ベトナム/海運費高騰、収束の兆しなく/輸出企業の影響、より深刻に

2021年04月01日(Thu曜日) 午後1時21分

 昨年後半から続く国際海運運賃の高騰で、ベトナムの輸出業者への影響が深刻化している。主力輸出品の一つである海産物の業界団体からは、仕向け国ごとに異なる運賃が昨年以降、最大で10倍になったとの声も上がる。新型コロナウイルス感染拡大による港湾作業の遅れやコンテナ不足に起因するとされる海運コストが軽減される兆しは見えておらず、回復基調をたどる景気の足かせとなっている。

 「ベトナム・ニュース(VNS)電子版」によると、海運費上昇によるベトナム国内の輸出業者の苦境は今年以降、いっそう深まっているようだ。

 マレーシアや中東イエメン、バーレーンにセラミックタイルを輸出している南部ビンズオン省のタイル製造業者によると、ホーチミン市のカットライ港からイエメンのアデン港までのコンテナ輸送の運賃は、今年1月初旬時点で20フィートコンテナ1個当たり2500ドルとなり、昨年12月中旬時点の1500ドルから半月余りで1・6倍強に上昇した。

 生産した製品を船に積み込むためには、製品をコンテナに収容する必要があるが、カットライ港でもコンテナの不足は深刻で、製品をトラックに積んだまま長時間待機することも少なくない。同社の女性幹部であるブー・チャン・ニュン氏は「既に港に運んでいた20個のコンテナをビンズオン省の自社倉庫に戻すことを検討したこともある」と述べ、物流コストの負担に悲鳴を上げた。

 ホーチミン市手工芸品・木製産業協会(HAWA)のトラン・ラム・ソン氏は、輸出の遅延が生産量の削減にもつながっていると指摘した。同協会加盟社の主要輸出先であるドイツ・ハンブルクへの海上輸送費は、以前の1コンテナ当たり2千ドルから直近では8千ドルと4倍に上昇。多くの企業は自社工場の倉庫のスペースが限られているため、生産を抑えざるを得ない状況という。

 ベトナム水産輸出加工協会(VASEP)のチュオン・ディン・ホエ事務局長によると、ベトナムから海外各国への海上輸送運賃は、仕向け国によって昨年11月時点から2~10倍に増加した。影響はサプライチェーン(調達・供給網)の混乱、出荷の遅延を引き起こしており、「多くの注文がキャンセルになった」と窮状を訴えた。

〈大型貨物船の不足も一因〉

 海上輸送費の上昇は輸出関連企業だけでなく、原材料を輸入に頼る国内の生産業者や農家にも波及している。経済界からはベトナム政府に支援を求める声も上がっているが、対策には限界があるようだ。

 ベトナム運輸省のグエン・ニャット次官は「海運の運賃はあくまで市場の需給バランスで決まる国際的な問題だ」と強調。(新型コロナウイルス禍が深刻な)米国や欧州にコンテナが滞留しているのが今の不足の原因と分析した上で、「政府はコンテナをベトナムに輸送するように強制したり、短期間でコンテナを製造したりすることはできない」と弁明した。

 同省海事局(ビナマリン)は海運各社に透明で公正な運賃の設定・公表を求めたほか、港湾利用料の一部減免などを既に実施している。ニャット氏は「政府にできるのはその程度だ」と述べ、「焼け石に水」の国際市況に無力感をにじませた。

 同省によると、ベトナムには現在、1516隻の大型船舶があり、そのうち1049隻が貨物船だ。このうち、コンテナ船は貨物船のわずか3・7%に過ぎない。このため、輸出入品の90%以上は外国の海運会社に依存しており、それが国際市況に左右される一因になっているという。

〈コンテナの9割、中国が生産〉

 昨年秋ごろから拍車がかかった海運市況の高騰は、世界最大の工業品生産大国である中国の景気回復による影響も大きい。中国は世界のコンテナの9割を生産しており、現在、急ピッチでコンテナの生産を進めているとみられるが、世界的な需給の不均衡が収束するめどはまだ見えていない。

 日本海事センターによると、最大の基幹航路である米西海岸―中国・上海航路の運賃は昨年9月以降に急騰した。昨年1月時点では、20フィートコンテナの運賃が2090ドルだったが、今年1月時点では2560ドルとなっている。

 こうした状況を受けて、ベトナム鉄鋼大手のホアファット・グループは、北部ハイフォン市と南部の2カ所にコンテナ製造工場を新設する計画を最近明らかにした。年産能力50万TEU(20フィートコンテナ換算)で、来年第2四半期(4~6月)に生産を始める予定だ。

[NNA]