特別インタビュー 東レ 日覺昭廣社長(前)

2021年01月04日(Mon曜日)

問題山積も経済は上向く

機能や環境で存在感を

  ――2021年の動向をどのように予想しますか。

 言うまでもないことですが、昨年は新型コロナ禍に振り回された1年でした。当初は中国国内で収まると思われていた感染が欧米をはじめとする世界に広がり、4~6月は大きな打撃を受けました。ただ自動車を中心に比較的早い段階で底打ち感が見られ、7月以降は回復基調を進んできました。

 新型コロナ禍がいつ収束するのかは誰にも予想することができないでしょう。しかしながら発生当初と違って対処方法などについて少しずつですが明確になってきました。企業も感染予防や安全対策に努めながら事業活動を推し進め、状況は随分変わっています。とはいえ、経済が安定するには1年程度はかかるとみています。

  ――経済自体は上向くのでしょうか。

 20年下半期プラスアルファの水準には回復すると思っています。懸念材料を挙げるとするならば、やはり新型コロナ禍です。感染拡大が高水準のままで推移すると消費者が外出を控え、物の動きが停滞してしまいます。衣料品をはじめとするモノ作りに悪影響を及ぼす可能性があります。

  ――米国ではバイデン政権が誕生します。米国と中国の通商問題をどう読みますか。

 政権交代で状況が変わるかもしれません。昨年は両国間の貿易が増えた月もあり、互いの存在なしでは成り立ちません。中国はRCEP(地域的な包括的経済連携協定)に署名し、TPP(環太平洋連携協定)にも興味を示していると言われています。両国は落としどころを見つけるのではないでしょうか。

 RCEPが中国と韓国を含めて署名に至ったことは日本にも大きなエポックと言えるでしょう。中国が虎視眈々(たんたん)と覇権を狙っている気もしますが、大きな方向性が定められたことは良いと考えています。中国や韓国に拠点を持ち、ASEAN地域に進出している東レにとっても有益に働くと考えています。

  ――国内の繊維産業はどのように進んでいけばよいのでしょうか。

 高機能品や高感性品の開発をはじめ、日本の繊維産業には蓄積してきた技術力とノウハウがあり、リサイクルなどの取り組みについても他国に先んじています。

 「中国は日本の物まね、コピー」などといわれますが、日本をまねてくれるのは歓迎すべきことです。

 なぜならアジアが世界の繊維産業をけん引しているのですが、そのリーダーが日本だからです。新素材の開発や環境負荷低減の活動などには、中国はもちろん、ASEAN地域の各国も日本には大きな期待を寄せています。