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特集 事業戦略Ⅱ(1)/シキボウ/「新たに創る」を加速/衛生加工の普及に取り組む/上席執行役員 繊維部門長 加藤 守 氏

2021年02月25日(Thu曜日) 午後1時29分

 「新型コロナウイルス禍は、これまでゆっくり進行していた変化を加速させた」――シキボウの加藤守上席執行役員繊維部門長は指摘する。ネット販売の拡大や衛生加工への注目、SDGs(持続可能な開発目標)への要求などが一段と強まる。こうした消費構造の変化に対応するため、現在取り組んでいる2カ年の緊急経営計画のテーマの一つである「新たに創る」ことを加速させ、海外市場の開拓や衛生加工の普及を目指す。

  ――2020年度(21年3月期)は新型コロナ禍の影響を大きく受けています。

 当社も4~6月は全分野で大きな影響を受けました。特に商業施設や店舗の休業の打撃が大きかったです。例えば原糸は百貨店で販売されている衣料品向けが多いため受注が落ち込みました。受託生産も減少しています。ユニフォーム地も元々市況が軟調だったところに新型コロナ禍が起こりました。特に備蓄アパレル向けの定番素材の動きが鈍い。やはりまだ流通在庫がかなりあるようです。企業別注も案件の延期や中止が相次ぎました。中東民族衣装用織物の輸出も商談がストップしました。

 10月以降は回復傾向となり、抗ウイルス加工「フルテクト」など衛生加工の成約・出荷も本格化するなど明るい材料もあります。フルテクトは採用アイテムも広がり、特に寝装用途で販売が拡大しています。ただ、衛生加工の好調を含めても、やはり全体では上半期(4~9月)の落ち込みをカバーするには至っていません。

  ――新型コロナ禍によって事業環境が大きく変わりました。

 これまでゆっくりと進行していた変化が、新型コロナ禍によって加速したという側面があります。このため、現在の変化はウイズコロナでも続くことでしょう。EC(電子商取引)が拡大し、衛生加工などへの関心が一段と高まっていくと思います。SDGsに向けた対応の要求もますます強まるでしょう。特にウイルス対策はパンデミック(世界的大流行)が収束した後も標準化するのでは。このためフルテクトでマスクやスプレーなどB2C商品の開発・販売にも取り組んでいます。

 ECの拡大によって機能素材をアピールする機会が増える可能性もあります。機能性は目に見えないため、店頭だけではどうしても消費者に十分に伝えることが難しい面がありました。しかし、ECなら画像や動画を使って機能を説明することができます。

 SDGsに向けては、サステイナブルな農法で栽培される米綿の認証である「コットンUSA」を積極的に活用しています。燃焼時の二酸化炭素排出量を抑制する特殊ポリエステル繊維「オフコナノ」も商品化しました。これにより天然繊維と合成繊維の両方で環境配慮型の原料をそろえたことになります。

  ――21年度(22年3月期)に向けた戦略は。

 現在、21年度まで2カ年の緊急経営計画を実行していますが、2年目の重点テーマになるのが新しい日常に対応して「加速すること」と「新たに創ること」です。現在の事業を加速させることの一つがフルテクトなど衛生加工の拡販と定番化。そのため衣料用途だけでなく不織布製品などでも用途開拓を進めます。加工を担うシキボウ江南(愛知県江南市)には不織布用の加工ラインもあります。フルテクトのほか、制菌加工「ノモス」も含めて機能糸としても展開し、用途開拓に取り組みます。

 事業形態を「新たに創ること」として、特に海外販売の拡大を目指します。ここでもフルテクトが戦略素材。抗ウイルス加工には世界的な需要があるはずです。インドネシア子会社のメルテックスでもフルテクトを加工できますから、まずは東南アジア市場での販売を目指します。もちろん、現地の法規制などハードルは低くありません。現在、インドネシアでは保健省の病院向け製品登録を取得するなどで現地販売に向けた体制を整備しています。

 昨年、ベトナムのホーチミンに事務所を開設しました。直後に新型コロナ禍が起こるなど想定外のこともありましたが、やはり正解だったと考えています。もちろん駐在員事務所なので営業活動や決済はできませんが、それでも現地での情報収集で重要な役割を担っています。引き続きインドネシアなどの関係会社と連携し、東南アジア市場での販売拡大につなげていきます。

  ――提案や販売手法も大きく変化しました。

 デジタル営業を推進します。既にウエブ展示会を開催し、好評でした。メールマガジンの配信もスタートしています。まだまだ試行錯誤の面がありますが、繊維部門の若手や女性のメンバーが中心となっていろいろと新しいことに挑戦しています。そういった若手や女性の活躍という面でもプラス効果を期待しています。