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特集 尾州産地総合(6)/魅力いっぱい!/ウールのこんな使われ方

2021年03月26日(Fri曜日) 午後3時35分

 ウールは保温性や難燃性といった優れた機能性からファッション衣料だけでなくさまざまな用途に広がっている。シャンプーや中わた、建材、芯地などを手掛ける企業があり、ウールという素材の魅力を生かした商品として訴求。各社の取り組みを紹介する。

〈毛芯地でシルエット美しく/田幸〉

 衣料副資材製造の田幸(岐阜市)は羊毛、獣毛を使った毛芯地を手掛ける。紡績から織布まで一貫したモノ作りで高品質な商品を供給。官需の制服や高級スーツに採用されている。

 毛芯地は動物繊維が持つ反発力や弾力性を生かすことで服のシルエットを美しく保ち型崩れしにくいのが利点だ。ウールは吸湿性もあるため毛芯地は日本の多湿の気候にも適している。

 現在の主流となっている接着芯は樹脂を使って張り合わせるため手触りが固くなりがち。その点、毛芯地は縫製して張り合わせるため素材の風合いを残したまま製品にできる。

 サステイナビリティーの観点からも毛芯地への注目度は高まっている。ウールは生分解性がある上にリサイクルもできるため環境への負荷低減を図ることが可能だ。

 毛芯地は重く洗えないという欠点があったが、それを解消したのが同社の「ミニマムライトヘアー」。緯糸にウールとポリエステルのカバーリング糸を使用。ウール100%と比べて半分の軽さに抑え耐洗濯性も備える。

〈中わたの“ウールダウン”/アルゴ・インターナショナル〉

 ウールの中わた素材「ラバラン」を販売するアルゴ・インターナショナル(愛知県春日井市)。ウールが持つ多彩な機能を生かし、羽毛や合繊に変わる“ウールダウン”としてスポーツやアウトドア向けなどへ提案を進めている。

 ラバランを製造するのはドイツのウール加工業、バウアーフリストッフェ。1913年設立の老舗メーカーでウールについての豊富なノウハウと特殊な技術を生かし開発した。新型コロナウイルス禍でもラバランの生産は堅調に推移する。

 ラバランはウールにトウモロコシ由来のポリ乳酸を混ぜたシート状の構造。ノンミュールシングウールも使用しサステイナビリティーを意識した。

 ウールならではの高い機能も特徴で、保温性や調湿性、防臭・防汚性に加えて、ウオッシャブル性や耐久性も併せ持つ。

 海外ではミドルアッパーゾーンのブランドに対して存在感を発揮。従来のアウトドアだけでなく、ベビー向けの敷きパッドやスキー用のヘルメットに使われるなど多彩な用途への可能性も秘める。国内でも徐々に採用例は増えつつある。

〈溶かしたウールで髪の毛丈夫に/リトル・サイエンティスト〉

 ヘアケア商品製造販売のリトル・サイエンティスト(愛知県一宮市)は溶かしたウール原料を使用したシャンプーやトリートメントを打ち出している。ウールの成分が髪の毛の強度を高められることに着目した。

 2017年にウールを溶かして製造する原料「アミノエチルジスルフィドケラチン」を世界で初めて開発。髪の毛やウールにはタンパク質の一種、ケラチンが多く含まれる。この原料中にあるケラチンと結合することで髪の毛など対象の物質強度を高めることができる。

 「尾州で生まれ育ったためウールに愛着があった」と語る野村恭稔社長。ウールを溶かす研究を長年続けており、水溶化したウールの使い道を模索。髪の毛のダメージケアへの活用を思い付き、02年に同社を創業した。

 このほど、髪の毛の油分に結合し、しなやかさをキープする新原料を開発した。昨年からトリートメントとして「リケラプラス」という商品名で販売を開始。新原料は動物繊維の強度を高めるなどの応用も可能で、「サステイナビリティーや循環型という点で活用できそうだ」と話す。

〈人と環境に優しい断熱材/長尾商事〉

 羊毛を中心とした天然繊維の原料商、長尾商事(名古屋市中区)はウールを使用した断熱材を販売している。ウールの機能性に加えてサステイナブルな原料であることから人と環境に優しい商品として打ち出す。

 長尾和彦社長の知人の設計士からウール100%の断熱材が製造できないかと依頼があったのが開発のきっかけ。2001年からスタートしたが、厚みを一定に保つことが難しく5年かけて商品化し、「エコール100」という商品で販売を始めた。

 断熱材はガラス繊維でできたグラスウールが広く普及。安価で吸音性などに優れる一方、カビやダニが発生しシックハウス症候群を誘発する可能性があった。

 その点、エコール100はウールの調湿機能でカビやダニの発生を抑制するほか、難燃性や空気中の化学物質を吸着する空気浄化作用もある。虫食いを予防するため忌避効果がある防虫加工も施した。幼稚園向けなど採用例も徐々に増えつつある。

 さらに、同社はウールの生分解性に着目し肥料に活用する取り組みも始めた。

〈モンベル/ウール製インナー伸びる〉

 アウトドアスポーツ用品製造販売のモンベルは、インナーウエア素材としてウールを重視してきた。冬場の同社インナー売上高に占めるウール製の割合も高まっている。同社広報部によると、「20%程度だったのが30~35%になっている感じだ」と言う。5年前から、ウールを見直す消費者が増えており、その結果ウールのウエートが高まったとみる。

 インナー素材として同社がウールを重視するのは、吸湿発熱性が高いから。ウールにあるスケール(うろこ状組織)の表面に水をはじく性質、内部に湿気を吸収する性質があることも高く評価している。このスケールのおかげで、汗をかいても冷えを感じにくく、かつ内部に取り込んだ湿気をゆっくり外部に逃がすため、急激な汗冷えを防ぐとする。

 同社が採用しているウールは、産出量が非常に少ない18・5マイクロメートルの「マルチクリンプウール」。ストレッチ性に優れ、かつ通常のメリノウールよりも繊維長が約15%長いため、チクチク感が少なく心地よい肌触りだという。

〈「尾州ロリィタ」/尾州生地をロリータ服に〉

 ウールが使われるファッション衣料と言えばスーツやコートといった重衣料が中心。しかし、そうした従来の衣料とは異なる服でウールが使用されるケースもある。ロリータ服とウールの組み合わせだ。

 「これまで尾州の生地を使った服を着たことがなかった」。ロリータ体験サロンを営むショコラさん(29)はこう振り返る。尾州で生まれ育ったものの、スーツで使われることが多い尾州の生地は遠い存在だった。

 そこで考えたのが尾州のスーツ地を使ったロリータ服「尾州ロリィタ」だった。中学生の頃にロリータファッションにはまったショコラさん。「自分が最高にかわいいと思える形で着たかった」

 出来上がった尾州ロリィタはネービーやグレーといったスーツ地が際立つ上品な仕上がりに。襟元のフリルや腰回りのリボンといったロリータ服のデザインの中にシックな雰囲気が漂う。

 クラウドファンディングで30着販売すると数時間で20着売れた。「このロリータ服なら着られるという声もあった」と購入者からの反応は上々。4月からネット通販も始める予定だ。