繊維街道 私の道中記 豊和会長  田代豊雄 氏 (5)

2021年03月26日(Fri曜日)

“人生はゴールのない駅伝”

 ドイツの「黒い森」の酸性雨問題を受け、洗い加工業界でも環境対応が進んだ。豊和は、塩素系漂白剤など化学薬品を使わないエコブリーチを1996年に、超臨界高圧流体加工装置による無水染色法を2001年に開発した。

 水を使わない加工への注目度は高まっています。02年には、オゾンによる脱色方法を開発。07年に新設した本社第二工場へは、レーザー加工機を導入しました。私は設備を探すのが好きで、レーザーはほぼ衝動買いです。欧州訪問時にレーザーの話を聞き、すぐにそのメーカーへ飛んで行って契約書にサインし、日本に送ってもらいました。

  環境対応への取り組みは20年に、水を極力使わず、次亜塩素酸やボイラー熱も使用しないミストオゾン脱色の開発に至る。こうした行動力で近年は、洗い加工に直接関係のない分野にも取り組みを広げている。

 市場が縮小傾向にある中で、既存事業に加えて産地を残す方法が何かないかと考えました。そして、11年に導入していた島精機製作所のホールガーメント機を活用し、ニット製品の直営店をやろうと考えたのです。15年に岡山県倉敷市美観地区に、ニット製品を販売する直営店「このいと ツムグ紡」をオープンしました。製品OEM事業のために17年に設立したHTKデザイン(東京都渋谷区)と共に、新しい事業として育ってくれればと思っています。

  田代にとって事業拡大は自社の繁栄のためだけではない。「豊和」の社名は自身の名前の一字「豊」と、祖父や父から学んだ人とのつながり、「和」を合わせたもの。今後も会社と繊維業界の発展を願う。

 私たちは、国産ジーンズが隆盛を極めた一番良い時代を過ごしたと思います。市場が縮小し多様化も進む中、これからは大変です。

 人件費比率を下げて、賃金を上げる。資本装備率の向上が必要になると思います。その資本をIT、人工知能(AI)、合理化などのどこにかけるか。玉野工場は90年代初めにコンピューター制御で自動化し大量生産を実現しましたが、これからは小ロット多品種生産のための合理化、生産性の向上を目指すべきです。

 ただ、社長の雄久をはじめ幹部にあれこれ指示したりはしません。私も自由にやってきましたので。続けてくれればどんな形であっても良い。“人生はゴールのない駅伝”のようなものだと思っていますから。

(おわり。文中敬称略)

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