ジーンズ別冊17SS(12)/TOYOSHIMA & CO.,LTD/変化察知できる距離感が重要/豊島 東京本社/常務執行役員 東京三部部長 松田 敏彦 氏

2017年03月27日 (月曜日)

 少子高齢化による人口縮小や先行き不透明による消費の伸び悩みなどを背景に、市場を取り巻く環境は相変わらず厳しい。好転材料を極めて見い出しにくい状態にあり、さらに成熟期でのモノ余り状態においては価格を上回る価値ある存在、もしくは極めてタイムリーなモノしか動きにくい。活性化のためには常に市場ウオッチが必要で、加えて顧客との更なる密接な関係構築が重要になってくる。ここでは豊島の松田敏彦常務執行役員に、現況や今後の見通しなどについて聞いた――。

●いかにリカバリーするか

 ――この秋冬の総括からお願いします。

 “総じて”などといった一くくりの表現では言い表しにくい状況です。店頭前売りの厳しい状態は相変わらずですが、ならば全てがそうであるかといえばそうとは言い切れない。売り場、ブランド、企業等によって凸凹があります。ただ前年と大きく異なった点がありました。

 前年の防寒アウター不振によって、この秋冬アウターの仕込みはかなり絞られていました。量的には半減状態で、そういった中での対応や仕掛けが十分にできていたかというと、そうではなかったということです。とりわけ布帛分野についてはそれが当てはまり、対応策が不十分でした。

 市場は年々競合激化の一方です。顧客のニーズも多様化しています。そういった顧客に対し、われわれの役割・機能がしっかり果たせたところが数字を残せたことになり、果たせなかったところが残せなかったということになります。その仕掛け具合によって、差が付いたということです。

 枚数ベース自体は前年とさほど差はありませんでした。中間アウターへのシフトによる単価ダウンはありますが、価格への要求はさらに厳しくなっており、引き続きその影響が少なくありません。

●オリジナル素材に手応え

 ――市場は新たな変化を加速させています。

 ええ、そのため前年ベースでの対応・仕掛けだけなら、当然のことながら数字は落ちます。そうならないためにも、我々が顧客の変化を感じ取ることができる位置にいなければならない。つまり変化を察知できる距離感を保っているかということ。変化が分からない距離にいたら何をしたらいいのか分からないし、やっても無駄が多くなります。何しろ分からなくて手を打っているのですから。今は激変の時。変化する顧客と距離を近くしていることが最も重要なことの一つとなります。

 顧客が前もってアウターに対し慎重になっていることが分かっているのであれば、それに代わるアイテムや仕掛けを考えておかなければならない。あるアイテムが減ったのであれば、異なるアイテムでカバーしていくように。それでもカバーできないのであれば、シーズンをまたいで取り返すような対応をとっていかねばなりません。これらは個々の対応だけでは解決しにくいこともあるため、組織力を含めて他の手法が必要となってきます。

 その意味もあって東京三部では初めて今回、アウター・ボトム展と布帛展といった具合に分けて展示会を行いました。総合展に加えて、アイテム別やカテゴリー別などの提案があってもいいかなと思っています。ただそれとは別に展示会という仕掛けそのものが有効な手段なのかどうかを、再考する時期にも来ているかもしれません。

 ――売れ筋が出にくい時代は、価値ある商品提案とともに差別化された仕掛けや発信が重要になります。

 その対応の一環としては、営業企画室の存在があります。付加価値向上としてのコト提案のバリエーション拡大はもちろんのこと、案件によっては部署の垣根を越えた社内連携などの調整を含めその存在はますます重要になっています。

 商品提案面では原料からの素材・取り組みの差別化として、オリジナル開発や協業をさらに深耕しています。ただ競合他社も同様なので、常に“サムシング・ニュー”対応が必要です。素材軸の価値提案としては今、独自開発素材「ワンダーシェイプ」に極めて強い手応えが出ています。360度に伸びるストレッチ素材で、カジュアル、スポーツ、ワーキングなどあらゆる分野に取り上げられ、また有力海外SPAにも採用されています。

 ワンダーシェイプは布帛調の丸編みで驚異的な伸張率と伸張回復率があります。さらに柔軟性や安定した着圧感、膝抜けのない優れた形態安定性などが特徴の差別化商材になっています。既存の定番素材にとって代わるだけのポテンシャルを持っており、今後も進化させながら新定番素材として戦略的に国内外で拡販していく考えです。