特集「ITMAアジア+CITME2012」レビュー/高機能機器に関心高まる/設備投資意欲減退も

2012年07月19日 (木曜日)

 国際繊維機械見本市「ITMAアジア+CITME2012」が6月12~16日、上海市浦東新区の上海新国際博覧センターで開かれた。

 今回展は展示面積13万2250平方メートルに、28カ国・地域から1283社が出展。来場者数は前回の2010年に比べ12%増の9万2000人強となった。そのうち25%が海外からの来場者で93カ国・地域から訪れた。国別ではインドからの来場者が最も多く、次いで日本、インドネシア、イラン、パキスタンの順。次回は14年6月16~20日開催。

 欧州向け輸出の苦戦などにより、中国繊維企業の設備投資意欲が減退するなかでの開催となった。しかし一方で、中国繊維企業も生き残りをかけ、設備投資を厳選し、差別化機器への関心はますます高まっている。高付加価値な商品を作ることができる機器や年々上昇する一方の人件費などのコストに対応した省力化や省人化、省エネなどの機器はとくに注目を集めたようだ。

津田駒工業/省エネ、省人化に対応

 津田駒工業は“スマート・エコロジー”をコンセプトに省エネ、省人化に対応した織機を紹介した。ウオータージェット織機「ZW8100」、エアジェット織機「ZAX9100」をそろえた。

 ZW8100はフレーム構造の最適化などにより、従来に比べ高速性を10%上昇させながら、消費電力を5%削減している。

 ZAX9100はバランスのとれた筬打機構や高いレベルの緯入れシステム、新設計の強靭なフレームなどにより、高速性能と低振動、省エネを実現した。電子ドビー搭載機やタオル専用機などもそろえた。

 全出展機種にヨコ糸を自動で補修し、織機を再起動するAPR自動ヨコ糸補修装置を搭載。省力化、省人化のへの高い関心から、注目を集めたという。

日阪製作所/中国生産機を初披露

 日阪製作所は2機種の液流染色機をそろえ、過去最大の規模で出展した。「CUT―CF」は今回の展示会で初披露した江蘇省常熟市の自社工場で生産する汎用性の高い機種だ。

 天然繊維から合成繊維、薄地から中肉厚地までの幅広い素材に対応できる。日本製と変わらない性能を持ち、同社の品質が守られた中国製機で、来場者の注目を集めた。アフターサービスまで含め、現地化を進めていく。

 もう一つのCUT―SPは合繊高密度織物などに対応した機種。安定した生産が難しかった細い繊維を使った織・編み物でも安定した品質で染色することができる。生地のサンプルも多数展示した。

島精機製作所/注目高まるWG横編み機

 島精機製作所はホールガーメント(WG)横編み機など最新の機器中心に11台を出展し、2~3年後の将来を見据えたモノ作りを提案した。

 中でも、リンキングの要らないWG横編み機は中国での人件費の上昇を受け、注目を集めたという。また、バングラデシュ、トルコなど中国以外の地域からの引き合いも増えてきた。

 さらに、三次元デザインシステムの「SDS―ONE APEX3」も紹介。そのほか、インクジェットプリンターや生産管理システムなど一貫で展示した。

 機械やシステムだけでなく、作ることのできるアパレル製品なども紹介。ブティックコーナーを設け、製品サンプル約500点をそろえた。ユーザーに加え、その先のアパレルや商社などもターゲットに製品で提案した。

豊田自動織機/JAT810を発表

 豊田自動織機は今回、織機と紡機を分け別ブースで展示した。それぞれの分野に特化することで、より訴求力を強めた格好だ。

 織機ではエアジェットの新機種「JAT810」を発表した。同機は新型サブノズルや省エネ制御ソフトなどで省エネ化を実現したほか、新しいモニタリングシステムにより操作性を向上。また、電子開口装置を高速化し、各開口枠を独立したサーボモーターで駆動させることで、より複雑な織物にも対応可能だ。

 これら高度な機能を付加した同機の登場に、来場者の反応はすこぶる良く、同社は2013年の発売に向け準備を進めている。

 一方、紡機ではドイツのツルツラーと共同開発したコーマ機「TCO12」を披露した。同社が培ってきた織機の技術を反映し、サーボモーターをコーミング部分に活用。さらにツルツラーの練条機技術を生かしている。これにより、ねじれや機械の振動を最小限に抑えることができ、8個のコーマヘッド間の品質のバラつきが大幅に減少。スライバーの品質が改善される。

 「久しぶりに紡績機械でイノベーティブな機械が出た」「すぐにでも入れたい」など、評価は高く、工場への評価機の持ち込みオファーや、価格、発売時期を気にする声も多かったという。

 今展示会での新機種のPRについて同社は「例えば中国では賃金の上昇や、熟練工をはじめとする人手不足、環境問題など、多くの問題に直面しつつあり、従来の抵コスト生産拠点としての役割だけでは工場経営が成り立ちにくくなっている。こうした状況に対する当社からの提案という形で紡機、織機のアピールができた」と評価している。

TMTマシナリーグループ/高生産性ナイロン紡糸機

 TMTマシナリーは、ナイロン長繊維の生産性が従来の倍以上に高まる20と24エンドの多エンド紡糸機を、ナイロン・エンジニアリング・ハウス最大手の北京三聯と共同で開発した。会場内の会議室で同機に関する技術セミナーを、中国の主だったナイロンメーカー約20社を招き開催した。

 20と24エンド の多エンド紡糸機は、世界初だという。ポリエステル用では24エンドの紡糸機がすでに商品化されている。しかしナイロン用では、12エンドが最大だった。紡糸時に発生する有毒ガスの除去が難しかったためだ。これを可能にすることで、今回の機種を開発した。

 同社のポリエステル繊維用テークアップワインダーの生産スペースは、中国を中心とする旺盛な需要によって2015年まで満杯になっている。今後は、ナイロン用の紡糸機から巻き取り機、仮撚機の提案を強化する。

 今回展では、TMTマシナリーと資本業務提携した神津製作所も共同出展し、神津製作所がTMTマシナリーグループに入ったことをアピールした。神津製作所は今回、アラミド繊維用のワインダーで、世界初の自動変換装置付き2コップ方式を披露した。両社は「5年、10年先」をめどに、炭素繊維の混繊機、開繊機など「炭素繊維用の中間機材」分野への展開も視野に入れている。

福原産業貿易グループ/何が作れるかをアピール

 福原産業貿易グループは実機に加え、同社丸編み機で作れる縫製品も展示。どういうモノ作りをすべきかを顧客に考えてもらうことを狙って、今回の展示会に臨んだ。展示テーマはずばり、「機械メーカーのブースの中にブティックを作る」。

 ブース内には、通常は別々に編んで縫製する身ごろと裾を、一体編み立てすることが可能なダブルニットの電子柄編み機「V―LEC3DGTY6」や、多給糸化と回転速度向上によって生産性を約1・5倍に高めたシングルニット・ストライプ丸編み機「MXC―3・2FY3RE」などの実機を展示。加えて、同社グループ製の編み機で作った生地を使い、同社グループや欧州のパートナーが試作した縫製品を展示するコーナーを設けた。ユーザーがイメージしやすいように、編み地を張った機械カタログも用意した。

 同社グループの編み機売上高に占める中国のウエートはピーク時の60%から20%へ下がっている。中国のユーザーが低価格志向を強めた結果だが、ここにきてユーザーも、その戦略に限界を感じ始めている。このため、差別化を狙うユーザーの間で同社への期待が高まってきたという。この流れを受けて今回展では、同社の丸編み機を導入すればできることをより分かりやすくユーザーにアピールした。

ピカノール/新型AJを高速運転

 ピカノールは、新型エアジェット(AJ)織機「OMNIプラス・サマム」をアジア地域で初披露し、毎分1800~2000回転で実演した。この高速性に加え、従来機比で電力使用量を10%削減できる省エネ性などをアピールした。

 OMNIプラス・サマムでは、メーンエアタンクを各色に付け、それぞれのエアをマイクロプロセッサーで制御することなどで、電力使用量を従来機比10%削減した。新型の電装プラットホーム「ブルーボックス」を搭載し、冷却効果も高めた。

 ただ、ピカノールの日本代理店である滝沢トレーディング(神奈川県座間市)の瀧澤巌社長は日本向けについて、今回展には出品していない積極レピア搭載の「オプティマックス」を主力として提案する方針を示す。AJ織機の汎用性が高まり、レピア織機で織っていた織物も作れるようになってきたが、「レピアでしか織れない部分がまだある」として、産業資材用途などへの拡販に意欲を示していた。

イテマウィービング/中国組み立て機も提案

 イテマウィービングは、昨年デビューした同社レピア織機の旗艦機種「シルバー501」や、中国組み立てでコストダウンを図ったレピア織機「R880HD」などを前面に出した。

 シルバー501は、今年2月から日本で販売されており、5月末時点で30台の受注を得るヒットを見せている。ガイドの着脱を従来よりも簡単にし、衣料用から産業資材用までフレキシブルに対応できることが評価されている。現時点では、ユーロ安も追い風だ。受注済みの30台の80%ほどは、産業資材用生地を織るために使用されるという。

 R880HDは、電気パーツの全て、機械部分の80%をイタリア本国から持ち込み、中国で組み立てた機種。ドビーなどのアクセサリー類は中国製。品質的には「1年から2年半ほど前まで販売していたイタリア製と同等レベル」だとして、「積極的にではないが、選択肢の一つとして日本の顧客にも提案する」という。

村田機械/省人化ニーズに対応

 村田機械は、自動ワインダー「プロセスコーナーⅡQPRO」で、半自動ボビン供給が可能なVCF(バーティカル・コンベヤー・フィッティング)タイプを披露した。また、渦流紡績機「ボルテックスⅢ870」をアピールした。

 VCFタイプは、箱に入れてボビンを運び、ワインダーに投入すれば自動的に供給するというもの。マガジンタイプに比べると作業員を7割減らすことができるという。中国では手作業で供給するタイプが一般的だが、人件費上昇に伴う省人化ニーズが高まっている。「省人化を図りたいが、精紡機と直結したリンクコーナータイプまでは必要ない」というユーザーへVCFタイプを提案する。

 渦流紡績機「ボルテックスⅢ870」も披露した。同機を使えば、綿100%糸やポリエステル100%糸をドラフト部の調整なしに安定した品質で生産できる。

ストーブリ/ドローイングで普及機

 ストーブリは、長繊維用自動ドローイング機「デルタ100」の普及版として「サファイアS30」をアピールした。同機を日本市場へも提案する。

 サファイアS30は、搭載する機能を制限し、手ごろな価格を実現した機種。中国市場対策機として2010年の「ITMAアジア」展で披露。中国市場ですでに、順調な売れ行きを見せている。

 日本では、デルタ100を販売してきたが、今後はサファイアS30も提案する方針だ。「ドローイング能力が、常時ではないが時々不足する」「予備としてデルタ100の90~95%の機能の機械を持っておきたい」などとするニーズに対応する。日本市場の状況は厳しいが「織機の効率を高めるための機械への需要が出る」として提案を強化する。

 今回展では、日本法人のストーブリ(大阪市淀川区)が初のツアーを組み、機業関係者などが参加した。

T-Tech Japan/単独ブースで出展

 T―Tech Japanは今回初めて単独ブースを構え、スパンサイジング機「TTS20S」をアピールした。

 同機は、ストレッチ設定の細分化により、とくにデリケートな張力設定を必要とする細番手糸に対して適正な張力を付与する。最高糸速は毎分150メートル。最新のACベクトルモーターでの回生電力利用で電力消費量を削減。乾燥シリンダーの効率配置で、蒸気消費量も削減した。オプションのプリウエット装置を用いると、糊液消費量も削減できる。

北越電研/中国メーカーへ制御装置

 北越電研は、織機用の電子制御装置を、中国の繊維機械メーカーなどへ提案した。

 同社は20年以上前から、織機のコントローラーを中国メーカーに販売している。10年前に中国法人を設立し現地生産に着手するとともに、アフターサービスを強化した。現在では、中国で生産される織機の30~40%、ウオータージェット織機に限れば約60%に、同社装置が採用されているという。