激変にどう対応する ~アパレルトップインタビュー2021~(9)

2021年01月29日(Fri曜日)

ウオンツ商品の提案が鍵  AOKIホールディングス 社長 青木彰宏氏

 ――紳士スーツ業界にとって2020年は。

 ビジネス服の自由化によって紳士スーツの市場は縮小傾向が続いていたが、新型コロナウイルス禍によってテレワークが浸透・定着したことでスーツ離れが加速した。卒業式や入学式、入社式などで需要期になる2、3月に勢いをなくしたのは大きな痛手になり、紳士服業界にとって近年で最も厳しい年になった。

 一方でスーツ離れに真正面から向き合い、消費者が求める商品を作るきっかけを与えられた1年だったとも言える。その最たる例が布マスクだ。AOKIホールディンググループにとって前例のない商品と言えるが、消費者から高い評価が得られた。ウオンツを商品化できれば売れるという自信が持てた。

  ――21年はどのように予測している。

 経済に関してはステイから回復の基調にあるが、多くの人が言うように新型コロナ禍前の状況には決して戻らないだろう。良い方向に進んでいくことを願っているが、良くするのも、悪くするのも自分たち次第だと思っている。新しい世界、新しい価値観の中で生まれるウオンツやニーズがあり、それにいかに応えるかになる。

  ――紳士スーツ分野で逆境を打破するウオンツは。

 ウイズ・アフターコロナで大きな変化を見せるのが紳士スーツ分野と考えている。働き方が変化すれば働く服が変わるのは当然と言える。ただ“仕事”そのものがなくなったわけではない。自宅で働く人や時間が増えているのであって、その際に着用するウエアを提案できれば消費者の購買を促すことができる。

 その代表が「パジャマスーツ」だ。「自宅でくつろぎながら仕事時にはきちんとしていたい」という声から生まれた商品で、“パジャマ以上・おしゃれ着未満”をコンセプトにしている。国内での人気はもちろんだが、テレワークの普及率が80%と言われている米国、中国、シンガポールなどからも注文が入っている。

  ――海外からの注文はオンラインだと思うが、電子商取引(EC)全体の動きは。

 ファッション事業のオンラインでの販売はまだまだ小さい。ECは伸ばしていくが、実店舗と共存しながら拡大に取り組む。在庫はネットで確認し、商品は実店舗で購入するという形があっても良い。いずれにせよ、リアルとECのどちらを選ぶかは、われわれではなく、顧客ということだ。

 ECに限ったことではないが、これからの課題はスーツを着用する機会を創出することだと考えている。20代でもオーダーメードスーツを着る人は増えており、仕事着ではなく、おしゃれ着としてのアピールをもっとするべきかもしれない。その一環としてオーダーメードは強化する。