特集 商社OEM2018(1)/関心高まる「ESG」/対応力磨き商機獲得へ

2018年06月27日 (水曜日)

 国内アパレル市場の低迷や少子高齢化による市場縮小によって、商社の製品OEM/ODM事業も岐路に立つ。将来を開くキーワードは「サステイナブル」や「ESG(環境・社会・ガバナンス)」になりそうだ。

 市況悪化を受けて各社が進めた「選択と集中」は、一定の成果を伴って落ち着きを見せつつある。不採算取引から撤退し、成長分野や元気印ブランドなどに傾注する策を各社が進め、その結果、収益力強化や増益といった“実”を得た。もちろんもろもろの構造改革は今後も進められるだろうが、各社が次の一手として力を入れ始めたのが、欧米ブランドを中心に世界中で関心が高まるESGやサステイナブルというキーワードへの対応だ。

 トレンド発信の場として世界的な権威を誇るパリの服地見本市「プルミエール・ヴィジョン・ファブリック」の2月展でサステイナブルやエコロジーがキーワードの中心に据えられていたことは記憶に新しい。もちろんこれはカラーや質感といったトレンド要素ではなく、地球環境や人権を守ろうというもののため、今後も継続するものだ。欧州ではこれが服地提案の必須条件になっており、日本のアパレルや消費者にも波及しつつある。そして、日本のOEM商社にとっても急速に商機の一つになった。

 縫製仕様や“働き方”の部分でもESGには対応できるが、より分かりやすいのは素材。「素材からの差別化」を各商社が追求するのには、こうした背景もある。各種高機能素材やオーガニック関連、リサイクル関連の素材を各社が独自、あるいは連携によって開発し、提案を強めている。

 今後もOEM事業で一定の価格戦略は避けられない。ただし、人件費の安い国・地域を探す、縫製拠点探しの“旅”にはリードタイムの面からも限界がある。差別化・付加価値化は各社共通の課題。ESGというキーワードは企業として無視できるものでない上、その対応に日本が持つ技術力、管理力が寄与することも間違いなさそう。商機が訪れている。

〈トレンドの打ち出しと/機能性素材に注力/豊島〉

 豊島は、素材を軸とした商品展開に注力する。19春夏製品OEM/ODM向け素材提案では、各部署のデザイナーを集めた「企画分科会」の最初の取り組みとして、トレンドを打ち出すとともに、機能性素材にも注力する。

 トレンドの打ち出しでは、情報が氾濫する中で、仕事と安らぎのバランスに注目。「スロー」をテーマに表面加工による凹凸感、かすれ感のあるストライプ、カントリー調の風合い、繊細で上質な触感を持つ生地を展示した。

 機能性素材では、快適冷感新素材「クールコンプレックス」を投入。19秋冬向けには、羽毛並みの保温力を持つ機能性中わた素材「スタックウォーム」を新たに投入する。

 布帛調丸編み「ワンダーシェイプ」は、保湿性を付加した「ワンダーモイスチャー」など従来の伸縮性に機能を付加しバリエーションを拡大。さらに、異業種とのコラボによる提案を打ち出している。

 デニムでは、日本、ベトナム、中国を組み合わせた生産の提案とする。

 フランスのノルマンディー地方のリネンを使用した独自開発素材や機能性が高いリネンブレンド素材のほか、吸水速乾性に優れたポリエステル繊維素材などを打ち出した。

 オーガニックコットン普及プロジェクト「オーガビッツ」は、ロゴを一新。コンセプトはそのままに、アイコンとしての認識性を重視したデザインとし、認知度の向上を図っていく。

 今後は、オーガビッツで素材開発を積極的に行い、しなやかなオーガニックコットン素材や異素材との混紡など素材提案の幅を広げる。

〈独自開発の複合繊維/長期的に幅広く訴求/蝶理〉

 蝶理は、素材・製品OEM/ODNで最も得意とする合成繊維に焦点を当てて、アパレル業界に向けてポジショニングを明確に打ち出している。

 今後の主力繊維素材として期待されているのが、独自開発した複合繊維「テックスブリッド」。機能性が高い素材は、レディースのセットアップやワンピース、メンズのスーツで市場から評価されている。

 同社としてもストレッチ性が高い機能性素材であるテックスブリッドのバリエーションを増やし、積極的に提案する。

 合成繊維と天然繊維が調和した新たな綿、麻のカテゴリーとして提案。ハイブリッドリネンやエココットン素材を打ち出す。

 テックスブリッド本格展開のスタートである19春夏で、布帛、ジャージーなど多様な製品で使用している。シャツやパンツに加え、特に布帛製品であるスプリングコートやジャケットの打ち出しを強める。

 テックスブリッドは、他の複合繊維と比べてソフト感があるといった独自性を持つ。同社はこうしたテックスブリッドの独自性を訴求して、製品受注を拡大する。

 21、22日に開いた19春夏総合商談会は「GOSENfiber」をテーマに、素材約100点、製品約200点を出展。素材から製品まで一貫して手掛けるOEM/ODMをイメージしやすい提案内容にした。

 19秋冬商品総合展示会では、より生産拠点に焦点を当て、実需に近い提案を行う予定だ。