繊維街道 私の道中記 豊和会長  田代豊雄 氏 (3)

2021年03月24日(Wed曜日)

ストーンウオッシュ誕生

 さまざまな加工技術を開発してきた豊和は、業界を驚かせる加工を考案する。ジーンズに中古感を付与する加工の原点とも言えるストーンウオッシュ加工である。

 今から45年ほど前でしょうか、ブリーチ加工が業界に行き渡り、急に仕事が減ったのです。何か新たな切り口はないかと毎日考え、議論を重ねました。それでも思いつかないわけです。

 そんな折、中学生だった長男の智彦と小学生だった次男の雄久(現社長)が、プラモデルで遊んでいたのを見たのです。私も工場で歯車をおもちゃにしていたことや、青年時代にジーンズをたわしでこすっていたことを思い出しました。そこでひらめいたのです。「あえて中古感がある商品を作ったら売れるのでは」と。

 何でこすろうかと試行錯誤しました。ワッシャーの中に材木の切れ端を入れてみたり、ワッシャーにヤスリを付けてみたりしました。そして、ようやく軽石と一緒に洗うという方法を編み出しました。

 開発は一つ40円のお風呂用軽石で行いましたが、大量に加工するとなると軽石を安く仕入れる必要があります。

  田代は軽石の産地、鹿児島に足を運ぶ。

 業者に相談すると、売ってくれないんですね。「埋め立て用に使われている軽石が、そんな用途に使えるはずがない」と相手にしてくれない。「大きさを選別してくれたら買うから」と食い下がりましたが、取り合ってくれません。「そこに捨ててある軽石の中から好きな大きさのものを持っていけ」というので、一部をトラックで持ち帰りました。

 その軽石で試験してみると、良い感じにアタリが出ます。そこで何度も何度も鹿児島に言って説得しました。そして、「袋一杯500円で買う」と持ち掛けました。向こうはダンプ一杯数百円で商売していましたから、「その値段なら売る」と話が決まり、5㌢くらいのものを選別して売ってくれるようになりました。

  紆余曲折を経て、1978年にストーンウオッシュ加工技術が確立する。ただ、すぐに爆発的にヒットしたわけではない。加工を依頼してくれる企業がなかなか増えない。そこで、その技術をさらに深めることに取り組む。

 82年に、青のジーンズを黒に染めてストーンウオッシュ加工し、青と黒を掛け合わせた色を表現するスーパーブラックを開発しました。ところが、それを最初に提案したナショナルブランドに「汚くて扱えない」と厳しく叱責(しっせき)されてしまいました。

  中古感のある商品を新品として売るなど考えられない時代だった。しかし田代には、爆発的にヒットするとの予感があった。

(文中敬称略)