メーカー別 繊維ニュース

特集 スポーツ(3)/アフターコロナの需要見据える/素材編

2021年02月19日(Fri曜日) 午後1時17分

 素材メーカー各社では“アフターコロナ”を見据えた動きが活発化してきた。サステイナビリティ―に対する社会の意識も一層高まるとみられる中、22春夏商戦にはエコ素材やリサイクル素材を前面に打ち出す商品が目立つ。

〈エコ素材群を増強/東レ〉

 東レは22春夏・秋冬向けに多彩な商品ラインを構えるエコ素材で企画した戦略素材群を打ち出す。バイオ由来の原料によるエコ素材「エコディア」で、新たにナイロンをラインアップ。透湿防水「ダーミザクス」や、軽量・コンパクト「エアータスティック」などでもエコ素材のラインアップを充実させている。

 エコディア・ナイロンタイプでは、22年度からトウゴマ由来のセバシン酸60%と石油由来のヘキサメチレンジアミン40%で開発したナイロン610を本格販売する。

 軽量極薄織物をダウンジャケットの表地向けに提案するとともに、疎水性に優れるナイロン610の物性を打ち出しテントやシュラフといったアウトドア関連アイテムを掘り起こす。

 22春夏からは新たに開発した汗染み防止「フィールドセンサーEX」、接触冷感「クールアプリ」の販売を開始する。フィールドセンサーEXは特殊なニット構造がもたらす毛細管現象により汗を素早く吸水・拡散・乾燥させる。

 クールアプリは衣服内の湿気を吸湿し蒸れ感、不快感を低減させる。ナイロン、ポリエステルの2ウエー、丸編みを投入。スパンデックス「ライクラ」の消臭タイプ(「T―327C」)を交編した素材群でインナー、肌着アイテムも掘り起こす。

〈巣ごもり需要に「Zシャツ」/東洋紡STC〉

 東洋紡STCは22春夏商戦に“守る”をコンセプトに開発したエコ素材、衛生素材を前面に打ち出し臨んでいる。

 昨年12月、東京、大阪で東洋紡グループ繊維総合展を完全アポイント制で開催。久しぶりのリアル展だったため、「来場者からの評判は上々だった」と言う。

 ユニフォーム向けを先行させていた抗ウイルス素材「ナノバリアー」を22春夏からスポーツにも導入。原綿改質で抗菌防臭性能を持たせた綿の新素材「ABコット」もラインアップする。

 再生ポリエステルの商品ライン拡充も重視しており、ノンスパンデックスのストレッチ糸「ニュートロン」、防風・撥水(はっすい)「スペクター」、抗スナッギング「アクセンシャルゼブラ」などをそろえた。

 巣ごもり需要の増大に伴い高機能ニットシャツ地「Z―シャツ」、「E―シャツ」の販売が好調を続けており、2020年度は50%の増販になる見通し。

 21年度は高密度ニット「スクラムテック」もラインアップし引き続き拡販を目指す。スポーツアパレルがライフスタイル系アイテムの拡充に力を入れており、同社もこのゾーンへのアプローチを強化し高機能ニットシャツの浸透・定着を目指す。

〈エコをベースに差別化/帝人フロンティア〉

 帝人フロンティアのスポーツ素材販売は新型コロナ禍の影響を受けるが、来期(2022年3月期)は一昨年の80%にまで戻し、その次の期に完全回復させる。今後はサステイナブルをベースにした差別化素材の提案をさらに強化する考えで、エコと感性を兼ね備える素材などの提案に注力する。

 重点提案素材は、綿調ポリエステル素材「アスティ」や「デルタntr」など。デルタntrは、仮撚や混繊技術でランダムなマイクロクリンプ構造を実現し①ソフトで膨らみのある風合い②ナチュラルなスパン調質感③ランダムな微細凹凸構造による深色性――などの特徴を持つ。

 汗処理機能と保温性を両立させた「サーモフライ」への注目も高まっている。特殊異形断面ポリエステル繊維「オクタ」を使ったダブルラッセルを半裁し、起毛加工なしでかさ高な構造を実現。保温性や軽量性のほか、長繊維を使用し起毛しないので繊維の抜け落ちが発生しにくく、海洋マイクロプラスチック発生の抑制も期待できる。

 これらの差別化糸は、リサイクルなど環境配慮型素材をベースとする。今後は、素材のエコ化に加えて生産プロセスのエコ化にも取り組む。

〈新たに「キャストロン」打ち出す/ユニチカトレーディング〉

 ユニチカトレーディングはケミカルリサイクルで生産する再生ポリエステル「エコフレンドリー」やヒマ(トウゴマ)が原料のナイロン11「キャストロン」といった環境配慮型素材を前面に22春夏商戦に臨んでいる。

 全社を挙げてエコ素材によるモノ作りを進めている。スポーツでは、主力のエコフレンドリーの商品ライン増強、キャストロンによる開発に力を入れている。

 エコ化した吸汗速乾「ルミエース」UVカット・透け防止「サラクール」、超極細「EQ」などにも拡充しエコフレンドリーの市場浸透を目指す。

 エコ素材のマーケットでは再生ポリエステルが大半を占めており、「ナイロンの希少性が注目されている」と言う。このため、22春夏からキャストロンの本格販売に乗り出し、インナー・肌着を含むアイテムを掘り起こす。部分バイオポリエステルと綿との複重層糸「パルパーソロナ」でもスポーツ向けの本格販売を目指した開発・販促が進行中。

 新型コロナウイルス禍に伴い、最近はスポーツでも安全・清潔へのニーズが高まっていると言い、残存皮脂に起因するニオイへの消臭加工「バイスティン」を22春夏からスポーツにも導入。開発中の抗ウイルス加工を早急に完成させる。

〈戦略素材のエコ化急ぐ/旭化成アドバンス〉

 旭化成アドバンスは環境配慮型素材「エコセンサー」を前面にスポーツ商戦に臨んでいる。新たに高通気「バイオセンサー」や2ウエーストレッチ織物「エラクションX(クロス)」のエコ版をラインアップするなど22春夏に向けてエコセンサーの商品ライン増強を急いでいる。

 エコセンサーを「ベンベルグ」、再生スパンデックス「ロイカEF」、再生ポリエステル、同ナイロン、オーガニックコットンの5本柱で構成する。

 22春夏では、汗を吸うと編み目が開き通気性がアップするバイオセンサーをベンベルグと再生ポリエステルで商品化。透湿防水素材「ソファンデ」を再生ナイロン使いで開発している。ストレッチ織物・エラクションXには再生ナイロン、ロイカEF、ベンベルグの3者混を新たに加えた。

 先に特設サイト上で行われたパフォーマンスデイズで、ソファンデのエコ版など4素材がアワードを取得したこともアピールし国内での拡販を強化したい考えだ。

〈新植物原料との複合も/レンチング〉

 レンチングはスポーツウエアやフィットネスウエアを“アクティブ”用途と位置付け、再生セルロース繊維「テンセル」を重点提案している。テンセルの特性に加えて、サステイナブルな素材であることを打ち出す。このため最近では新植物原料繊維との複合でも採用が増えている。

 テンセルは吸放湿性や発色性に優れることから、スポーツ・フィットネス分野に最適な繊維の一つとされる。加えて木材パルプを原料にし、溶液なども回収・再利用する生産プロセスや、生分解性を持つことなどを生かし、サステイナブル繊維としての打ち出しを強める。

 最近ではカポックなど珍しい植物原料繊維を使った企画がスポーツ用途で増えており、ここでも複合する原料としてテンセルが採用されるケースが多い。やはりテンセルの特性とサステイナビリティーが評価されている。

 同社では引き続きアクティブ用途を重点分野と位置付け、スポーツブランドとタイアップしたプロモーションなども実施する。

〈閉める動作を簡単に/YKK〉

 YKKのファスナー「click―TRAK」(クリックトラック)は、開具を閉める操作を簡単にする。左右の開具がスナップボタンのようになっているため、開具同士を重ね合わせて押すと自動的に回転・係合し、簡単にファスナーを閉めることができる。閉める際の〝差し込む〟動作を〝押す〟に変えることで利便性が格段に高まる。

 高齢などの理由で細かい作業が困難であるため、開ファスナーの使用に抵抗を感じているユーザーにも、より多くのファッションを楽しんでもらおうと開発した。使いやすさやデザイン性をモニタリングし、身体に障害のある人たちの意見も取り入れ、調整を重ねた。

 2019年の発売以来、ユニバーサルファッションのほか、キッズウエアやアウトドアなど幅広い用途に提案している。ウエアの着脱を楽にするため、スポーツのシーンに向けても打ち出す。時間を争う緊迫した状況でこそ、クリックトラックの機能性が発揮されると言う。

〈衝撃吸収「スパンドール」開発/クラレトレーディング〉

 クラレトレーディングは22春夏向けに安全・衛生に配慮した素材群を重点的に投入する。新たに開発した抗菌素材「スペースマスターAG」や消臭「シャインアップ」の販促を強化するとともに、優れた衝撃吸収性能を発揮する新素材「スパンドール」で新規販路を掘り起こす。

 銀練り込みで開発したスペースマスターAGが引き合いを集めており、安全・衛生へのニーズが高まりを見せる中、シャインアップも合わせて拡販を計画する。

 スパンドールは衝撃吸収性に優れた樹脂とナイロンとを複合紡糸で生産する新素材。衝撃を吸収する繊維素材というのは珍しく「各方面から注目を集めている」と言う。シューズやソックス、スライディングパンツなどをターゲットとする開発を急いでいる。

 この間、強化してきた製品OEM事業を高度化するとともにユーザーからの要望が強まっている昇華プリントの設備を導入。4月から稼働させる。

〈ウールを中わたで提案/アルゴ・インターナショナル〉

 原料商のアルゴ・インターナショナル(愛知県春日井市)はウールを中わた向けに加工した「ラバラン」の提案に力を入れる。羽毛や合繊に変わる“ウールダウン”として差別化を図る。

 製造するのはドイツのウール加工業で1913年に設立したバウアーフリストッフェ。ウールについての豊富なノウハウと特殊な技術を生かしラバランを開発した。

 ラバランはシート状の構造で欧州産のウールとトウモロコシ由来のポリ乳酸を合わせたサステイナブルな素材。ウールの保温性や調湿性、防臭性に加えて、ウォッシャブル性や耐久性も備える。

 ラバランの生産量は年々増えており新型コロナウイルス禍でも落ち込みは少なかった。海外ではアウトドアやベビー向けのブランドで採用例が増えており、国内でも徐々に浸透してきた。

 日本語のホームページのほか、下げ札もそろえ発信を強化。アルゴ・インターナショナルが国内での販売を担う。