繊維機械/道はミラノへと続く

2014年06月10日 (火曜日)

 16日から中国・上海で国際繊維機械見本市「ITMAアジア+CITME2014」が開幕する。世界最大の繊維機械市場である中国での開催ということで、今回も活発な商談が期待される。だが、繊維機械関係者の目は、すでに来年11月にイタリア・ミラノで開催される4年に1度の国際繊維機械見本市「ITMA2015」へと注がれている。上海から始まる道は、ミラノへと続く。その道筋に見える風景を特徴づけるものは何かを考えたい。

<「機械」「電子」「情報」の最適解は?>

 最近の繊維機械に関して、日本繊維機械学会会長を務める金沢大学の喜成年泰教授は「『機械工学』『電子工学』、そして『情報工学』が三位一体になって開発される時代になった」と指摘する。メカニカルな技術発展に加え、ここ30年で急速に発達したのが電装機構とその内容や制御を可能にする情報処理技術だった。

 こうした動きの背景には、2つの要因がある。一つは、繊維機械開発の永遠のテーマである「高生産性」「省人・省エネ」の追求というニーズ。もう一つが、繊維機械によって生産される繊維製品の内容が高度化することで、機械に求められる汎用性が急速に高まっていることが挙げられる。このためエネルギーロスを抑えながら、機構のメカニカルな限界を超えた挙動を実現するためには、電装の革新や情報処理技術の積極的な導入は必然だった。

 喜成教授は「こうした動きの先鞭をつけたのは、1970年代に村田機械が実現した自動ワインダーの単錘駆動化」と指摘する。79年にドイツ・ハノーバーで開催された「ITMA79」に村田機械は単錘駆動の自動ワインダー「No.7」を出展する。搭載された自動糸繋ぎ機構「マッハスプライサー」が世界に衝撃を与えたが、今から振り返れば単錘駆動化の可能性を見せたという意味でもエポックメーキングだった。

 その後、単錘駆動化の流れが一気に顕在化したのは2007年にドイツ・ミュンヘンで開かれた「ITMA2007」だった。紡績機械ではスピンドルやローターのダイレクトドライブ方式がすでに普及していた、ドビーなど開口装置のダイレクトドライブ化が新たに進む。

 11年にスペイン・バルセロナで開催された「ITMA2011」では、ドルニエやイテマウィービング、ボーナス、ストーブリといった欧州メーカーを中心に電子ジャカードと織機を個別モーターで駆動する方式が登場した。豊田自動織機のリング精紡機「RX300」のようにドラフトローラーを個別に駆動させるインジェクションスラブ機構も実用化される。こうした新技術実用化の背景には、情報処理技術の発展に加え、高耐久の小型モーターが普及したことがある。

 一方、新たな課題も浮上する。機械の高価格化だ。独立駆動方式は個別駆動部を増やせば増やすほど、コストが上昇する傾向がある。果たしてどこまで個別駆動を採用することが望ましいのか試行錯誤が続く。最適解を求めるために繊維機械メーカーの開発部門では電子工学や情報工学のウエートが大きくなっている。恐らくミラノへの道は、三位一体の最適解を求める旅となるのだろう。