激変にどう対応する ~アパレルトップインタビュー2021~(2)

2021年01月19日(Tue曜日)

プロパー販売で成果  TSIホールディングス 社長 上田谷真一氏

 ――昨年を振り返ると。新型コロナウイルス感染拡大の影響も大きかった。

 もちろん新型コロナ禍の影響もあったが、社長に就任した3年前から課題は変わっていない。今期(2021年2月期)は、商品仕入れの抑制やプロパー販売の強化、電子商取引(EC)の拡充を軸としたデジタル化を徹底的に進めている。スピード感を持って事業構造改革を実行したが、(新型コロナ禍に)強烈に背中を押されたという感覚、3年分の仕事を1年で終えた印象だ。

 新型コロナ禍が「会社がつぶれるかもしれない」という危機感を植え付けた。既存事業で稼ぐことを過信していたし、環境速度の変化を甘く見ていた。2年前から損益分岐点を下げ、商品仕入れを抑制することにも取り組んでいたが、一気に遅れを取り戻せた。

  ――国内の事業子会社を統合する。

 組織が分散していて非効率だった。ただ、普通にビジネスが回り、キャッシュが手元にあるとスピードアップして組織改革ができない。利益が出ている時に大きな改革を打ち出しても、社内で猛反対されただろう。新型コロナ禍という外圧があって、組織改革と世代交代、ブランドポートフォリオの見直しを進めることができた。

  ――ECは引き続き好調だ。

 自社ECには投資を含めアクセルを踏んだ。EC化率(外部EC含む)も今期は30%を超える見通しだ。実は、デジタル化と親和性が低いと考えていた「マーガレット・ハウエル」や百貨店向けの婦人ブランドが、オンライン接客を積極的に導入している。販売員をはじめとした現場の適応力が高く、これは想定外だった。

  ――セールを抑制したことも効果が表れている。

 20年9~11月期は基幹ブランドの「ナノ・ユニバース」で増益となった。売上高は約16%減少したが、仕入れとセールの抑制が効いている。今までは100枚売るのに、150枚を作っていたイメージだが、在庫を減らすことに注力した。ターゲットが広く、売り上げも大きいブランドで増益に転じたのは大きい。当社のプロパー戦略は間違っていなかった。

 シーズンごとに全ての商品を入れ替え、売り切る(アパレル企業の)販売形態は異常だった。現在は「原価率を上げても良いから商品の完成度を高めてほしい」と言っている。その代わり品番数を絞り込む。完成度を高めれば、シーズンを越えて売ることもできるだろう。

  ――3月1日付で社長を退任する。事業構造改革に一定のめどを付けた。

 事業子会社の統合や損益分岐点を下げるといったハード面で改革を進めた。ただ、世代交代を含めて人が変わらないと、本当の意味で会社は変われない。会長と社長、事業部門の責任者も交代する。デジタルやサプライチェーンの責任者も刷新する予定だ。社長に就任してもうすぐ3年になるが、この1年は精神的にも肉体的にもきついものだった。後任の下地毅取締役は経営判断が速く、次世代の経営チーム引っ張っていける存在だ。