特集・ユニフォーム総合/新たな風、吹き始める

2015年11月30日 (月曜日)

特集 ユニフォーム総合/ビジネスユニフォーム業績ランキング 2015

業績を見ると増収を確保している企業が多く、業界自体の景況は悪くない。

 ビジネスユニフォームを中心とした企業の売上高、営業利益、今期の計画、別注比率、分野別構成比率をまとめたものを表にした(一部の企業は決算報告書を基に作成)。8割の企業が増収を確保し、景況は悪くない。

 「生産の割合が一番高い国」では、依然として中国が4割以上を占めるが、昨年30%台半ばだったベトナムがほぼ中国と並び、来年あたり逆転してくる可能性がある。「今後の期待および強化分野」については毎年ほぼ同じ割合となっているものの、参入が多く価格競争が激しくなっているからか「介護ウエア」は、2年前には10%以上あったが年々減少する傾向にある。

ワーキングユニフォーム編/新しい価値の創造へ

 ワーキングユニフォームの2015年の商況は、全体的に売り上げを伸ばす企業が多かった。しかし、売り上げが伸びた要因としては春夏物、秋冬物を値上げしたことによる効果であり、販売数量ベースで見るとほとんどの企業が前年並みか、減少となっている。果たして市場に拡大の余地は残されていないのか。新しい切り口で縮小する市場に活路を開く動きが加速する。

〈16春夏物も値上げ基調/企画力の向上を重視〉 

 ワーキング業界では、来春夏物の値上げを検討するアパレル各社が大勢を占めている。一部の素材メーカーが3年連続で生地値を上げていることに加え、中国やアセアン地域など海外での生産コストの上昇に伴い、「値上げせざるを得ない」といった声が聞かれる。

 そのような状況のなか、これまで無かったようなユニフォームの開発が活発化する。値上げできない廃番商品が増えていることがあるが、価格競争から脱却し、企画力を高めながら、もっと独自性のある商品を打ち出そうとする機運が高まっていることがその背景にある。

 空調服の販売が好調なサンエス(広島県福山市)は、今年から企画の人員を刷新し、「3~5年の先を見据えた新しい商品開発にもチャレンジする」と、空調服だけでなくカジュアルワークの企画力も強化しつつある。

 ジーベック(同)は、7月に企画室を改装し、「新しい発想で良い商品を作る」ことで、競合が激しくなる市場でも存在感を発揮する商品開発を志向。人気の「現場服」シリーズでは、デザインだけでなく実用新案の機能性も追求する。

 実際に商品開発では他社との違いを鮮明にしていこうとする動きが明確だ。ワークウエアで圧倒的なブランド力を持つ寅壱(岡山県倉敷市)は、作業服とトビ服のリンク品番を増やし、「寅壱らしさ」のある独創的な商品をそろえる。

 15秋冬物の新商品を例年の2倍以上投入したコーコス信岡(福山市)は、感度の高い新世代向けを意識したスタイリッシュなデザインのウエアが豊富、納入ルートへの販売が堅調に推移する。

クロダルマ(広島県府中市)は、好評の欧州テーストのワークウエアをより現場向けに仕上げた、新たなテーストのウエアを投入するなど、これまでの定番商品にはなかったデザインやシルエットのウエアが充実する。

 素材メーカーとコラボ/顧客の声に応える開発

 “スマート”というキーワードは、ワーキング業界で新たな旋風を巻き起こす可能性がある。ビッグボーン商事(福山市)は東レグループの協力で、新ブランド「スマートワークウエア」打ち出した。女性デザイナーを起用し「これまでの発想にとらわれないワークウエア」として、デザインが同業他社でも話題となった。

 明石スクールユニフォームカンパニー(倉敷市)は、動きやすさとスタイリッシュさを追求した「スマートワン」を16春夏から本格販売。優れたストレッチ性で作業スタッフから営業スタッフまで着用できるデザインだ。

 素材メーカーとのコラボによる開発は、より差別化した商品を打ち出せるチャンスが高まる。バートル(府中市)は素材メーカーと共同開発したヘリンボーン生地を使ったシリーズが大ヒット。ベトナムに自社工場を開設し、万全な生産体制も敷く。

 顧客の声に応える商品開発力も求められる。桑和(倉敷市)が顧客の声をもとに開発したワッフル長袖Tシャツは、企画段階でサイズ調整を何度も繰り返し、苦労を重ねてできた商品。その甲斐あってヒット商品となり、受注の拡大を見込む。

 「世代交代による新しい価値の創造ができるチャンス」と見る藤和(福山市)は、自社ブランド「TSデザイン」で“深化”した商品群を追求。例えばウエアで導電繊維そのものをデザインのアクセントにするなど、単に機能性を向上させるだけでなく、機能美としてデザインに落とし込む新たな手法は、これからのワークウエアの開発で定着していきそうだ。

高視認性安全服JIS化/欧米並みの普及はまだ先

 高視認性安全服の日本工業規格「JIS T8127」が10月26日に制定された。これまでは国際規格「ISO20471」に準拠した服が一部で採用されるにとどまっていたが、JIS化で普及に期待がかかる。

 すでに大手アパレルを中心に、高視認性安全服の商品充実が図られてきた。ただ、今後どれだけ需要が見込まれるか分からないことに加え、中堅アパレルではデザインで差別化しにくく、価格競争になりやすいとの判断から、高視認性安全服の開発を控える動きもある。

 また、高視認性ウエアの着用は義務ではないため、欧米並みの普及にはまだ時間がかかると見られる。このため、ワーキングだけに限らず、学生服も含め、業界が一体となって社会での認知度の向上につなげていくような取り組みを進める必要がある。

オフィス・サービスウエア編/進む異分野の融合、強化

 オフィスウエア、サービスウエアの15秋冬商戦は、今回の調査では「前年並み」という回答が大半。前年の14秋冬は各社が増収となっており、需要は堅調に推移していると言える。オフィスではカタログの定番品は横ばいだが銀行などで別注案件が続き、16年に向けた引き合いも。サービスは国内消費が振るわないなか、物販、飲食業では伸長が期待できない。一方でオフィスウエアや介護、さらにソフトワーキングにサービスウエアの要素が広がる動きがある。

〈オフィスウエア/保守的イメージから脱却〉

 15年秋冬商戦は、目標売上高100億円を射程内に収めたボンマックス、充実のニット企画で好調を維持するセロリーを筆頭に、レディースユニフォームメーカーが健闘している。接客業向けのユニフォームのようなデザインや、ビジネスカジュアルの導入など、保守的なイメージのあるオフィスウエアもシーズンごとに変化が顕在化してきた。

 機能面での提案も進化する。アイトスハイナック事業部はカタログ「ピエ」で着用実感を追求した実用新案を取ったジャケットとボトムで「通勤時から着られる」ウエアを押した。サンペックスイストは「高付加価値品に手応えがある」と信州大学繊維学部と共同開発したストレスフリーベスト、プリント素材の採用で新規性を打ち出した。チクマアルファピア事業部は「価格訴求品も売れており、二極化が進む」と予測、ベーシックで汎用性の高いアイテムで手堅く需要をつかむ。

 価格や機能性だけでなく“女性らしさ”も健在だ。神馬本店の着心地とシルエットを追求した「美形(ミカタ)」ブランド、華やかさと大人の女性が着こなせるかわいらしさを加味したジョアの「アンジョアソレイユ」などのフェミニンな提案は女性用ユニフォームに不可欠な要素である。

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、流行語の「おもてなし」提案はオフィスウエアにも浸透した。オフィス、サービスを融合させたウエアの先駆けであるハネクトーン早川の「カウンタービズ」はマゼンタ、ロイヤルブルーでなでしこ、すみれの「和」のイメージを取り入れ、表現と着心地を進化させている。

 懸念材料はある。生産コストの高騰に景況の停滞感、2017年に控える10%の消費増税も、来年の製造・販売に影響が出てくる可能性も無視できない。フォークのようにメディカルウエアとのセットで医療事務に提案を広げるメーカーもあるが、「オフィスウエア市場にこれ以上の成長は見込めない」と、接客・サービスへの力点を移すメーカーもある。

〈ユーザーに接近を〉

 カーシーカシマは6月、社内に女性社員による販促チーム「セールスプロモーション課」を発足。女性の感覚を生かして情報収集や販促活動を行っていく。

 メーカーで作る「レディースユニフォーム協議会」は2月4日を「レディース・ユニフォームの日」に制定、今年はユーザー企業を表彰する「ベストドレッサーカンパニー賞」を開催し、好評を博した。「メーカーと販売代理店が協力してユーザーとユニフォームの価値を共有できるイベント。定着させたい」と第2回目を検討する。

 サプライヤーはこれまでも独自の意識調査や「ピンクリボン」キャンペーンの参画などでユーザーとの接点を増やしてきた。女性の就業事情や個人の意識が多様化していくなか、需要をとらえるマーケティングがカギとなる。

〈サービスウエア/ソフトワーキングにも波及〉

 サービスウエアの主力業種は物販、接客。ユニフォームの需要は銀行、百貨店、不動産などの別注案件に偏重し、飲食店向けのカタログ商品はやや鈍い。「爆買い」やインバウンドの恩恵は都市部に集中し、個人消費は停滞。定番品のボリュームの底上げには至っていないようだ。統計局の調査(9月)では「医療、福祉」「学術研究、専門・技術サービス業」「情報通信業」などが増加。サービスウエアの需要とは直接結び付いていない。

 近年目立つのが、商業施設の清掃やメンテナンスなどソフトワーキングと呼ばれる業種のユニフォームのイメージアップだ。かつてはワーキングと同様に価格重視だったが、デザイン性や機能性を向上させたウエアが登場している。

 三井不動産とグループ会社の三井不動産ビルマネジメント、三井不動産ファシリティーズが今年7月、オフィスビルの運営管理スタッフのユニフォームを更新。約5000人のウエアを統一する大型案件だ。来館者と接する機会が多いことから「第一印象を積極的に向上させていこう」とイメージを重視。“清潔感、頼もしさ・誠実さ”をコンセプトに、印象をガラリと変えた。スタッフと外部の双方に好評で秋冬服のシーズンを迎えた。

 商業施設や病院などでは外観、内装やレイアウト、電子看板などを駆使して情報やイメージを訴求する仕様が増えてきている。施設スタッフのウエアのリニューアルが広がっていく可能性もある。

〈フォーカス/復活・更新続く金融業〉

 女性用ユニフォームの需要のけん引役は金融業。今年は三菱東京UFJ銀行の5年ぶりの制服復活(2016年1月着用開始予定)が話題となった。今回の復活について、同行は「ひと目で当行従業員と分かるよう視認性を高めること、店頭に統一感を生み出すことでお客さまに安心してお取引いただける」とする。地方銀行や信用金庫では周年行事の一環などで更新需要が相次いでいたが、メガバンクは静観。しかし「今回の復活で、経費削減などで廃止した金融機関も追随する可能性が出てきた」と業界からは期待の声が上がる。

 中京銀行(名古屋市)も16年4月から制服を復活、こちらは13年ぶり。周年記念は一巡しつつあるが、有力銀行の再編計画も持ち上がってきた。合併の場合、既存の制服を着用するかデザインを一新するか、動向が注目される。

メディカル・介護ウエア編/16年へ新商品提案加熱 

 メディカルウエアと介護ウエアは、提案ベースではいずれも拡大基調にある。病院など医療機関は福利厚生やイメージアップの一環でウエアの意識が高く、「価値が認められれば値上げも比較的受け入れてもらえる」とされる。介護は就労人口の増加を見込み新規参入が続くが、ユーザーが予算を十分に割ける環境とは言えない。それぞれの商品傾向はどう変わっていくだろうか。

〈メディカルウエア/ナースの活躍がカギに〉

メディカルウエアの最新商品がそろう二大展示会は、日本看護協会の会場で行われる「看護フェア」と、医療機関向け総合展示会「国際モダンホスピタルショウ」だ。先に行われる看護フェアで現場の看護師にマーケティング、モダンホスピタルショウではこうした要望を踏まえてウエアの購入に裁量を持つ婦長クラスにプレゼンする手法が一般的。メディカルウエアの最大ユーザーはナースであり、リニューアルの際の発言力も増している。

 ナガイレーベンはナース、ドクター、手術衣のほか病院事務用のカタログで新商品を投入。業界最大手の専業メーカーとしてその業績と存在感は不動。アプロンワールドは新ブランド名「カゼン」のもと、「クラリタ」や「アディダス」など多彩なラインアップを紹介する。住商モンブランは新商品「ローラアシュレイ」のウエアを披露。女性層の知名度の高さも強みに、ナース、介護で提案していく。

 明石スクールユニフォームカンパニーは「ルコックスポルティフ」の新商品、トンボは薬剤師向けのコートを出展。「スクラブ」に注力するフォークは新作「ディッキーズ」のウエアをプロモートする。

 サンペックスイストは「トリンプ」のナースウエアに、15秋冬のオフィスウエアから「ストレスフリーベスト」を病院事務向けに提案する。チトセは「ユナイト」でミズノとの共同開発アイテムを前面に、デンタル向けの提案も広げる。

 外的な環境も変わりつつある。今年のモダンホスピタルショウは、「健康・医療・福祉の新時代へ~連携と地域包括ケアの充実を目指して~」がテーマとなっている。国は医療機関と介護施設の連携を推進しており、働く環境がより近づくことで、職制の識別やプロ意識の醸成に、ユニフォームの需要が高まることを期待したい。

 もう一点、ナースの働きやすさや生きがいに着目した動きも。ナガイレーベンは創業100周年を記念して本社内に「いとなギャラリー」を開設。現役のナースに談話室や展示会スペースとして提供している。

 7月には看護師の健康やキャリアアップをテーマにしたイベント「ナースハッピーコレクション2015」が都内の高級ホテルを会場に開かれた。

 現役のナースが中心となった実行委員会の手による催しで、昨年の好評を受けて2回目の開催となった。プログラムは食生活や心身のマネジメントなど実践的なセミナーと、看護師がモデルを務めるメディカルウエアのファッションショーがメーンイベントになっている。

アプロンワールド、フォーク、サンペックスイストが協力。ほか、前衛的なプリーツスカートをデザインしたヴィーネ(札幌市)、ドイツのブランド「CROIXTURE」がいずれも特徴的なデザインで注目された。キャットウオークのモデルに惜しみない拍手と歓声が送られ、ウエアへの関心を改めて感じさせた。

 ナースが活躍するためには、やりがいの創出やキャリアアップ、結婚と復職といった課題がある。ユニフォームにも機能性やデザインだけでなく、より有機的な提案が求められていくかもしれない。

〈介護ウエア/16年は競争激化へ〉 

 介護ウエア市場の参入が続く。超高齢化と就労人口減を控え、高齢者介護サービスに照準を当てるのは合理的ではある。しかし2015年は中小事業者の倒産件数が急増、10月に異業種から参入したワタミが介護事業の売却を決定。11月には業界最大手のニチイ学館が2016年3月期の通期予想を大幅に下方修正、大手でも安泰ではない。

 事業者の“苦境”は今春の介護保険改正に端を発する。介護報酬が2・27%のマイナス改定となり、事業者の倒産が一気に増加。介護保険法が施行された2000年以降で過去最多のペースで推移した。事業者が制度を利用して内部留保を増やすのを防ぐという名目だったが倒産の大半は中小規模の事業者だ。

 8月からは介護負担が2割に切り上げられ、要介護者がサービスの利用を敬遠する懸念もある。最大の要因は人員不足。景況の回復基調で製造、建設業からの転職は減った。人が足りずサービスの収益が減り、給与が上げられないという悪循環が生まれている。定着率の低さに加え、施設内の虐待が各地で発覚するなど市場環境は厳しい。

 東京ビッグサイトで10月に開催された「国際福祉機器展(HCR2015)」(保険福祉広報協会、全国社会福祉協議会主催)は介護ウエアを手掛けるほぼすべてのアパレルメーカーが出展、一画はユニフォームの見本市の様相を呈した。

 介護用品大手のフットマークは「ファイテン」とコラボした新作を披露。ナガイレーベンは「介護職の地位向上を制服を通じサポートする」というコンセプトを打ち出す。アプロンワールドはPBと「アディダス」の二本立てで豊富な商品数で圧倒。住商モンブランは新ブランド「ローラアシュレイ」を押す。

 「ルコックスポルティフ」を医療・介護向けに展開する明石スクールユニフォームカンパニーは「ウエアが同質化しがちななか、ブランド提案は差別化の一環」と意気込む。

 ユニフォームらしくないカジュアル化も進む。トンボは、私服調の新ブランド「栗原はるみ」について、「一般の認知度が高く反応は上々。新規掘り起こしを図りたい」という。カーシーカシマは施設のウエアと施設のイメージを調和させた提案で差別化を図る。フォークはカジュアル指向に対し、医療現場で増えているスクラブの提案を続ける。各社がマーケティングとプロモーションを強めるが、介護ウエアの売り上げは「前年並み」回答が大半。16年の市場はこれまで以上に競争が激化しそうだ。

ユニフォームへ素材・副資材発信/高付加価値に応える

 高付加価値のウエア開発を意識し始めたユニフォームアパレルにとって、デザインだけでなく、素材や副資材もウエアの価値向上に必要な要素となってくる。そういったニーズをくみ取り、素材、副資材メーカーもユニフォーム向けの素材開発や提案を強化しつつある。アパレルと素材・副資材メーカーの連携によって、新たなユニフォームの開発が進みそうだ。

東レ/紫外線対策などユニバーサル化 

東レは合成繊維の機能性と天然繊維の質感を兼備したユニフォーム用新素材「ペンタスUF」を発売した。建設現場の女性ワーカー用のウエアを振り出しに、今後はあらゆる世代のワーカーに向けた“ユニバーサルユニフォーム素材”としてサービス、オフィス、病院・介護向けに拡大する予定。

 同素材は、特殊な断面形状を持つ高機能ポリエステル短繊維「ペンタスα」をベースにしている。

 新素材の開発に当たり建設業に従事する男性に調査したところ、45%が紫外線対策への要望を持っていた。建設のほか運輸やサービス業などの分野で働く女性や高齢者の勤務が増えていることから、多様化するニーズに応えられる機能を備えた開発を指向した。

 ペンタスUFはこの特徴を踏まえた特殊紡績技術、布帛設計、染色技術を採用、天然繊維の快適な質感と合繊の機能性を高レベルで両立している。耐久性などユニフォームとしての基準もクリアしている。第1弾の春夏用はUVカット性・遮熱性・防透性に吸水速乾性を加えた3マークを開発。

10月に東京・大阪で行われた「2015年東レユニフォーム総合展」でサンプルが披露された。

クラボウ/様々な素材に“新鮮”の声

 クラボウは8月末、27年ぶりに福山でユニフォーム素材の展示会を開いた。これまで東京で年1回展示会を開いてきたが、ユニフォームアパレルが集積する三備地区の顧客に対し、「新しい開発や話題の素材を見てもらうことで、様々な形のビジネスにつなげていきたい」との思いから、久しぶりの開催に至った。

 展示会では繊維事業部の重点戦略素材である難燃素材の「ブレバノ」、抗ウイルス機能繊維加工技術「クレンゼ」、バイオミメティックマテリアル素材「エアーフレイク」の3ブランドのほか、特殊紡績糸「ハイテックスパン」をはじめ高視認素材「フューチャー」、高通気性素材「風織」、織物と編み物融合の「オリアミクス」、デニム感覚素材「デニムニ」など、天然繊維をベースとした高機能・高感度の開発素材を打ち出し、来場したアパレル関係者から「様々な素材があり、新鮮に見えた」と、好評の声が多く聞かれた。

 なかでもクレンゼは、ユニフォームだけでなく一般のアパレル用途へも広がっていることをサンプル製品で紹介、高い関心を集めた。

 また、透明感があるプリント「アクアペイント」は、無地をヘリンボーン柄に見せるなど、ウエア開発の幅を広げるという意味で注目度が高かった。

島田商事/新開発の副資材続々と投入 

縫製資材商社の島田商事(大阪市中央区)は、メーカーと連携しユニフォーム向けの新たな機能副資材を矢継ぎ早に投入している。

 ワークウエア向けの涼感転写シート「クーラスター」を10月の展示会で初披露した。これはキシリトールを配合し、汗などの水分を効果的に蒸発させることで体の熱を下げる効果がある。襟元やポケットの裏など肌に触れる部分での使用例を示した。

 高視認テープではISO20471に適合するだけでなく、キューブの柄付きなどデザイン性にもこだわった商品を加えた。難燃分野では合皮製副資材が充実する。

 保温機能ではアルミ転写の裏地を開発した。帝人の中わた素材と組み合わせて非常に高い保温性を実現した。

 金型を使わずエンボス加工ができる「デリット加工」も今年の展示会で初披露した。金型制作にかかる時間とコスト、小ロットに対応できるメリットがある。高視認素材に同加工を施すと輝度が増す効果もあるという。

 消臭機能糸「クリーンメル」はアンモニア臭に対して、30分で99%を消臭するという。糸加工のため洗濯耐性にも優れる。生地で販売し靴下、まくらカバー、タオルなどの製品への利用を訴える。

一村産業/ベトナムでの生地調達強化 

 一村産業(金沢市)は、ワークウエアアパレルが集積する広島県福山市で2013年に約20年ぶりの展示会を開き、その後毎年開催するとともに、昨年は事務所を設け、三備地区で積極的な販路開拓を進めている。

 10月末に福山と東京で開いた展示会では、「ファン&ファンクショナル」をテーマに、高通気性素材「アミド」、涼感素材「クールエスパー」、特殊構造加工糸によるストレッチ素材「伸度マン」、高感度素材「ネオエスター」の4つを軸に幅広いユニフォームの用途へ訴求した。

 福山での展示会ではこれまで、ワークウエア用途への生地を中心に展示していたが、今年はサービスや学生服、食品、介護・メディカル、オフィスウエアなど、それぞれの用途で製品を展示し、幅広いニーズに対応できる強みを紹介。製品サンプルも洗練されたデザインのものをそろえた。

 日本、中国、インドネシアの3拠点を活用し、ベトナムでの生地の調達が可能になったこともアピール。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を見据え、東レグループとしてグループ間の情報交換もこれまで以上に増やしながら、新たなニーズへの対応力も強化する。