21世紀を聞く 日商岩井/年清彰雄執行役員アパレル社長

2000年04月06日 (木曜日)

 四月一日付で「カンパニー制」を導入した日商岩井。事業分野ごとに最適な組織規模、形態、人事制度、運営ルールを確立、適用することで意思決定の迅速化と自己責任の徹底を図り、連結ベースでの資産効率、資本効率を高めるのが目的。繊維本部は食料本部、物流・保険本部とともに「生活産業カンパニー」を構成する。繊維営業の実働部門は日商岩井アパレルに移管した。

  --カンパニー制を敷くと同時に、繊維部門は日商岩井アパレルへ大半の商権を移管しましたが。

 社内の疑似カンパニーとして新組織がスタートしました。連結納税制度など法整備が進んだ段階で事業会社へ移行させる狙いがあります。営業部門は四部門・十九本部を廃止し、五つの重点事業分野を軸に九つの「カンパニー」を置いたわけです。

 繊維本部は一営業部を残し、商権を関係事業会社に移管しました。すでに主力移管先の日商岩井アパレルが日商岩井繊維原料を吸収合併し、その受け皿としたものです。

  --日商岩井・繊維グループとしての規模は。

 本体に残る繊維部は年商八百二十億円程度、日商岩井アパレルは同七百九十億円くらいになります。ただ、重複部分がありますので、相殺すると約千四百億円の見込みです。取引先の理解を得て、本部商権を二〇〇一年度をめどに完全移管する計画です。また、本部に残る人員は海外人員を含め約三十人になります。

 このほか日商岩井繊維が同三百五十億円をそれぞれ見込み、二〇〇一年度にはこれらを統合し「繊維専門商社」化を図りたいと考えています。ただ、中身の精査を今後進めていく必要がありますが。

  --利益計画は。

 初年度は経常利益で四、五億円、三年目に十五億円を見込んでいます。

  --「分社」はマイナスイメージにとらえられがちですが。

 今回の電子・情報部門の分社化--ITXの設立がいい例ですが、分社によって株式売却益を得るシェア・アウトの考え方が一貫していると考えていただければいいと思います。繊維のみならず、各事業を値打ちのある会社にするのが今回の組織改革の狙いなんです。その意味で、日商岩井アパレルが早く自立できるようにし、いずれは上場も、と考えています。

  --生まれ変わる日商岩井アパレルですが、アピールポイントは。

 「海外生産機能を備えた繊維専門商社」を目指したい。何事もスピードの時代ですから、小さくなったことを逆手に、意思決定を速め、専門商社としてのキメ細かな対応を図りたいですね。

  --重視する課題は。

 引き続き、(1)国内外での生産機能の充実と一元管理(2)SPA事業への対応強化(3)SCM構築などによる新規流通分野への積極参画(4)ブランドビジネス展開--などが挙げられます。

 日商岩井アパレルは平均年齢が三十八、九歳と若返り、その機動力で顧客のニーズにこたえたい。

  --海外は。

 ファッションフォース香港が中核となります。すでにホーチミン、無錫、ハノイ、ミラノの各店がファッションフォース傘下に入り、今後、中国の繊維各店もファッションフォースに組み入れ、アジア戦略を一元的に構築する方向です。

  --「海外生産に強い専門商社」とすれば、中国での事業展開が欠かせませんが。

 「作る」方もさることながら、「売る」ことも考えています。中国企業と合弁で、同地で婦人服小売チェーン店展開に乗り出す計画です。早ければ今月にも日中共同出資による販売会社を設立します。日本ブランドをライセンス供与し、同地で生産・販売するもので、三年後には三十店舗程度にまで拡大したいですね。

  --その狙いは。

 世界貿易機関(WTO)加盟を控え、中国は一段と市場開放が予想されます。それが進出を決めた理由です。

  --具体的には。

 提携するのは長年の取引関係にある湖北省武漢市に本拠を置く婦人服アパレルの太和実業です。同社は武漢市、上海市、北京市、江蘇省、浙江省を中心に三百店舗を持つ縫製・小売一貫のアパレル企業で、ベターゾーン商品でこの間、急成長を遂げています。しかしWTO加盟後、欧州を中心に高級ファッション製品の流入が予想されることから、ブランド力の向上に向け当社と提携することになりました。

 当社はデザイナー・西田武生氏の「タケオ・ニシダ365」と提携し、同ブランドを太和実業に供与します。欧州、日本などから素材を持ち込み、太和実業傘下の縫製工場で生産し、共同で武漢市に設立する販売会社を通じて中国展開に乗り出します。

 計画では第一号店は武漢市に設け、年内に上海、北京など主要都市に路面店、インショップ形式で店舗網を広げ、年内に十店舗を予定しています。初年度は一店舗当たり年間四百万元の売り上げを見込んでいます。

 また、提携第二弾として、日本の大手アパレルブランドを同社にあっせんする計画で、現在交渉を進めています。まとまれば「タケオ・ニシダ」とは別店舗で展開する計画です。

 この中国での展開と、伝統と実績のあるベトナムでの取り組みを両軸に、海外での高い専門性を発揮していきたいですね。