メーカー別 繊維ニュース

特集 人工皮革/エコ素材の増強進む/カーシートで拡販

2020年11月30日(Mon曜日) 午後1時24分

 カーシート向けの拡販に支えられ好業績を維持してきた合繊メーカーの人工皮革部門。2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で踊り場を強いられていたが、当初の想定を上回るペースで進んだ自動車業界の復調で人工皮革事業も持ち直してきた。20年度は欧米からを中心に引き合いを集める環境配慮型素材の充実が進められているほか、カーシート向けを再び上向かせるための開発・販促が強化されている。需要増をにらんだ増設を東レは既に終えており、旭化成は再度の増設を表明。クラレは中国での増設をこのほど終えた。合繊メーカーが人工皮革事業で計画する成長戦略を追った。

〈東レ「ウルトラスエード」/カーシート向け急速に復調/引き合い集めるエコ3タイプ〉

 東レは「ウルトラスエード」の増設によって生産能力を約60%増となる年産1千万平方メートルに引き上げており、23年度でのフル稼働を目指している。

 ウルトラスエード事業部は2020年度上半期、新型コロナウイルス禍の影響を受けたものの、7~9月期からカーシート向けの販売が急激に回復。上半期業績を「多少の前年割れにとどめることができた」。

 下半期もカーシート向けを伸ばせるとみており、20年度は下半期から「巡航速度に回復させられる」との手応えを示す。

 上半期、カーシート向けでは、国内の多くの車種でウルトラスエードの搭載が決まったほか、中国のEV向け、米国のピックアップトラック向けの販売がいずれも好調という。

 カーシート向けでは「ウルトラスエード・ヌー」の新タイプを開発しており、数年先のスペックインをにらみ自動車メーカーへの企画提案を積極的に進めている。

 より本革に近い質感、耐久性を持たせてあり、独特のアニリンレザー調の表面感をファッションや靴、バッグ向けにも売り込んでいき横展開につなげていく。

 ウルトラスエードのプロモート素材群をセットにした“ギフトボックス”が好評といい、海外を中心とする重点顧客に送り、現物を交えたウェブでの商談に取り組んでいる。

 3タイプのエコ素材をラインアップ。表面の極細糸に再生ポリエステルを使う「ウルトラスエードRX」、部分バイオポリエステルによる極細糸の「同PX」、極細糸、ポリウレタン、補強材を部分バイオ化した「同BX」が海外を中心に引き合いを集めていると言う。

〈旭化成「ラムース」/持続的成長へ用途拡大/環境対応で優位性発揮〉

 旭化成のパフォーマンスファブリック事業部ラムース営業部は、「ラムース」の持続的な成長を目指す。主力である自動車向けを軸にしながら用途の拡大を図る方針で、ITアクセサリーやラグジュアリーブランドを深耕する。市場では欧米と日本のほか、中国にも目を向ける。

 ラムースは独自製法による3層構造のスエード調人工皮革。上質な肌触りや多彩な意匠性に加えて、再生ポリエステルや水系ポリウレタンを使用するなど、環境特性に優れている点も特徴の一つ。1980年代に販売を開始して以来、40年にわたって高い評価を得ている。生産能力も順次増強してきた。

 2020年度上半期(20年4~9月)は自動車向けを中心に新型コロナウイルス禍の影響を受けたが、巣ごもり需要も手伝ってITアクセサリー分野の販売が健闘を見せた。自動車市場も回復基調を示しており、下半期の販売は前期を「若干でも上回りたい」(ラムース営業部)と言う。

 成長のための施策に大きな変更はないとし、自動車向けで“プレミアムOEMメーカー”への提案を継続強化するとともに、用途の幅出しに力を入れる。その一つとして深掘りを進めるラグジュアリーブランドではファッションだけでなく、アクセサリーや雑貨も含めて提案を強める。

 サステイナビリティーで優位性が発揮できるとし、再生ポリエステルの使用比率を順次高めるなど、サーキュラーエコノミー(循環型経済)に貢献する。販売では米国のセージ・オートモーティブ・インテリア社などとの連係を深めてグローバル展開を加速する。

〈クラレ クラリーノ事業/環境配慮型を拡販/21年から自動車用途に参入〉

 クラレは人工皮革クラリーノ事業における基本方針に環境配慮型素材の拡販、自動車関連資材の開拓・柱用途への育成を掲げる。

 環境配慮型素材として、有機溶剤を使用しない銀付き「クラリーノ―TN」、再生ポリエステルによる銀付き「同―SR」、再生ナイロンによるスエード「同―NR」をラインアップしており、いずれでもRCS認証を取得済み。

 2020年から本格販売を開始しており、市況低迷が続く欧州において、最近のビーガン志向の高まりも重なり「スポーツ向けの拡販をTNやSRがけん引している」という。

 自動車向けでは、既に銀付きでカーシート向けのクラリーノを完成させており、国内外で来年発売されるニューモデルへの搭載が決まっている。

 米国、欧州、中国など海外を中心とする造面メーカーにクラリーノの生機を販売し、先方が車両内装材向けに展開する取り組みを進めてきており、今後も連携を強化し車両内装材での拡販を目指す。

 中国では、合弁企業ヘーシンクラレを展開。現在、4系列による年産1600万平方メートル体制に2系列を増設し年産2800万平方メートルに引き上げる設備投資に取り組んでいる。

 20年は新型コロナウイルス禍で苦戦していたが、夏ごろからフル操業へと回復させている。いち早く中国国内の市況が回復したほか、当局が環境規制を強化するのに対応できない中小の事業者が市場から淘汰(とうた)されているためと言う。

 ヘーシンクラレでは現在、試運転を進めており、中国市況が現状のまま推移するのであれば、「21年いっぱいをかけて新設備をフル操業させられる」との手応えを示している。

〈帝人コードレ/環境商材を軸に拡販/スポーツ用途を強化〉

 帝人コードレは主力のスポーツ用途をさらに強化するとともに、国内ではランドセルなどの用途開拓にも取り組む。帝人フロンティアの再生ポリエステル「エコペット」を柱に、環境配慮型商品としての提案を強めて展開を広げていく。

 今上半期(4~9月)は新型コロナウイルス禍の影響を受け、前年比約20%減と苦戦した。主力のスポーツ用途はシューズ、ボールとも落ち込んだ。ただ、4~6月を底に回復基調となり、7~9月は4~6月比で50%増となった。環境配慮型商品の訴求が奏功した形で、タウンユースを含むシューズ用などが回復した。10~12月は7~9月の横ばいとみるが、1~3月は4~6月よりも70~80%増とする計画だ。

 下半期はエコペットを使った環境配慮型商品であることの訴求を強め、スポーツ用途をさらに強化する。既存分野は新型コロナ禍で前年比30%減の水準になるとみており、用途やアイテムを広げるなどの手を打つ。

 基材の不織布は既にランドセルの一部用途を除いて、全体の90%以上が再生ポリエステル使いになっている。エコペットが今年で25周年を迎えてリブランディングを実施した中、人工皮革でも提案を強化する。

 シューズ用は環境配慮型商品を軸に、主力のサッカー以外の開拓にも力を注ぐ。ボール用では汗でぬれても滑りにくいグリップ力を生かした新用途開拓にも取り組む。

 国内市場ではランドセル用途にも注力する考えで、抗菌や抗ウイルスなど機能性を切り口にした提案やブランド力向上にも注力する。