バルセロナからの手紙『ITAM2011』報告(3)紡績機械(2)次世代に突入した革新精紡

2011年10月05日 (水曜日)

 革新紡績機は、長らく村田機械の特殊渦流精紡機「ボルテックス」対欧州勢のオープンエンド(OE)精紡機という構図が続いていた。しかし、今回のITMAでは欧州勢も本格的にエアジェット(AJ)精紡機に参入する姿勢が明確になる。だが、迎え撃つ村田機械が、さらなる進化を見せ付ける結果となった。

 開幕前から革新精紡機で話題となっていたのはリーターだった。新型AJ精紡機「J20」を披露すると発表していたからだ。実際に実機出展したJ20は、プロトタイプのJ10からは明らかに進化している。精紡室を新設計することでビスコース30単~50単なら毎分450㍍で紡出可能。生産する糸の強力もJ10から向上しており、エネルギー消費も10~12%削減している。明らかにボルテックスに対抗した機種だ。

 だが、ITMAが開幕すると、一気に注目を集めたのは村田機械の方だ。満を持してボルテックスの次世代機「ボルテックスⅢ870」をデビューさせた。

 ボルテックスⅢ870は、糸品質の安定を最大のテーマに据えた。精紡室から糸を引き出すデリバリーローラーを、従来のニップローラーからフリクションローラーに変更。精紡段階の紡績テンション制御を格段に向上させ、高品質な糸を安定的に紡績することができるようにした。

 糸のモニタリングシステムも光学センサーに加え、コンタクトセンシングによるスピニングセンサーを新たに搭載することで糸テンションや状態を常時監視し、欠点発生時には瞬時に稼働を停止させることで原料ロスも大幅に低減する。ITMAではモダール・綿混紡糸40単を毎分460㍍で紡出する実演を行い、その性能を見せつけた。

 紡績テンションの制御は、リング精紡においてはドラフトローラーやエプロンなどの調整などで長年にわたって蓄積されてきたノウハウだ。今回、村田機械は渦流精紡機においても、紡績テンションの制御という極めて高度な領域にまで踏み込み、追走する競合他社をさらに引き離す。糸品質の面で革新精紡も次世代に突入したといえるだろう。

 一方、OE精紡機では、エリコン・シュラホーストが「オートコーナー8」を出展した。生産効率が旧式機から25%向上し、単錘駆動方式により5種類の糸を同時紡績可能。サビオも「フレッキシローターS3000」を実機展示。スッセン製の紡績ユニットを使用し、やはり単錘駆動方式で異なる種類の糸の同時紡績が可能だ。パッケージも様々な形状に対応する汎用性を打ち出している。