企業シリーズ専門商社・蝶理

2000年09月06日 (水曜日)

筋骨体質へ抜本改革

 蝶理は今期から二〇〇三年度まで四カ年の新中期経営計画「チャレンジング蝶理21」(「CC21」)に取り組み、事業規模や資産などすべてを現状の七割に縮小する中で、「高専門性・高機能型体質を実現し、筋骨質型の収益構造を構築する」(中村久雄社長)方針を明らかにした。同時に財務体質改善に向けて、約七十三億円の第三者割当増資を十月に実施。計画期間中に予想される処理損失に前倒しで対応するとともに、自己資本を充実させ、千六百八十九億円の連結有利子負債も二〇〇三年度末には九百六十億円まで圧縮する。蝶理の進路を検証する。

 中期計画「CC21」は、(1)収益構造の抜本的強化(2)財務体質の抜本的改善(3)自律・自主・自助を責務とする風土への革新(4)現行動計画の仕上げと変革の加速による経営基盤の強化――の四つを基本に据える。

 収益構造強化のためには、ビジネスユニット(BU)を軸にした事業経営を徹底し、低収益・非効率事業からの撤退と収益コア事業への集中、目的別分社などを推進する。今年度で六十八(うち繊維は三十八)あるBUは二〇〇三年度に四十四(コア二十五、維持十五、開発・検討四。繊維は計二十三)に再編する。将来性・収益性を考慮して、捨てるべきものは捨てる方針。

 また、連結経営の視点から関係会社の再構築にも着手し、九十一社を六十九社に減らす。単体経費や本体人員も二〇〇〇年度を基準に二〇〇三年度まで三〇%削減し、人員は合計三百四十人減らして七百九十人体制とする。

 さらに財務体質改善に向けて、約七十三億円の第三者割当増資を十月に実施する。計画期間中に予想される処理損失に前倒しで対応するとともに、自己資本を充実させ、千六百八十九億円の連結有利子負債も二〇〇三年度末には九百六十億円まで圧縮する。

 一方、この中期経営計画実行のため、十月六日払い込みで旭化成工業、東レなどを対象に総額約七十三億円の第三者割当増資を実施する。中期計画中に発生が見込まれる処理損失などに前倒しで対応するため。

 一株百二十円で六千百万株を発行する。対象は三十六社で、うち繊維関係は旭化成、東レなど二十二社。発行価額七十三億二千万円のうち、三十六億六千万円を資本金に組み入れるなどし、自己資本を充実させ財務体質を強化する。

 現在一九・九七%の株式を保有し、筆頭株主である旭化成は約三十三億円を引き受け、二八・五四%の持ち株比率となる。一五・九七%で第二位の東レも約二十七億円を引き受け、二二・八三%を保有することになる。両社合計では五一・三四%となり過半を占める。

 旭化成は「蝶理は持分法適用関連会社であり、かつ重要取引先との認識から増資引受に応じた」とし、蝶理の中期計画が「いち早く達成できるよう協力を続ける」とコメント。東レも「蝶理の繊維や化学品の取り扱いにおける専門性を高く評価している」として、中期計画達成のため「必要な支援を行っていく」考えを表明した。

 この第三者割当増資を背景に、経営改善・リストラに伴う損失などを今三月期で特別損失として計上する。特別損益が単体でマイナス百四億円、連結で同三十八億円発生、連結最終損益は前回予想の黒字二十四億円から赤字十五億円になると下方修正した。単体の最終損益もトントンから赤字八十六億円となる。ここで一気にうみを出し、二十一世紀を迎えようとするもの。

  ――筋骨型経営とは?

 グローバル競争の激化、流通構造の激変など世の中は劇的なスピードで変化している。それに合わせて企業も変わらざるを得ない。先に帝人商事さんと日商岩井さんの繊維グループが合併することを発表されたが、そうした時代を商社が迎えていることを示すあかしだ。

 当社もより高い専門性を問われている。無駄を削ぎ落とし、筋骨型の体質を構築しないと時代を乗り切れない。徹底してダウンサイジングを行い、二十一世紀に勝ち残れる企業にしたい。

 商社は右から左へモノを移すだけで生きた時代はすでに終わっている。繊維は多段階の構造が特徴。糸を織物やニットに変え、それをまた加工して最終製品化する。この場合、生産場は内外を問わない。情報を加味してネットワークを作る。それで初めて収益につながる。

  ――今回の中期計画実行を前に思い切って特別損失を計上したが。

 資産の減損会計適用を前に、関係会社で発生すると予想される損失を前倒しで処理することにした。その結果、大きな損失が発生するが、ここでスリム化し禍根を残さないことが大切と判断した。増資を快く引き受けていただいた旭化成工業、東レをはじめとした取引先企業のご理解に感謝している。

  ――具体的にどうスリム化するのか。

 仕事の中には「コア」となるもの、「維持」しなければならないもの、「開発」していくもののほかに、将来性や収益性を判断して「捨てる」ものも含まれる。これは営業だけにとどまらず、ビジネスをサポートする後方部門についても同様だ。組織に人が存在するから生まれる仕事もある。無駄な仕事はしなくていいわけで、そのあたりにも手をつける。

 同時に人事制度も改める。仕事の中身に合致した給与制度が中核となる成果主義を徹底する。これによって企業風土を変えたい。採用にしても目的別採用に変える。ジェネラリストからスペシャリストの採用へ思い切って転換する。中期計画を完遂すれば、累積損失問題も処理できる。実行あるのみだ。