特集 2017夏季総合(14)/わが社の新領域

2017年07月26日 (水曜日)

〈豊島/「ワンダーシェイプ」で新領域〉

 豊島の製品OEM/ODM事業では、布帛調高伸縮丸編み素材「ワンダーシェイプ」がファッション以外の分野や海外販路といった新領域開拓の可能性を高めている。

 同素材はよく伸びて、よく戻る点が特徴。伸張率80%、回復率90%という機能は通常のストレッチ素材よりはるかに優れる。糸番手や高密度編み設計の工夫、染色加工技術との組み合わせで、布帛パンツと同様の風合いで、カットソー素材の欠点である「膝抜け」を克服するボトムス素材を開発した。素材そのもので勝負できる完成度から、グローバルSPAに採用されるなど同社の戦略素材となっている。

 カジュアル用途だけでなく、ユニフォームやスポーツウエア向けなどカジュアル化やタウンウエア化が進む商材への提案を進めている。海外での販促を視野に、主要な市場で商標登録を申請。海外現地法人が国内部署と情報共有しながら営業活動を行っているほか、米、仏の有力展示会にも出展。良好な反応を得る。

 同時にモノ作り基盤の確立も鍵とする。高い技術を要する素材、加工、縫製各段階で生産能力を強化する。用途拡大につながる素材バリエーション拡充にも取り組んでいるという。

〈モリリン/全社素材の開発へPT新設〉

 モリリンは3月1日付で素材開発プロジェクトチーム(PT)を新設した。同PTは全社プロジェクトであり、素材から製品まで一貫による提案をさらに強化することを狙う。

 これまでは個々の営業部で素材開発を行ってきた。これを継続する一方で、全社的な観点で開発に取り組み、横断的な独自素材を生み出すことを目指す。

 このため、同PTはリーダー以下、各Gなどから2人ずつ、計17~18人で構成。「需要家のニーズや各営業から上がってきたテーマを月1回の会議で議論し、全社共通の素材テーマに基づいた糸・生地の開発を行う。見本反まではPTがけん引する」と野田薫本店長兼名古屋支店長兼素材開発PT副リーダーは言う。

 既に16のテーマが挙げられ、ユニフォーム・カジュアルボトム向けの超軽量生地、コスト競争力があるポリエステル100%差別化糸使いなど、6テーマでの開発も始まった。

 「来秋冬向けには結果を出したい」考えだ。

 素材からの提案力強化に向けて、今年6月には東京支店8階に、糸・生地の常設展示場である「マテリアルホール」も新設した。同社の素材をカテゴリー別に分けて一堂に集めたマテリアルホールには生地スワッチと、その生地で製作した縫製品見本を置くが、今後は同PTで開発した新素材が順次、加わることになる。

 同ホール新設も発信力強化の一環になる。全素材を揃えていることから、来場者は取引のあるG以外の素材も見ることもできることから、素材の横展開も期待している。

 同社は素材開発PTと同じく3月1日付で、製品3Gを統括するファッションアパレル事業本部を新設するなど、今期から新体制で臨んでいる。

〈ササキセルム/尾州基盤に変わりなし〉

 尾州産地のテキスタイルコンバーター、ササキセルム(愛知県一宮市)は今年、創業80周年を迎えた。紡績、機業場、染色整理加工まで繊維製造業と連携した、テキスタイルの企画提案を行う同社は、特に婦人ボトム用ストレッチ素材や、カットソー素材などに強みがある。

 その企画提案力の強みをさらに訴求するため、今年5月に開催された「プレミアム・テキスタイル・ジャパン(PTJ)2018春夏」展にも初出展した。同展では化繊・合繊複合をメインに展示し、備蓄販売に加えて、別注対応をアピール。今後も外部展示会への出展は積極的に行う。

 こうした新たな動きも、佐々木久直社長は「地道に取り組むことが重要」と語る。

 同社は日本に加えて中国、韓国、台湾、さらに2016年からベトナムでの生産も行う。しかし、こうした海外生産も時間をかけて組み立ててきたもの。そして、海外生産もコンバーターとして糸から生地までの専門知識を持ち、企画・生産を手掛ける強さが生かされている。その基盤が拠点を置く、尾州産地を中心とする日本になる。「企画開発は全て国内。これは変わることはない」と佐々木社長は強調する。

〈マスダ/介護・資材・海外も強化〉

 生地商のマスダ(名古屋市中区)は合繊織・編み物を主力にした備蓄販売に特徴がある。約200品種を定番品として構え、その95%が国産生地という「北陸産地に立脚した生地商」(片岡大輔社長)でもある。しかも、定番品以外もさまざまな生地を調達し、需要家の多様なニーズに応えることもできる。

 この定番品の品揃えと別注品への対応力を武器に衣料だけでなく、産業資材など幅広い分野、顧客に生地を供給する。

 営業拠点は名古屋、東京、大阪、岐阜、福井、児島、福岡の計7カ所、70人の営業担当者を擁し、全員が仕入れ先情報も共有化し、臨機応変に動く。しかもそれぞれがモノ作りに精通し、オリジナルの提案もできる。

 さまざまなニーズに応える一環で、このほど定番品に不織布もラインアップした。

 その同社は新たな領域へも挑戦する。3年前からマスダ・イノベーション・プロジェクト(MIP)をスタートし、介護・資材・海外の3分野に対して全社横断的な取り組みを始めた。得意とする販路開拓をさらに広げるための、全社レベルでの試みだ。

 MIPを通じて営業担当者のさらなるレベルアップを図りながら、次世代に向けた新たなビジネスチャンスを模索している。

 取引拡大に向けてホームページ(http://masuda-tx-ap.co.jp)を昨年4月に刷新した。この効果も大きく「この1年で異業種も含めて問い合わせがある」と手応え。これを通じた新顧客開拓に期待する。

 同社の2017年3月期業績は前期比1・1%増の70億円。このうち、主力である生地販売は5・0%増。事業環境は追い風ではないが、アスレジャー向けなどが拡大した。今期も増収を目指し、収益性も高める。

〈帝人フロンティア/室内を守る「まるごと防災」〉

 帝人フロンティアは、地震や火災など災害時に室内空間での被害を低減する商品群を「まるごと防災」としてパッケージ提案する。

 日本では建物に関しては各種規制によってさまざまな防災対策が義務付けられているが、高層マンションなど一部を除けば室内の内装材やインテリアに規制がない。こうした問題に着目し、帝人フロンティアが有する防災・減災関連商品をパッケージとして提案し、室内被害軽減を目指すのが「まるごと防災」。

 軽量天井材「かるてん」、防煙たれ壁「かるかべ」、防炎カーテン「プルシェルター」、簡単に取り外しできるカーテンフック「プルック」、担架として使える毛布「もうたんか」、大型仮設テント「エアロシェルターⅡ」などをラインアップする。さらにグループ外からも不二ラテックスの家具転倒防止緩衝材「不動王」などもそろえた。

 防災事業経済協議会にも加入し、室内の防災商品の普及を目指す。とくに病院・介護施設や学校などへの提案に力を入れる。メーカーと商社両方の機能を併せ持つことを強みに、防災関連商品提案のプラットフォームを構築することを目指す。

〈レクトラ・ジャパン/生産工程の革新促す〉

 レクトラ・ジャパン(大阪市中央区)は、生産効率を飛躍的に高めるシステムの販売を強化する。

 衣料品の商品開発から製造までの生産工程を一元的に管理できる独自の生産システムを開発し、生産工程の革新を促す。

 9月から新たな生産管理システム「PLM4・0」の提供を始める。これまでの商品を改良し生産工程ごとで最適なシステムを供給できるようにした。システムの需要に合わせて生産工程を「デザインから調達」「商品開発から調達」「商品開発から製造」までの三つに分類、それぞれに合った生産管理システムを提供する。企業によって必要な機能だけを導入できるため、従来のシステムよりコストを抑え、運用までの時間を短縮できるメリットがある。

 これまでのPLMは商品開発から製造まで、全ての生産工程の管理機能をひとまととして販売していたため、生産工程の一部分にしか関わらない企業にとっては①導入コストが高額になる②不要な機能がある③導入までに時間がかかる――といった問題があった。

 PLMとはプロダクト・ライフサイクル・マネジメントの略。レクトラが供給する全自動裁断機とデザインソフトウエア、生産管理システムを連動させるプラットフォームを指す。

 より緻密な生産コストの計算や生産現場の合理化、効率化を可能にする。

〈ハクサン染工/消臭糸使いで製品事業〉

 カーシート地が主力の染色加工場、ハクサン染工(石川県金沢市)は昨年から全く新しい領域に踏み出した。販売子会社のディアーを通じてグラフト重合加工による消臭糸「レスメル」を使った2次製品のインターネット販売(現在はヤフーショッピング、楽天市場の2店舗)を始めたからだ。6月15日にはタイのバンコク伊勢丹にアンテナショップもオープンした。

 レスメルは①吸着速度が早い②吸着量が多い③アンモニアなど悪臭を選択して消臭する④優れた洗濯耐久性(100回でも機能維持)――などの特徴を持つ。ディアー社長を兼ねるハクサン染工の小西大社長は「将来的には1億円を目指す」との意欲を示し、現状のタオル、靴下、ベッドシーツ、枕カバー、タイルカーペットに加え、他機能と組み合わせたインナーウエアや失禁パンツなどの展開も検討する。

 既存の染色加工も一歩踏み込む。主力のカーシート地は経編み地に加え、織物でも織布からの一貫生産を計画。さらに加工数量の10%を占める衣料用も強化する。衣料用でも織布・編み立てからの一貫生産を視野に入れるほか、テキスタイルの販売に向け専任部署を既に設けて、アパレルへの直接提案を始めている。

〈電動ファン付きウエア/来年も増産続く見通し〉

 ワークウエア業界で、相次いで商品化され、市場拡大が加速する電動ファン付きウエア。これまで空調服(東京都板橋区)と、サンエス(広島県福山市)が展開してきた「空調服」が、市場で圧倒的なシェアを占めていた。しかし、両社が契約を解消し、独自路線を歩み始めたこともあって、今年は異業種を含めて新規参入が相次いだ。そのため、市場への供給量が拡大していることで、ワークショップやホームセンターなどでも目にする機会が増えつつある。

 実際、通常のワークウエアの販売は低調なものの、電動ファン付きウエアを販売する企業は、軒並み増収を確保。猛暑の影響で、9月まで出荷が続く可能性がある。スポーツなど他の分野へも広がりを見せる中、来年の生産量について、空調服は今年の30%増、サンエスは50%増と増産を計画する。

 ただ、さまざまな企業が商品化したことで、ウエアはA社製、バッテリーはB社製、ファンはC社製といった使い方をする消費者もいて、トラブルが聞かれ始めている。市場が広がる中で、認知度向上とともに、ブランド力の強化が課題となってくる。