ANEXへの道~不織布の時代へ~(18)/倉敷繊維加工/品質、機能、複合化で勝つ

2018年05月10日 (木曜日)

 クラボウグループの不織布メーカーである倉敷繊維加工は、衣料・生活資材からフィルター、自動車・産業資材まで幅広い用途の不織布製品を製造販売する。ケミカルボンド、サーマルボンド、ニードルパンチの各製法を駆使することに加え、機能加工や他素材との複合にも力を入れることで業容を拡大してきた。青山克己社長は「品質の安定性は当然として、複合加工などによる機能化で競争に対して絶対的に勝つことを目指す」と話す。

 2017年度も堅調な業績が続いた同社だが、特にフィルターの好調が続く。この5年間でフィルター関連の売上高は40%以上の伸びとなった。こうした成長を支えているのが不織布への機能加工。例えば自動車のキャビンフィルターは脱臭機能が定番化し、最近では抗菌や抗ウイルスといった機能加工へのニーズも高まる。

 フィルター用不織布に機能材を付与する場合、どうしても圧力損失が生じる。このため機能性とフィルター性能・耐久性がトレードオフの関係となるが、青山社長は「こうした課題をクリアし、圧力損失を抑えながら機能材を付与する技術力が当社の強み」と指摘する。

 技術力を背景に、フィルターを含む自動車関連用途の拡大が続く。インシュレーターや天井材に加えて、最近では吸音材など新しい用途へも同社の不織布が広がってきた。自動車以外でもネットやフィルム、長繊維不織布とのラミネートや貼り合わせなど複合加工によって新たな用途開拓を進めるのが同社の基本戦略であり、そのため静岡工場(静岡県掛川市)で加工設備も増強する。

 新規用途として期待が高まるのが金属イオン除去カートリッジフィルター「クラングラフト」。独自の放射線グラフト重合加工によって微量の金属イオンを高精度、高速で捕集・除去できる。半導体製造で使用する薬液などのろ過用途などで提案を進めており、採用に向けた動きも具体化し始めた。現在は静岡工場のパイロットプラントで生産しているが、量産に向けた検討も始まった。

 海外生産にも取り組む。17年に中国子会社の仏山倉敷繊維加工(広東省仏山市)を立ち上げ、空気清浄機用フィルターを中心に中国市場の開拓を進めている。さらに空気清浄機用フィルター以外の用途開拓にも取り組む。国内工場の生産スペースがタイト化していることから、仏山倉敷繊維加工の生産能力を活用することも視野に入る。

 「ANEX2018」では“高機能化への挑戦”をテーマに独自技術に基づく不織布製品を多数打ち出す。クラングラフトのほか、さまざまな機能加工を施したエアフィルター「クランセール」、自動車の吸音材やインシュレーター、土木・建材で用途が広がる「クランシールド」などを出展する。フェースマスク用不織布「シルキーベール」や衣料用機能芯地も紹介する。また、仏山倉敷繊維加工の加工品も国内外に紹介し、同社の強みを発信する。