機能の複合化進む/高付加価値化に応える/綿紡績の素材戦略

2018年04月27日 (金曜日)

 綿紡績が、素材に付加する機能の複合化を進めている。衣料品の高付加価値化とともに、一つの生地に複数の機能を持つ商材の売れ行きが堅調だ。ストレッチ機能に軽量・高通気といった性質を持つ素材や、吸汗速乾と抗菌防臭に加え消臭機能をも併せ持つ生地など、これまで以上に多くの機能を持つ素材を戦略的に強化する。

 (橋本 学)

 クラボウは、ワークウエア用素材で“ストレッチ機能+α”の機能素材開発に力を入れる。伸縮性を持たせつつ素材をさらに軽量化したり、通気性を高くすることで涼感性を持たせたり、さらには生地をデニム調にしてファッション感度を向上させたりするなど、複数の機能とファッション性をも兼ね備える素材開発を進める。

 近年、クラボウのストレッチ素材の販売が堅調な背景には、ワークウエアのトレンドの変化がある。ストレッチ機能は本来、体の動きに合わせて生地が伸縮することでより快適に作業ができるようにするのが狙い。ところが最近の需要増は、快適性に加えより細身でスタイリッシュなワークウエアが、個人向けを中心に好まれていることにもよる。

 東京五輪に向けた建設業や製造業でのワークウエアの需要増も見込んで、ストレッチのバリエーションを増やして攻勢をかける。

 富士紡ホールディングスは、綿本来の良さを生かしながらそこにさまざまな機能を付加する素材の開発に力点を置く。今期に投入する新素材としてアパレルの関心を引き付けそうなのが吸汗速乾・抗菌防臭さらに消臭機能をも併せ持つセルロース100%素材「デオスカイ」。

 19春夏の肌着やスポーツウエア用素材として今期、提案を始める。吸汗速乾、抗菌防臭、消臭という一つ一つの機能は消費者にも定着したものだが、綿素材で三つの機能を併せ持つ素材はデオスカイが初めてという。

 今回の素材開発の司令塔となるのがフジボウテキスタイル和歌山工場。将来を見据え、セルロースナノファイバーを使った新素材の開発にも着手した。生地の高強力化や寸法安定性などでプラスの効果が得られないか、研究開発を続ける。

 日清紡テキスタイルはシャツ地をメインとしたテキスタイル加工の高度化を進めている。従来の形態安定性加工に、防汚、抗菌防臭、消臭といった機能を併せ持つ素材の開発に取り組む。

 今年に入って摩耗への耐久性に優れたシャツ地を開発した。一般的なシャツは1年ほどで擦れなどによる繊維の摩耗により買い替えが必要となるが新たに開発した素材は一般的なシャツ地の3倍程度の耐久性持つ。ここに得意の形態安定性を組み合わせることで商品化を模索する。