中国繊維企業/省力化へ関心高まる/設備投資意欲減退も

2012年06月20日 (水曜日)

 【上海支局】欧州向け輸出の苦戦などにより、中国繊維企業の設備投資意欲が減退している。それでも、年々上昇する人件費などのコストに対し、省力化、省エネルギーなどへの関心は高まってきた。

 津田駒工業の銭谷信一繊維機械事業部繊維機械販売部上級参事は「輸出が落ちていることの影響が大きい」と話す。ここ2年ほど好調だった合繊長繊維使いの高密度織物も在庫が増え、厳しくなっている。2008年のリーマン・ショックよりも悪いと見る人もいるという。

 豊田自動織機の岩田賢明中国地区販売総監も「とくに欧州輸出中心にオーダーが少なく、設備を増やす状況にはない」と指摘する。

 織布だけでなく紡績段階でも状況は良くない。村田機械の現地法人、村田機械〈上海〉の野野口学繊維機械販売部経理は「中国の紡績業は使用する国内綿花がインドやパキスタンなどの海外綿花に比べ高いこともあり、苦しんでいる」と指摘する。

 島精機製作所では先週上海で開かれていた繊維機械の見本市「ITMAアジア+CITME2012」での引き合いを見ると、2年前の前回展でほとんどが香港を含めた中国からだったのに対し、今回展は中国以外が伸びてきているという。人件費の上昇によりリンキングのコストが増え、中国で採算の合わない商品がカンボジアなどの国に移っているようだ。

 「全体の投資意欲は鈍ったが、付加価値ある商品は安定している」と話すのはドルニエの多尼尓機械〈上海〉、卓木適総経理行政及販売。バン・デ・ヴィーレグループの無錫艾諾科技、范志龍中国区販売経理も「一般的な機器への人気が下がっても、差別化できる商品へのニーズは依然として高い」とし、産業資材用途の生産ができる機械や省エネ機器への関心が高いという。

 日本企業でも「以前は関心が低かった省力化・省人化装置への興味が増している」(津田駒工業)。「円高で値段の要求が厳しいものの、省人化や省エネへの要望が高まってきている」(豊田自動織機)、「ホールガーメント横編み機への関心が高い」(島精機製作所)との声が上がる。

 全体としては、設備投資意欲に乏しいが、差別化機器などへのニーズは高い。とくに、年々上昇する人件費などに対し、省力化、省人化機器への関心が高まる。中国繊維企業も生き残りを賭け、設備投資を厳選しているようだ。