パンテキスタイル大阪2010/11月4~5日/高機能・高感度・エコ素材を訴求

2010年11月02日 (火曜日)

 台湾の繊維産業団体連合会である紡拓会は11月4~5日、大阪OMMビル2階B展示ホールでテキスタイル展示会「パンテキスタイルフェア大阪(パンテキスタイル大阪2010)」を開く。大阪での台湾テキスタイルフェアは、今回で通算33回目となる。

 今回のフェアには、テキスタイルメーカー中心に二次製品メーカーも含めて28社が参加。台湾が得意とする各種のハイテク高機能素材、高感度なファッション素材、エコ素材を出展し、日本市場の開拓を図る。

 主催者の紡拓会は11月、中国・浙江省杭州市に事務所を新しく開く。市場開拓、デザインセンター、情報技術などのサービスを提供するもので、日本アパレル産業の中国での生産に台湾素材が採用されることも期待している。

糸からの差別化織物展開

 ナイロン長繊維メーカーの力鵬企業は、ポリエステル長繊維企業の力麗企業とともに「リボロン」グループを形成する。重合から紡糸、仮撚り、織布、染色までの一貫した生産体制を持ち、ナイロンとポリエステルのチップ、糸、生地を販売する。各種の機能性加工糸を多数開発し、ホームテキスタイル、ファッション、スポーツ、産業資材など多岐にわたる分野に展開している。循環社会に向かうペットボトル回収・再生繊維も注目される。

 チップと糸が販売額の50%を占め、さらに樹脂を加工した非繊維分野の拡大も進めている。

 10%を占める生地で見れば、15年前まではほとんど衣料用途にとどまっていたが、現在では50%以上をインテリアが占める。

 パンテキスタイルへの出展は、生地が中心になる。主力のポリエステルでは蛍光晒しあるいは生機の売り込みを図る。日本で加工するための高品質な生地を日本が求めているという。ナイロンは、同社で加工したものが主力になる。

 遠東新世紀(遠東紡織を昨年10月に改称)は研究開発から重合、紡糸、紡績、織布、染色、アパレルまでの一貫した生産と販売を行う総合繊維メーカー。

 同社は、台湾で最大のペットボトル回収工場を持ち、再生ポリエステル繊維を生産。紡績から生地、アパレルまで対応している。パンテキスタイルでは、再生ポリエステル紡績糸による生地からアパレルまで一連のエコ商品を出品する。

 同時に、村田機械の「ボルテックス」革新精紡機によるボルテックス過流精紡糸を出品する。同社は、「テンセル」やモダールによるボルテックス精紡糸を1997年から村田機械とともに開発してきた。今回は、再生ポリエステル繊維を含むポリエステル繊維によるボルテックス精紡糸も加える。同社は糸を中心に販売。日本の顧客が中国でアパレルにして日本に持ち込むような取引を想定している。

  華実業は、ポリトリメチレン・テレフタレート(PTT)繊維を使った各種の形状記憶織物に重点を置く。ノーアイロン、防汚性、撥水といったイージーケア性にソフトタッチと真珠のような光沢を併せ持つのが特徴。

 経・緯ともにPTT繊維を使った無地と先染めから始まって、一見無地のような経ポリエステル×緯PTT織物、後染めによるツートーン効果を持つ経黒原着PTT×緯PTT織物、PTT×ポリエステルジャカード織物、カチオン可染ポリエステル×ポリエステル×PTTジャカード織物、PTT×レーヨン織物――などをPTTによる形状記憶織物は含む。

 このほかベビータッチを持つナイロン×ポリエステル交織物、綿ウール混織物、キュプラの複合織物、100%キュプラによる先染め織物など、多様な織物も同社は出展する。

 テキスタイルコンバーターの宗展は、自社工場を持っていないが、多様な素材を幅広く展開している。香港と上海に現地法人、ホーチミン市とニューヨークに事務所を置く。従来はファッション素材を出展していた。今回初めて機能性素材を出展する。同社は「エコファンクション」「アウトドア」「ニューナイロン」「ストレッチ」の切り口で機能素材をそろえる。同社の市場は欧米中心だが、機能性のある素材で日本を開拓するという。

 エコファンクションには、十字異型断面糸による吸汗速乾素材、十字異型断面糸に吸熱発散効果を持つ鉱石粉を加えた清涼・吸汗速乾素材、再生ポリエステル繊維、蓄熱保温効果を持つナノ遠赤外線素材、ナノ竹炭抗菌繊維、UVカット素材を含む。アウトドアは、ラミネートとコーティングによる各種透湿防水素材による。

 ニューナイロンは、綿タッチの風合いを持つカジュアルウエア素材。ブラウス、シャツなどが主な用途になる。ストレッチは、メカニカルおよびスパンデックス使用による1ウエー、2ウエーストレッチ素材と、さらにボンディングによる保温性透湿防水機能を加えたストレッチ素材を含む。

 鍵誠紡織は、100%ポリエステル長繊維織物から出発した生地メーカーで、現在は多様な織物をそろえている。織布工場を台南県に置き、ウオータージェット(WJ)織機約160台、レピア織機45台を持つ。生機の月産能力は250万ヤード。うち6割を生機、4割を加工反で販売する。WJ織機ではプレーンなスーツ地を生産し、レピア織機では合繊とセルロース繊維や天然繊維、セルロース繊維と天然繊維など各種の複合織物やファンシー織物を生産する。抗菌防臭などの機能素材やリサイクルなどのエコも含む。原料は台湾製であり、研究開発や染色加工も台湾で行う。

 主要市場は欧米。日本向けは大きくないが、商社経由で実績を積んできた。今回3回目の出展となるパンテキスタイルフェアを通じて拡大を図っている。「日本人は無理を言わず、契約を守る」と評価する。同社の素材を使った製品も、フェアでは展示する。

多彩な機能ニット生地

 国智経編工業は1991年設立の経編み企業で、スパンデックス交編のトリコットを生産している。日本との関係は長く、日本のスパンデックスやナイロン糸を使っているが、最終市場は欧米中心。日本市場の開拓を、初めて目指す。品質要求の高い日本のアパレル市場を開拓したいという。初参加するパンテキスタイルフェアでも、値段ではなく品質を訴える。

 同社は編み機26台をそろえ、月産18万キロ。29~36ゲー ジまでの編み機を持ち、5枚筬のコンピュータージャカード編み機も駆使する。60インチ幅で1メートル当たり100~500グラムの生地を生産。染色・プリント工場も持つ。ナイロンとポリエステルのリサイクル糸、吸水速乾糸や竹炭糸などの機能糸も使う。生地・柄の設計も自社でこなし、顧客に提案する。

 同社は、中国の紹興にも編み機22台のトリコット編み立て・染色工場を1995年から持っている。紹興工場ではベーシックなトリコットの生産に特化し、台湾と住み分けている。

 初出展の軒嘉実業は各種の機能性素材をそろえる。同社は、自社および協力工場で丸編み生地を生産。「MIT(メードイン・タイワン)プロジェクト」の一員となっている。自社(50%)と提携先(20%)を合わせて、生産量の70%を輸出している。欧米向けが中心。一部は製品でも展開しており、日本向けでは、大手通販のカタログに紫外線(UV)カットのパーカーが掲載された。

 東洋紡のアクリレート繊維を使った抗菌消臭素材が、機能素材の中心となる。「テンセル」などと組み合わせた丸編み生地で、婦人インナー向けに展開。一部は製品にして、台湾市場に自社で販売している。

 そのほかUVカットと赤外線(IR)カットを併せ持つ機能素材を台湾工業研究院と提携して開発。繊維自体の性能によるものでIR反射率は60%以上という。また、特殊な編み構造による吸汗速乾素材を開発。60秒での瞬間的な速乾と汗が逆流しないことを強調する。

 和慶針織廠は1973年の設立以来一貫してニット生地ビジネスに携わってきた。自社で企画を立て、台湾のニッターに生産を委託。婦人向けのニット生地で、秋冬用の厚地を得意とする。

 原料はポリエステル、ナイロン、アクリル、スパンデックス、ウールなどで、すべて台湾製を使用する。

 年商は500万米ドルで、市場別構成は中東45%、欧州30%、日本10%、米国5%など。「日本のビジネスは、商品の品質も大切だがそれ以上に人と人との信頼関係が重要と考えている」という。そのため、売るだけではなく、アフターフォローにとくに力を入れる。

 2年ぶり2回目の出展となる今回、アクリル、ウール使いの商品を主体に200点の商品を展示する。台湾では数少ない厚地ニットのメーカーとしての特性と欧州での豊富な経験を強みとして、日本市場に臨む。今回は、機能性を持つナース用制服の生地も提案する。

独自加工で特色発揮

 2003年設立の庭鋒企業はニット生地の専門メーカーとして発足したが、羽毛染色を研究開発し、日本、台湾、中国、韓国、ドイツ、豪州で特許を取得している。

 現在でもニット生地の販売が大半を占めるものの、同社としては染色羽毛の原料販売とともに同羽毛を使った製品のOEM供給を拡大しようとしている。ベスト、ジャケット、靴など羽毛使いのナイロン製品をベトナムで縫製。有名スポーツメーカーに納めている。

 パンテキスタイル大阪展には2回目の出展で、30点を展示する。前回の出展で来場者の目を引いたが、「その後のフォロー体制に問題があり、大きな成果にならなかった」と反省。日本と同社とのビジネスを結ぶ有力なエージェントとの出会いに期待する。「ファッション水準が高く、高価な商品も受け入れられる市場であることが分かった」と日本市場を評価する。

 僑福印染は熱昇華転写プリントの専門企業であり、1988年5月の設立以来20年以上の歴史を持つ。伝統的な熱転写プリントに加えて同社は今年、ミマキの大型デジタルプリント機を3台導入。デジタル熱転写プリント技術の研究開発を進めて、「小ロット、多品種、製版不要、短開発期間」の市場ニーズに対応する。

 デザイン能力を付けて従来のOEMから脱却し、現在は顧客に個性的な図案、柄を提案して生産するODMで成功しているという。海外顧客との直接のコミュニケーションを通じて、柔軟で素早い対応がしやすくなってきた。同社によれば「デザイン能力を持つ会社は少ない」。加えて、デジタルプリント機の導入により、客のニーズに応じた小ロットで何十パターンもインクプリントして素早く提案できるようになった。

 最終市場は、欧米が70%を占めている。パンテキスタイルフェアへの出展を通じて日本での知名度を高め、差別化を進めて世界のブランドとの出会いを目指す。

機能と感性生かす製品

 初出展の元享精紡工業はニット製品メーカー。手袋、靴下、帽子、マフラーなどを生産する。すべて台湾の自社工場で生産するもので、ポリエステル、ナイロン、アクリルなどの糸も台湾ローカル品を使う。抗菌、透湿、防臭、遠赤外線効果など、機能性を加えた商品が多い。

 欧州向け比率が70%と大きく、日本向けは10%。商社経由でビジネスを展開している。豊富な商品バラエティーと高水準のサービス、短納期を自負する。OEM比率が80%と高く、顧客ニーズへの的確な対応に自信を持つ。自社デザインも可能だ。

 既存取引先であるスポーツメーカーに加えて、日本市場の開拓に注力する。今回のパンテキスタイルには200点の自社製品を展示し、日本語のできる社員を待機させる。今は自社企画比率が20%と低いが、日本企業との新しい出会いで、同比率の引き上げを目指す。

 下着のOEMメーカーである密格内衣は、ISO9001を取得し、環境素材を積極的に採用している。女性用補整インナー、スポーツ用機能アンダーウエア、コットン下着を、台湾製素材を使い自社工場で縫製する。女性インナーが80%を占め、スポーツ用が10%。女性インナーをさらに伸ばしたいという。

 女性インナーでは、ナイロン、スパンデックスのほか竹繊維や「テンセル」も使用。中高級品の価格帯で、米国の百貨店でも販売されている。スポーツでは再生ポリエステル繊維も使う。

 日本のインナーメーカーを手本にモノ作りを行ってきたが、対日輸出自体は少ない。日本市場への本格的な進出は、初出展である今回の来場者の反応を見ながら戦略を含めて決める。「日本で認められれば、世界のどの市場でも受け入れられる」とし、日本での評価に期待する。

 冠向実業は、靴下、子供服、ランジェリー、パジャマなどを生産するメーカーで、うち女性用ストッキング主体の靴下を中心とする。台湾を本拠とし、さらに中国、インドネシア、スワジランドにも工場を持つ。同社の市場は欧米、中東が中心で、日本向けは少ない。対日輸出では、やはり靴下が主な品目になる。パンテキスタイルフェアでは、靴下中心にランジェリー、スカーフ、パジャマ、アクセサリーなども加えて展示する。

 同社は、機能性の高い、あるいは複雑なスタイルの靴下は台湾で生産し、中国その他の製品と差別化する。

 機能性靴下では抗菌防臭、吸水速乾などが中心。ファッション性の高いものとしては、プリントでジーンズ柄を表現したジーンズレギンス(ポリエステル65%・綿35%)やナイロン78%・ラメ12%・スパンデックス10%のラメストッキングなどをそろえる。

紡拓会市場拓展処アジア・太平洋事務科 馮瑜科長/日本市場に期待

 台湾のテキスタイルメーカー28社が今回の「パンテキスタイルフェア大阪」に参加します。台湾のテキスタイルフェアは今年で33回目を迎えることになりました。台湾繊維産業の得意な、品質の良いハイファッション素材とハイテク高機能素材、エコ素材を取りそろえます。その価値を正当に評価していただける市場として、日本市場に大きく期待しています。

 紡拓会はこの11月に、浙江省杭州市に事務所を開き、各種の市場新興、サービス活動を始めます。台湾の優れた素材と技術を、日本アパレル企業の中国大陸での生産にも生かしていただけたらと思っています。