インドネシアの日系繊維企業/事業構造の転換が加速/消費変化への対応急ぐ

2021年03月25日(Thu曜日) 午後3時5分

 インドネシアで新型コロナウイルス禍が始まって1年ほどが経つ。世界的な繊維需要の減退が現地の日系繊維企業に与えた打撃は大きい。消費の変化に対応した事業構造の転換を急ぐ。(橋本 学)

 日系繊維メーカーにとって、これまでインドネシアは技術的に容易で量産に適した糸・生地の生産地として定着してきた。衣料品関連では、現地で作る素材は同国内か東南アジア圏で縫製され最終製品は日本で売られるケースが多かった。アイテムはユニフォーム、スーツ、ビジネスシャツ、カジュアルウエア、スポーツ衣料、インナー、靴下などさまざまだ。

 ところが近年、現地の日系繊維企業を取り巻く環境は厳しさを増していた。汎用性の高い糸・生地の市場は中国系やローカルメーカーの素材の価格攻勢に押されていたことに加え、主な売り先である日本市場では売れ行きの鈍さが続いていたからだ。

 このため日系素材メーカーや商社はここ5年ほどの間、現地で生産・調達する商材にさまざまなな機能を付加することで安価な商材との差異化戦略を進めてきた。糸の細番手化、ストレッチ性能、風合いや防シワ加工など年々、付加価値のバリエーションが増えていた。売り先も日本だけでなく、現地市場や欧米を始めとする第三国輸出と新たな販路開拓に力を入れ始めていた。

 こうした中で昨年から新型コロナ禍が始まり、世界的な繊維需要の“蒸発”が起きる。2020年度は衣料品用の素材を供給する日系メーカーや商社で軒並み30~50%近い減収を強いられている。ほぼ全ての工場で操業率が前年比で著しく低下し、利益率も大きく落ち込んでいる。

 現地での予防接種も目前となり、“アフターコロナ”も視野に入った今、インドネシアの日系企業は、これまで進めてきた生産品の高度化や販売先の多様化など消費の変化に対応した事業構造の転換を加速させている。

 ユニチカトレーディングインドネシアは機能素材の現地調達を強め、シャツ地の現地市場の開拓に力を入れる。昨年後半から現地の営業スタッフを増員した。現地のユニフォーム分野の素材提案にも着手する。ユニチカの現地紡績、ユニテックスは昨年、先染め織物の加工から撤退し、紡績事業に特化する施策を取った。得意とする複重層紡績糸「パルパー」で日本と現地の両市場でシェアアップを目指す。

 東海染工グループのトーカイ・テクスプリント・インドネシアはこれまで現地の内需をメインに綿100%地を主力としてきたが今後、これまで比率の高くなかったレーヨン100%のプリント・無地染めの取り込みを強化する方針。「これまでしてこなかったポリエステルへの染料プリントもできるようにして加工の幅を広げる」(本田忠敏社長)

 シキボウグループのメルテックスは「GOTS」「OCS」といったオーガニック認証を今年1月に取得し環境に配慮した素材の開発を強化する。これまで日本市場を主力としてきたが、世界的な環境基準に対応した素材を作る工場として認証を受けることで、欧米を始めとする環境への意識が高い企業から問い合わせが来た際に常に対応できる体制を整える。