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特集 CSR(3)/旭化成と「産地の学校」/オンラインプログラムを始動/工場紹介など盛りだくさん

2020年12月10日(Thu曜日) 午後1時23分

 日本国内の繊維産業を体系的に学ぶことができる「産地の学校」。新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、オンラインでの講義を新たにスタートさせる。旭化成パフォーマンスプロダクツ事業本部の支援・協力を得て、従来の講義と変わらない充実のコンテンツを作り上げた。12月20日に開講する。

 産地の学校は、糸編(東京都中央区)の代表取締役である宮浦晋哉氏が2017年に始め、繊維産地の課題解決や活性化を主体に活動。その理念や行動などに感銘を受けた旭化成は、キュプラ繊維「ベンベルグ」が持つ魅力や生産背景について学ぶ「ベンベルグラボ」を企画し、18年から特別講義の支援を行っている。

 産地の学校はこれまでに200人を超える社会人や学生が受講した。繊維関連企業の在り方やテキスタイルの基礎知識などを学びながら、実際に国内産地にも赴き、産地やアパレル産業に携わる人材の育成とマッチングなどを行ってきた。今年は新型コロナ禍で開催を見送らざるを得ない状況が続いていた。

 宮浦氏は「(産地の学校では)工場訪問を実施しているが、現場を密にすることは絶対にできない。春、秋と続けて開催を断念したが、来春も難しいと思っている。何か別の形が必要」と考えた。そこでオンラインでの講義という案が浮上するが、旭化成の協力・支援を得たことで実現の運びとなった。

 本講義(東京校)のプログラムは12講義で構成していたが、オンラインプログラムは10講義。1講の産地概論・自己紹介に始まり、事前収録した工場の映像などを流す。10講の産地概論応用/産地事業論・総括で締めくくる。5講の織物応用・化学繊維に関する講義(90分)は旭化成が担当する。

 織物応用編では、キュプラ繊維「ベンベルグ」の特性などについて分かりやすく説明するとともに、工場のある延岡地区(宮崎県延岡市)におけるサステイナビリティーの取り組みも紹介。そのほか、さまざまな素材や新素材なども解説するが、「知識があまりなく、受講生の質問も多い」(宮浦氏)という不織布も取り上げる。

 講師はパフォーマンスプロダクツ事業本部マーケティング総部繊維マーケティング室の佐藤健二郎氏が務める。佐藤氏は「講師は3回目。前回まではたんたんと説明してきたが、今回はオンラインということもあり、めりはりを利かせて興味をもってもらうように気を付けた」と言う。

 工場の映像などは受講生が自分の時間に合わせて見ることができる。ウェブ会議サービス「Zoom」を活用した質疑・交流(講師も参加)、無料通話アプリ「LINE」によるオープンチャットも実施する。オンラインプログラムは多くの人の参加を募るのではなく、20人程度に絞り込む。

 宮浦氏は「オンラインにすることで遠方に住んでいる人でも参加しやすくなった。これまでニット工場の見学はなかったが、横編み機(自動機、手横機)の映像も流すなど、特別な講義も用意した。一度で終わるのではなく、今後もオンラインを活用して、プログラムを展開していく」とした。ベンベルグの生地を製造する産地企業の紹介も行う。

〈糸編 代表取締役 宮浦 晋哉 氏/〝次〟への懸け橋になる〉

 2017年5月に開校した「産地の学校」。繊維・アパレル産業に携わる人材の発掘や育成するという役割を担い、これまでに200人以上が学び、巣立っていった。運営するのは東京都中央区の糸編だ。宮浦晋哉代表取締役に産地の学校の今と受講生・卒業生への期待などを聞いた。

     ◇

  ――改めて「産地の学校とは」を。

 ひと言で表すと「繊維・テキスタイルを体系的に学ぶ場所」です。国内産地や繊維業界で働きたいと考えている人は少なくないのですが、「閉鎖的で取っ付きにくい」という印象を持っている人が多いのも実情です。産地の学校は、モノ作りの楽しさや魅力、可能性を伝えるなど、人と産地・業界をつなぐ懸け橋にもなっています。

  ――専門学校や大学などとの違いは。

 最初に「服飾専門学校などを否定するものではない」と言っておきます。産地の学校の一番の特徴は講師です。織布工場の職人や旭化成をはじめとする企業の従業員ら、繊維産業・業界に席を置いて現役で働いている人が講師を務めます。臨場感と言うのでしょうか、現在進行形で学べることが大きいですね。

 受講生の6、7割を社会人が占め、残りが学生です。社会人の中には繊維産業への転職を念頭に置いている受講生が目立ち、映像会社や企業の経理担当者など、業種・職種の枠を越えて学びに来ています。実際に福岡県内の染色工場に転職した人もいます。

  ――新型コロナウイルス禍で開催が困難になりました。

 産地の学校は、東京校と遠州産地の学校(浜松市)、ひろかわ産地の学校(福岡県広川町)、そして旭化成との取り組みである「ベンベルグラボ」の四つを柱としています。新型コロナの影響で今年は春と秋の実施は見送りましたが、来春も学校開催は難しいと考え、オンラインでの実施を決めました。

  ――どのようなプログラムで進行するのですか。

 東京校のプログラムは12講なのですが、オンラインは10講で、12月の開講を予定しています。オンラインの利点は、東京などから離れた場所に住む人でも簡単に参加できることだと思います。収録した講義などは自由な時間に見られるようにしました。

  ――これまで多くの人が巣立ちました。卒業生らにエールは。

 産地の学校に参加することで“次”を作っていってほしいと思います。実際に産地の学校4期生の森口理緒さんが11月下旬から12月上旬にかけて東京都内で展示会を開きました。このような事例がもっと出てくることに期待しています。

〈日・伊学生のオンライン交流会/両国の若者が語る未来〉

 旭化成のパフォーマンスプロダクツ事業本部のベンベルグ事業部と繊維マーケティング室はこのほど、イタリアのピエルモンテ州大学院「ビエラマスター」の学生5人をオンライン交流会に招待した。キュプラ繊維「ベンベルグ」をより深く知ってもらうため実施した企画で、日本からは「産地の学校」が参加した。

 イタリアの学生との交流会は昨年に続き2回目の開催。昨年はビエラマスターの学生5人が来日し、工場のある旭化成の延岡地区(宮崎県延岡市)などを訪問したが、今年は新型コロナウイルス禍で渡航が難しいことからオンライン交流会となった。ベンベルグの紹介、産地の学校主宰者の宮浦晋哉氏の講義などが行われた。

 交流会は、旭化成によるベンベルグについてのセミナーでスタート。ベンベルグは世界で旭化成だけが製造している再生セルロース繊維であることのほか、素材特性や環境への配慮などが説明された。ビエラマスターの学生は「製造工程で生じる廃棄物はどのように再利用していますか」などと質問していた。

 宮浦氏の講義では日本の産地紹介が行われた。日本には多くの生地産地が存在しているが、尾州、備中備後、京都、遠州、足利、桐生、北陸、久留米、富士吉田、高野口の10産地を取り上げ、地理(場所)や素材(天然繊維、合成繊維など)、糸の形状、織り・編み、染色方法の五つのポイントで紹介した。実際の生地も画面越しで見せた。

 日本の産地を学んだ後は、ビエラマスターと産地の学校の学生、講師によるプレゼンテーション交換会が実施された。プレゼンテーションはビエラマスターの学生で始まり、日本とイタリアの交互で行われた。

 トップバッターは、ローマ出身のロレンツォ氏。製品のサプライチェーンを知ることの大切さや自身の研究などを解説した。日本側からは「ベンベルグラボ」2期生の高橋空さんらがプレゼンテーションし、同ラボでのプロジェクトや縫製産地を紹介した。ビエラの学生からは「イタリア語の壁はあるが、日本人もビエラマスターに進学できる」との助言を受けていた。

 イタリアの学生は積極的で、日本の参加者も意欲的だった。両者の繊維への思いに違いはなく、両国繊維産業の発展を予感させた。