特集・ITMA2011/“繊維機械のオリンピック”開幕迫る/全世界から約1400社が出展

2011年08月26日 (金曜日)

 国際繊維機械見本市「ITMA2011」の開幕が迫ってきた。9月22日から29日までスペイン・バルセロナの展示会場「フィラ・デ・バルセロナ・グラン・ヴィア」で開催される。4年に一度開かれることから「繊維機械のオリンピック」とも称されるITMA。今回も全世界から約1400社・団体が出展し、繊維機械の新たなフィールドを切り開く革新技術が数多く披露されることになる。そこで今回の特集では、日本と海外の有力出展企業の出展内容を紹介すると同時に、ITMAへの期待を繊維機械のユーザー、学識経験者に語っていただいた。直前に迫ったITMAに向けて、バイヤーズガイドとして役立てて欲しい。

素材・原糸部門も新設

 今回のITMA2011の特徴のひとつは、素材・原糸部門が新設されたことだ。主催者である欧州繊維機械製造連盟(CEMATEX)のステファン・コームス会長は、新部門設立の目的として「バイヤーはすべての調達ニーズを満たせる革新的なワン・ストップ・ソリューションを求めている。また、繊維素材・原糸を出展品目に含めて欲しいという要望が大手ファイバーメーカーやITMA来場者から多く届いていたからだ」と説明する。

 新設された素材・原糸部門が出展対象とするのは、天然繊維・化合繊素材と資材用素材、天然繊維原糸・化合繊糸と資材用原糸。新部門の設置によってITMA2011は、「紡績機械」「ワインダー・糸加工」「不織布製造設備」「織機」「編み機・靴下製造機」「縫製機器」「刺繍機・組紐機」「染色機・捺染機・仕上げ機」「化成品」「試験機器」「リサイクル設備」「物流」「ソフトウェア」「研究・教育」など計18部門で構成することになった。

 素材・原糸部門設立で、ITMAが素材から製造機器・ソリューションまでをトータルに扱うプラットフォームになった点で注目といえるだろう。

キーワードは“スマート”

 すでに明らかになっている各社の出展内容を見ると、今回のITMAでは“スマート”という言葉がキーワードに浮上しそうだ。前回の「ITMA07ミュンヘン」で登場した動力部に複数のサーボモーターを使用した独立駆動方式が本格化しそうだ。ここに高度化した電装関係のハード、ソフトを組み合わせることで、従来は機械式駆動によって維持されていた各機構の同調性をコンピュータ制御で可能にするという試みだ。まさに繊維機械が“スマート”な頭脳を持つことになる。

 例えばドイツの織機メーカー、ドルニエは「ウィービング・バイ・ワイヤ(電気系統による製織制御)」というコンセプトを打ち出す。航空機で普及する「フライ・バイ・ワイヤ(電気系統による飛行制御)」に発想を得たものだが、従来は機械式で同調させていた製織機構と開口機構を独立駆動とし、コンピュータ制御によって同調させようという野心的な取り組みだ。

 独立駆動方式を積極的に導入してきたストーブリも、独立駆動方式電子ジャカード「ユニバル」シリーズで培った技術を応用して、独立駆動方式耳ネームジャカード「ユニバレット」を開発した。やはりコンピュータ制御で開口コントロールする“スマート”な機械だ。

 独立駆動方式の開発が加速する背景には、一段と汎用性の高い機械性能を求めるユーザーの声がある。機械式の動力伝達では、どうしても機構の稼動域などで限界が生じる。一方、独立駆動方式では、理論的には無制限に近い制動が可能だ。つまり、従来機構では不可能だった糸・テキスタイル開発への可能性が広がる。

 一方、実用面では、やはり高生産性とランニングコスト低減、省エネルギー、省スペース、低騒音・低振動などへのニーズは不変だ。このためITMAでは各社とも、こういったベーシックなニーズに応える新機構の提案に力を入れる。これもITMA最大の見どころといえよう。

サプライズ要素も多い

 ITMAでは毎回、極秘開発機の披露などサプライズがある。今回もサプライズが起こりそうな予感だ。例えば村田機械。いまのところ出展内容の詳細は秘密のベールに包まれている。自動糸継ぎ機構「マッハスプライサー」や精紡糸管自動運搬システム「リンクコーナー」、特殊渦流空気精紡機「ボルテックス」など革新的な機械を世に送り出してきた同社だけに、その動きに注目が集まる。

 海外メーカーに目を向けると、リーターが極秘開発機の出展をほのめかす。関係者の間では「自動ワインダーに参入するのでは」といった噂も飛び交っている。具体的な出展内容を明らかにしていないエリコングループの動きも不気味。前回のITMA07では、エリコン・シュラホーストがドラムレス方式の自動ワインダー「オートコーナー5」を披露し、世界に衝撃を与えたからだ。

 こうしたサプライズ要素も、ITMAを盛り上げる大きな材料。これが“繊維機械のオリンピック”と称されるイベントとしての魅力である。

「ITMA2011」主な出展企業

主な日本メーカー、日系メーカー

AIKIリオテック

阿波スピンドル

日阪製作所

イズミインターナショナル

神津製作所

コニカミノルタIJ

松谷鐵工

ミマキエンジニアリング

村田機械

ニッタ

島精機製作所

シナノケンシ

TMTマシナリー

東伸工業

豊田自動織機

津田駒工業

ワックデータサービス

Yamagen Enterprise

Yamauchi

信州大学、FTST

タジマ工業

モナーク(福原産業貿易)

主な海外メーカー

カールマイヤー

グロツベッケルト

ストーブリ

リーター

ドルニエ

イテマグループ

ピカノール

ツルッツラー

SSM

ウスター

エリコングループ

トップテック

ダイセンも出展

 本社ダイセンも発行する英文雑誌『Asian Textile Business』(atb)として出展しています。

ブース番号はホール3-D170。『atb』を配布しておりますので、ITMA来場の際は、お気軽にお立ち寄りください。