維街街道 私の道中記   維研社長  町田正浩 氏 (5)

2021年02月22日(Mon曜日)

銀の熱伝導率に着目し、特許

 三愛インテリアの工場を2007年に取得した町田は翌年、江南産地唯一になっていた紋紙製作工場が廃業を決めたことを受け、同工場の設備も取得する。さらに09年、倒産した井上インテリアの織布工場を取得。同工場に整経機も導入する。14年には、廃業した岩田撚糸の工場と織機を取得した。

 工場取得のために、積み立てていた自分の役員退職金も注ぎ込んでしまいました。そこまでして取得したのは、生産委託先の廃業、倒産が加速していたからです。作る所がなくなれば、産元業は成り立たなくなります。

 ピーク時に20億円だった売上高は5年ほど前まで減り続けました。しかしそれ以降は横ばいで推移しています。20年6月は6億9千万円でした。工場の取得を進めていなければ、5年前以降も減り続けていたでしょう。残念ながら今期は、新型コロナウイルス禍で大きな減収になりますが。

 かつて15%だった内製化率は現在96%になっています。年産能力は90万㍍です。ジャカードのカーテン地メーカーとしては日本2位の規模だと思います。

  厳しい環境下の江南産地で維研は、産元業から、企画機能を持つ製造業にかじを切ることで生き残った。現在、各工場の採算も安定している。ところが、新型コロナ禍に襲われる。

 マスクを求めて社員が早朝からドラッグストアに並ぶのですが、何回並んでも買えない。それで、自社で作ることにしました。それをネットで販売もしています。

 抗菌性を付与するために銀イオンを練り込んだポリエステル長繊維使いのマスクも扱っているのですが、私は、その糸の熱伝導率の高さに着目しました。銀はあらゆる金属の中で最も熱伝導率が高いのです。それを使えば、マスクの中にこもった熱を外に逃がすことができると思いました。検査機関に調べてもらうと、確かに接触冷感機能がありました。

 糸とそれを用いた生地、不織布について昨年7月、特許を申請しました。同時に、その糸を使い、涼感をうたったマスクを発売しました。それ以外にも、ゴルフルウエアやビジネスシャツ、ジャケット、シーツ、敷マットなどの試作を進めています。

 糸は、あるメーカーから調達するのですが、熱伝導率の高さを売りにする用途については当社だけが扱えることになっています。ですので、さまざまな企業と連携して、糸、生地、製品として販売するつもりです。糸については、先染め糸としても販売します。

  両親を含め9人の大家族を路頭に迷わせてはいけないという長男としての義務感で、危機に陥った家業を継いだ町田。悪戦苦闘しながらも、カーテン地産地、江南の灯を守ってきた。

 支えてくれた家族や社員、取引先さまには本当に感謝しています。人生、死ぬまで勉強、修業だと思っています。いろいろなことに興味を持ち、情報を集め、新しい発想で組み立て、世間のお役に立つ提案ができるよう研さんします。

(文中敬称略、この項おわり)