍単位で、スクリーン捺染は50㍍単位で定めた。その価格でなければ請けないという強気の姿勢を打ち出したわけだ。

 当然ながら、あつれきが生じる顧客も出る。そこで打ち出したもう一つの方針が、「特定顧客への依存度を下げろ」というもの。特定顧客に依存するから無理難題も聞かざるを得なくなる。顧客数を増やし、特定顧客の意向に業績が左右されないようにしようとしたわけだ。

 この方針に沿って、それまで20~30社だった顧客を、120~130社に増やした。これにより、顧客1社当たり売上高は、多くても全社売上高の10%にとどまるようになった。売上高の6割は婦人服向けで、2割が紳士服、1割がスポーツウエア向け。

 主力の婦人服の顧客のほとんどは、コレクションブランドと取引する従業員10人未満の問屋だという。中小規模を中心に顧客を増やしたことで、営業員の仕事量は必然的に増える。現在、営業専任の2人に加え、社長、工場長、そして企画員の3人も営業を兼務し、顧客の要望に応えている。

 現在の同社売上高のうち45%はインクジェット、40%はフラットスクリーンによるものだが、残りは外注で稼ぎ出している。外注があるのは、「自社で対応できなくても、できないと言うな。対応できる他社を紹介できるようになれ」という営業方針によるものだ。これによって「大本染工に言えばなんとかしてくれる」という評判を得ることを狙っている。商社を通じて、欧州の著名ブランド向けの捺染を請け負ったこともあるが、これも「なんとかしてくれると思ってもらえているからだろう」と濱野社長は語る。

(毎週金曜日に掲載)

社名:大本染工株式会社

本社:京都市伏見区横大路千両松町201番地

代表者:濱野公達

主要設備:コニカミノルタ製インクジェット捺染機「ナッセンジャーⅦ」2台(分散染料用、反応染料用各1台)、同「ナッセンジャーⅤ」1台(酸性染料用)、エプソン製インクジェットプリンター2台(転写紙作成用)、フラットスクリーン捺染機1台、手捺染機2面(インクジェト捺染の前処理に使用)

従業員:27人