ITMAアジア+CITME会場から/省力化ニーズに対応/設備投資環境悪化の声も

2012年06月14日 (木曜日)

 2日目を迎えた「ITMAアジア+CITME2012」。糸関連機器メーカーの間からは、「繊維機械への投資に対する中国の銀行の融資が厳しくなっている」「工場増築の認可が下りにくい」など、中国の繊維工場を取り巻く環境の変化を指摘する声も上がる。しかし、日系出展各社は同国の省力化ニーズなどに対応するための提案を活発に行っていた。 (上海支局)

村田機械/半自動タイプ初披露

 村田機械は、自動ワインダー「プロセスコーナーⅡQPRO」で、半自動でボビンを供給することが可能なVCF(バーティカル・コンベヤー・フィッティング)タイプを世界初公開した。中国では手作業で供給するタイプが一般的。人件費上昇に伴う省人化ニーズに、VCFタイプで対応する。

 ブースには、手作業で供給するマガジンタイプと、VCFタイプの両方を展示した。VCFタイプは、箱に入れてボビンを運び、ワインダーに投入すれば自動的に供給されるというもの。マガジンタイプに比べると作業員を7割減らすことができるという。「省人化を図りたいが、精紡機と直結したリンクコーナータイプまでは必要ない」というニーズに対応する。

 また、中国の先進的なユーザーに向けて、渦流紡績機「ボルテックスⅢ870」も披露した。同機を用いれば綿100%糸やポリエステル100%糸を、ドラフト部の調整などをせずに安定した品質で生産することが可能だ。

TMTマシナリー/ナイロンの生産性倍増

 TMTマシナリーは、中国のナイロン・エンジニアリング・ハウス最大手の北京三聯と共同で、ナイロン長繊維の生産性を従来の倍以上に高めた20、24エンドの多エンド紡糸機を開発した。

 24エンドの紡糸機は、ポリエステル用では商品化されているが、ナイロン用では初めて。これまでは12エンドが最大だった。紡糸時に発生する有毒ガスの除去が難しかったためだと言う。

 TMTは、中国でカプロラクタムの生産が始まったことを受けて、今後同国でのナイロン繊維生産が増えると予想。ナイロン用の紡糸機から巻き取り機、仮撚機の提案を強化する。13日には会場内の会議室で、中国の大手ナイロンメーカーを招き技術セミナーを開催した。

 また、TMTマシナリーグループに入った神津製作所は、アラミド繊維用のワインダーで、世界初の自動変換装置付き2コップ方式を披露した。

AIKIリオテック/空気による糸加工機

 AIKIリオテックは、「錘数ベースで世界シェア70%」を誇る空気による糸加工機を、映像や写真でアピールしている。

 同社は、1台40錘の単錘駆動式と、1台最大240錘のラインシャフト式の空気糸加工機を生産している。両方を扱っているメーカーは珍しいという。人気が高いのはラインシャフト方式で、スラブ糸など様々な糸の生産を可能にするアタッチメントを随時発表することなどが評価されている。

 2010年から11年にかけて中国向けは好調に推移したが、繊維機械への投資に対する同国銀行の融資が昨年末から厳しくなっているため、今年は減速すると予想している。

阿波スピンドル/WJ用省エネノズルを提案

 阿波スピンドルは今回展で、ウオータージェット(WJ)織機用の新しいノズルを披露している。このノズルは糸の種類にもよるが、水使用量を従来品に比べ20%削減することが可能。また、高効率な生産にも対応する。

 エアジェット用ではすでに前回のITMAで省エネ対応の商品を発表しており、そのほか、紡糸プロセス用のインタレスノズルなどでも省エネ対応商品をそろえた。木村雅彦社長は「すべての商品で省エネ、高効率生産に対応できた。現在のユーザーにさらに良い商品を提案していきたい」と話す。

日本ノズル/技術提供の中国製紹介

 日本ノズルは世界に向けたアピールのため、出展している。

 日本製の各種ノズルに加え、同社が技術提供し、中国の協力工場で生産した溶融紡糸用ノズルも紹介している。価格面からも来場者に好評で、北村大樹営業課長は「問い合わせも多い」と手応えを感じている。

 そのほか、日本生産の炭素繊維やアラミド繊維、アセテート用のノズルなどもそろえている。炭素繊維用などでは中国製よりも日本ノズル製を求める声が多いという。

 「お客さんがひっきりなしに訪れている」(北村課長)と客足も良いようだ。

金井重要工業/耐久性高いトラベラを

 金井重要工業は新しいトラベラ「ESR/hfRシリーズ」を紹介している。

 綿の30~100番手、コンパクト精紡、高速分野に対応した商品。新しい形状と新しい熱処理により、トラベラ交換後のなじみがよく、高速でもトラベラの飛散が少ない。寿命も長く、従来品の2倍以上になっているという。トラベラ以外にも様々な部品を取りそろえ提案している。

 同社は前回より、少し狭いブースを構えたが、営業部繊維機器営業グループの藤宮秀明氏は「初日朝は来場が少なかったものの、昼前から対応しきれないほど入ってきている」と話す。

化繊ノズル製作所/特殊繊維用ノズル開発

 化繊ノズル製作所は双日とともにブースを構え、特殊繊維や高付加価値糸の生産に対応したノズルを提案している。

 一般的なノズルでは中国現地メーカーとの価格差が問題となるが、化繊ノズル製作所の藤井利治上海代表処主席代表は「コンジュゲートなど特殊な繊維の生産用途ではまだまだ技術的にリードしている」と自信を示す。

 今回展には新しい商品として、3成分のコンジュゲート用ノズルを提案している。まだ開発したばかりだが、藤井首席代表は「実際売っていくために今後、用途展開まで提案する必要がある」とみる。