明日へ これが我が社の生きる道 染色加工編(99)

2021年01月29日(Fri曜日)

枠にとらわれず取り組む  石川染工

 山形県山辺町の石川染工は、ニット糸の綛(かせ)染めなどを行う企業だ。近年は後加工の提案も強化し、産地企業との連携を深めている。伊藤栄一代表取締役(52)は「産地などの枠にとらわれることなく、さまざまな取り組みを進める」と話し、異業種との協業にも力を入れる。

 1925年に創業(設立は1959年)した。アオソの栽培が盛んだった山辺町は蚊帳の産地として知られ、同社も蚊帳に用いられる糸の洗いを祖業とする。周辺で横編み地やじゅうたんを製造する企業が増えていくのに伴い、取り扱い商品が変化。シルクやウール糸の染めを手掛けるようになる。

 伊藤代表取締役は、県内の高校を卒業した後に18歳で入社した。父は鮮魚店に勤め、母が理髪店を営むなど、繊維とは縁が遠かったが、「その頃は繊維業界が面白そうに思えた」ほか、「長男なので『県外の企業に就職しないでほしい』と言われたこともあり、石川染工を選んだ」と話す。

 生産部門に配属され、糸染めや後加工で経験を積む。生産部門は約1年半で離れ、それ以来営業畑を歩くことになる。作れば売れる時代で、仕事は順調だった。「モノ作りが好きということもあり、職人が休みの日には工場に入り、染めや加工に携わっていた」と振り返る。

 順調だった時も終わりを迎える。生産場の海外移転やバブル経済崩壊、リーマン・ショックなどもあって売り上げが減少基調をたどる。経営は厳しく、事業方針の転換が求められた。銀行主導による人事が行われ、当時常務を務めていた伊藤氏が2015年に代表取締役に就く。「資産がなく、銀行にとって最悪の経営者」だったが、改革が優先された。

 就任後、それまでのトップダウン経営からボトムアップ手法に変更した。売上高や損益などを従業員に毎月報告して全員で会社を良くしようという意識を持たせた。営業面では糸商社と協業して、ニット企業に販売するなど、加工料金仕事偏重から脱却。ミンク加工をはじめ、得意とする後加工の強化も図った。

 今後は「足を引っ張り合う時代は終わった。いろいろな企業とチームを組んで成長を目指す」方針で、県内の横編み製造業と連携を深めて、それぞれの編み地や製品に合った加工を提案する。県内だけでなく、全国の産地でチームを作りたいとし、丸編み地・製品や織物にも対応する。

 異業種との協業では、山形県自動車販売店リサイクルセンターとの取り組みを数年前から始めている。廃車から回収したエアバッグを、石川染工で染色してエコバックやトートバックに再生する。加工数量は増えており、サステイナビリティー対応の一環として継続強化する。

(毎週金曜日に掲載)

社名:石川染工株式会社

本社:山形県東村山郡山辺町大字山辺923

代表者:伊藤 栄一

主要設備:噴射式染色機15台、ワッシャー染色機6台、オープンワッシャー染色機4台、パドル染色機6台など

日産能力:糸染めは1㌧、加工は300~400㌔

従業員:12人