村田機械/エクスポフィルで「ボルテックス」を世界に発信

2012年09月11日 (火曜日)

パートナー紡績と技術融合

 紡績機械メーカーの村田機械は、9月19日から21日までフランス・パリで開催される国際ヤーン見本市「エクスポフィル」に出展する。村田機械のエクスポフィル出展は今回で5回目。紡績機械メーカーである村田機械がヤーン展示会に出展する狙いは、同社の特殊渦流精紡機「ボルテックス」の認知度を向上させることにある。リング精紡機による紡績糸とは異なる性質を持つボルテックス糸の特徴を世界のアパレルに発信し、ボルテックス精紡機を採用する各国の紡績企業の糸の販売を支援することが狙いだ。展示会では、世界各国のボルテックス精紡機導入紡績企業のサンプル糸・生地を多彩にそろえる。

 ボルテックス精紡は、無撚状態の繊維束を超高速空気渦流で結束することで糸に紡績する革新精紡法。一般的な紡績法であるリング精紡と比較すると、ボルテックス糸は繊維束が結束されていることで高い抗ピリング性を持つほか、糸の中心部分が無撚状態となることによって優れた吸水拡散性を持つ。独特のハリコシ感が出ることから、とくにビスコース100%の紡績では革新的な紡績手法として世界的に評価が高い。

 村田機械ではボルテックス精紡機の開発当初から、糸のブランド戦略を推進してきた。「ボルテックス」は精紡機だけでなく、ボルテックス精紡機で生産する糸の商標でもある。

 リング糸とは異なる性質を持つボルテックス糸をブランド化することで汎用的なリング紡績糸とはまったく異なる差別化糸として世界の繊維市場に普及させることを目指している。こうした取り組みによって、最近では欧米の有名ブランドや大手SPA、スポーツメガブランドなどがボルテックス糸を採用したガーメントを次々と商品化している。

注目のポリエステル100%糸

 今回出展するエクスポフィルでもボルテックス精紡機を導入した世界各国の紡績企業の糸・生地を紹介する。とくに見どころとなるのがポリエステル100%糸。従来、ボルテックス精紡機ではポリエステル100%糸の紡績は難しいとされていた。しかし、一部の紡績企業はボルテックス精紡機の性能をベースに、様々な紡績工程上の工夫をこらすことでボルテックス精紡機によるポリエステル100%糸の商品化に成功している。ポリエステル100%ボルテックス糸の登場で、抗ピリング性や吸水拡散性に優れ、さらに原綿に機能繊維を使用することで様々な機能性を付与した糸の生産が可能になる。

 こうしたボルテックス精紡機の性能と導入紡績企業の技術力が融合した糸・生地を紹介することでボルテックス精紡機とボルテックス糸の可能性を世界に発信する。また、ボルテックス精紡機による綿100%紡績糸も多彩にそろえる。こちらも毛羽の少なさから、ボルテックス糸を使った生地への捺染が鮮やかに表現できるなど、リング糸にはない様々な特徴がある。

 ビスコースの紡績では世界的に高い評価を得ているボルテックス精紡機だが、村田機械でビスコースに続く用途での普及を目指す。ポリエステル100%や綿100%など市場規模の大きい分野でもボルテックスのブランド力を高めていくことでボルテックス精紡機の普及を進めることを目指す。

進化する「ボルテックス」/新型機「ボルテックスⅢ870」がデビュー

 村田機械のボルテックス精紡機が進化した。2011年にスペイン・バルセロナで開催された国際繊維機械見本市「ITMA2011」で第3世代機となる「ボルテックスⅢ870」がデビュー。一段と高品質の糸の紡績が可能に。

 ボルテックスⅢ870は、第2世代機から紡績システムの設計を一新。精紡室から糸を引き出すデリバリーローラーをニップローラーからフリクションローラーに変更することで精紡段階の紡績テンション制御を格段に向上させ、高品質な糸を安定的に紡績できる。最新鋭のスピニングセンサーも搭載しており、クレームレスなパッケージ生産も注目だ。

 今年4月には1号機を出荷。7月には中国・上海で開催された国際繊維機械見本市「ITMAアジア+CITME2012」にも出展し、アジアデビューも果たした。その後も全世界から順調な受注を獲得しており、順次出荷している。ユーザー紡績企業からは、とくに紡績テンションのセンサーデバイスに対する評価が極めて高い。また、操作性の高さも人気だ。

 第3世代機であるボルテックスⅢ870が普及することで、一段と高品質なボルテックス糸が国際マーケットに供給されることになる。