小林恵介のベトナム便り (3)

2021年02月17日(Wed曜日)

改善しつつある生活環境

 外務省「海外在留邦人数調査統計」によると、ベトナムにおける在留邦人数は、筆者が前回の駐在を始めた2008年の7036人から、最新統計である19年には2万3148人と3倍になった。ハノイ、ダナンとホーチミンにある日本商工会議所の会員企業数が08年の約700社から、今は約2千社となっており、在留邦人数が増加しているのも当然だろう。なお、ハノイでは3433人から8622人と約2.5倍になっている。

 こうした日本人をターゲットとしているとみられる日系サービス産業も進出してきており、そのうちの一つが理美容分野だろう。ある日系美容室によると、日本人がいる理美容室は、まだ少ないながらもハノイに13店、ホーチミンに35店あるという。

 ハノイでは08年に初めて、日本人がいる美容室ができ、どのくらいの期間がかかったか明確には覚えていないが、3店程度に増えた。日本人の美容師によるカット料金は、その当時40㌦だった。日本人向け広告サイトなどによると現在、男性カット料金で多いのは70万¥文字(G2-1000)というところか。ドル換算で30㌦、円でいえば3200円程度と10年前に比べて安くなっていることになる。利用者としては、日本と同じようなサービスを当地でも受けられ、料金は以前と比較して下がっているとしたらありがたい話だ。

 日本人だけがターゲットではないと思われるが、日本食レストランの数や、日本食材を扱う小売店も増えた。「繊維」でいえば、今はユニクロがハノイとホーチミンに複数店舗ある。ここまでくると、ハノイは住みやすくなる一方と思われるかもしれない。

 次に例示するのは、いずれもこの半年で起きたことだ。ある日本人駐在員は、住んでいるアパートから突然、「すぐに退去してほしい」と通告され、1週間ほどで別のアパートに引っ越さざるを得なくなった。ある日系駐在事務所は、非医療用の一般的なマスクを日本本社から送付してもらったものの、「医療用であるため輸入ライセンスが必要」と当局に言われ、結局日本に送り返すしかなくなった。生活面だけではなく、事業活動においても同様だが、商習慣や法令運用面における不確実性は、依然として残っていると思わされる場面は多い。

こばやし・けいすけ 日本貿易振興機構(ジェトロ)ハノイ事務所次長。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。2003年ジェトロ入会の後、熊本事務所、ハノイ事務所、海外調査部アジア大洋州課などを経て20年8月より現職。『世界に羽ばたく!熊本産品』(単著)ジェトロ、07年、『分業するアジア』ジェトロ、16年(部分執筆)などの著書がある。