歩んだ道 歩む道  メーカーズシャツ鎌倉代表取締役 貞末奈名子氏(後)

2021年02月04日(Thu曜日)

中国市場の伸び代に期待

 奈名子が代表取締役に就任したのは、一度目の緊急事態宣言下だった2020年の5月。「事業の未来像を描けるような時期ではなく、会社をつぶさないようにすることを考えた」と話す。新型コロナウイルス禍が収束した後にしっかりと成長することができるように守りを固めることから始めた。

 その一つが日本製の品質が評価され、固定客をつかんでいた米国での事業だ。ロックダウン(都市封鎖)に伴う外出の制限で長期間にわたって集客が見込めないと判断して、ニューヨークのマディソン・アベニューにあった「鎌倉シャツ・ニューヨーク店」の一時撤収を決断した。

 日本国内でも外出自粛の影響が見られたほか、店舗の営業時間短縮を強いられたことなどから電子商取引(EC)への切り替えに力を入れた。この結果、ECサイトでの販売が1・8倍に伸長した。「ECは28年前の創業時にはなかった。新しい販売ツールとして戦略的に伸ばしていく」考えを示した。

 このような状況下でも着実に数字を伸ばしているのが中国市場だ。同国では新型コロナの封じ込めが比較的早い段階で進んだほか、ネット社会が日本よりも進んでいることなどから、当初からネット販売を重視していたことも寄与した。中国法人の美客思貿易〈上海〉は設立2年目の20年12月期でほぼ収支トントンになった。

 中国でのEC販売は、売上高全体の7割を占め、顧客層は日本の主力層と比べて若い20、30代の男性が多い。「おしゃれに敏感で消費意欲も旺盛。狙わない手はない」とし、例えば11月11日の「独身の日」だけで「売り上げが3500万円に達した。仕掛けに工夫を施せばもっと伸ばせる」と強調する。

 中国市場の伸び代は大きいと捉えており、美客思貿易〈上海〉の21年12月期は黒字確保を予定している。「中間層が拡大し、良い商品への需要も増している。健全な市場とも言え、ECとリアル店舗を合わせてこれからの5年間で売り上げ規模を40億円にまで育てたい」とする。日本国内でも着実に伸ばし、合わせて売上高100億円を目指す。

 中国以外でもECを使ったグローバル展開は重点施策の一つになる。米国で一定の顧客をつかんでいるほか、世界中のビジネスパーソンが集まるニューヨークに店を持っていたことによる優位性もある。「欧州でも『鎌倉シャツ』は知られている。ECを使って顧客を増やす」とした。

 ビジネス服のカジュアル化や新型コロナ禍は、シャツ市場に強い逆風となって吹く。より幅広い場面で着用してもらえるようテレワーク対応商品を開発・提案している。「鎌倉シャツはリモート時でも出勤時でも着ることができるというメッセージを消費者に発信したい」と言葉を強めた。

(おわり、文中敬称略)