私が見たパリの服事情 (2)

2021年02月12日(Fri曜日)

化学反応のようなモノやコト

 【パリ=龍山千里通信員】パリでは、オートクチュールウィークがオンラインで開催された。デジタルのショーもノーマルになった2021年。消費者に対する服の見せ方も変わってきた。

 昨年の春、フランスの老舗百貨店「プランタン」は、アパレルに特化した電子商取引(EC)サイトを公開した。サイトの服のカテゴリーとして、レディース、メンズのほかに「ミックス」というユニセックスがある。フランス社会の幅広い多様性をちゃんと反映させていた。商品だけでなく、アートや文化、社会に関連したニュースやコラムを前面に羅列したサイト設計になっており、大手老舗百貨店のプレゼンテーションにしては新鮮だと感じた。

 昨年2月末、かつてパリで一世を風靡(ふうび)した有名セレクトショップ「コレット」のポップアップイベントで働いた。押し寄せるファンの熱気。コレットの存在感の大きさを肌で感じた。

 コレットのコピーに「インターネット・ビフォー・インターネット(インターネットが生まれる前のインターネット)」という言葉がある。店が多様なカルチャーや美意識の集合地点となり、そこに集合したモノやコトが熱気とともに訪れた人へ派生していく空間。店はそういう存在になれるのだと思った。

 店から客への一方的な価値提供ではなく、さまざまなジャンルのモノやコトが店という場所で関わり合い、うねりのようなムーブメントになっていく。例えば、客として来るアーティストが、時にオーガナイザーとして店でイベントをしたり、絵を展示したりする。そんな柔軟な関係性で、客の文化を店が、店の文化を客が育みつつ、インターネットでつながっているかのように広がっていく。店はそんな存在になれるのではないか。

 今はインターネットが私たちの生活に溶け込んでいる時代。人々はどんな体験を求めているのだろう。個人的には、当時のコレットにあったような、多様な価値観の交錯による化学反応のようなモノやコトとの出会いをネット上でもっと体験してみたい。

(毎月1回掲載)