特集 アパレル総合18秋冬~ネクストトレンド~(5)/デニム・カジュアル編

2018年06月22日 (金曜日)

〈アウター充実/ブルース「KURO」〉

 ブルース(東京都渋谷区)が展開するジーンズカジュアルブランド「KURO(クロ)」は、国産の高品質なジーンズを基幹にアウターやトップスを拡充、トータルブランド化を進める。18秋冬はコートを押す。

 「スーパー100`sビッグシルエット チェスターコート」(写真)は人気のチェスターのパターンを再構築、従来のモデルよりややワイドなシルエットに変更。シルエットに合わせて高密度で織り上げられたメルトン生地にもんで柔らかくするシャルム加工を施し、カシミヤ風の滑らかな仕上がりに。

 ラペル・袖・裾に施された太めのステッチ、艶消しの水牛ボタンなど細部にもこだわる。

 「ミリタリー・パーカ ボアダウンコート」はフィッシュテール・エポレット・フラップ付きポケットを省き、シルエットと素材によるバランスで再構築。

 表地は硫化染めされたコットンギャバを、トレンチコートのようなマットな風合いに加工。目に見える部分のみにボアを採用することで保温性を高め、見た目のアクセントとしても目を引く仕様としている。

〈18秋冬から復活/ビッグジョン「ワールドワーカーズ」〉

 ビッグジョンは、休眠ブランドだったオリジナルのワークカジュアルウエア「ワールドワーカーズ」を18秋冬から復活させる。

 ワーク調のファッションスタイルが注目されているためで、この打ち出しを機に国産で対応し販売投入先もセレクトショップやジーンズカジュアル専門店に絞り込む。

 ワールドワーカーズは、一味違った感覚ではけるワークウエア。1970年代に流行した日本の人気ブランドで、フットウエアとして“ワークシューズ”も流行した。特にボトムス企画に力を入れる。

 ペインターやカーゴ、ベイカー、5ポケットなどの種類をそろえ、全体にワイドなシルエットにした。

 生地はトルコや国内のデニムメーカー、合繊メーカー品で、製品価格は1万円から1万3千円。

 商品はメンズ仕様だが、女性にも十分耐えられるデザイン、シルエットになっており、トップスと合わせてユニセックス仕様での購買も期待できる。

 同社では「投入先を早期に50店舗に拡大したい」(清水剛社長)と話す。

〈究極のハイウエスト登場/カイタックインターナショナル〉

 カイタックインターナショナルのカジュアルブランド「ヤヌーク」の新商品「ハニー」は、ハイライズビンテージストレートデニムで、モデルの野沢和香さんとのコラボ企画。ローライズ&スキニーで固定ファンをつかんできたブランドだが、トレンドを加味して印象を一新させた意欲作だ。

 一番こだわったのはビンテージライクな色落ち感。ライトブルーのしっかりとした色落ちは長年はきこんだようなビンテージ感を出すため、職人が手でこする。

 ペーパーパッチも一つ一つ手でちぎった。裾やポケット周りのクラッシュ、ブランドのアイコンである6ポケットにも細かい調整を加えている。

 腰位置を高く、脚を長く見せながら、楽にはきこなせるのがヤヌークの魅力。後ろ姿の奇麗さも重視、メンズデニムのようにヒップ下に少しゆとりを持たせ、体形を選ばずはけるシルエットに調整されている。

 「ハイウエストを愛用している人、抵抗がある人にも愛される、究極のハイウエスト」としてアピールしていく。

〈異業種コラボなどで領域拡大/豊島〉

 豊島は先に行われたOEM/ODM素材展で、新しい提案として同社が打ち出した19春夏トレンドを訴求。シーンやアイテムなどに合わせ、提案したさまざまな機能素材とともに、モノ作りのサポートを充実した。

 展開をスタートして以来、順調に伸びているのが、伸長率が高く全方向に伸縮する布帛調丸編み「ワンダーシェイプ」。新たに保湿性を付加した「ワンダーモイスチャー」など、従来の伸縮性に機能を付加するなど、バリエーションを広げる。

 新しい試みとして、他業種とのコラボレーションを企画。野菜と果物を使用したスムージー専門店「ベビブレ」とコラボして、スムージーをイメージしたカラーパンツなどを展開していく。

 一方、ワークウエアを担当する東京二部三課が新たにワークウエアならではの高い機能性を持つカジュアルウエア「3/2WORKS(スリーツーワークス)」を新たに展開。ワークウエアの機能を備えつつ、普段使いで着られるカジュアルなデザインが特徴で、カジュアルウエアのチームと連携しながら領域を広げている。

〈容易に開閉操作ができる/YKK「クイックフリー」〉

 YKKが昨年から販売している「クイックフリー」は閉じる、開くの両操作を容易にしたファスナーだ。挿入補助機能と、簡易緊急解放/クイックリリース機能を併せ持つ。スポーツ分野だけでなく、子供服やアクティブシニア向けでも展開する。

 ファスナーを閉じる時は、蝶棒をスライダー下面に添えて入れることができる挿入補助機能により、スライダー開口部に蝶棒(開き具)を入れやすくした。加齢で視力が弱まった人も、下パーツのプレートに一度当て、下に引き下ろすことで操作が容易になった。

 一定以上の負荷でエレメント(務歯)が自動解放される機能も付加した。エレメント部を左右に引っ張るだけで、簡単に開くクイックリリース機能も持つ。子供服でヒモやフードが首に引っ掛かるリスクを軽減させた機能だが、スポーツ選手が試合時に待機から本番へと素早く脱ぎたいときにも便利。

 クイックフリーは2016年の総合展示会「YKKファスニング クリエーション フォー 2017」で開発商品として出品し、注目された。

〈カイハラ/デニムの活用幅、広げる〉

 デニムメーカーのカイハラ(広島県福山市)は、機能開発力を生かし、ジーンズ以外のデニムの採用領域を積極的に広げている。衣料品に限らず、建材でも訴求点を新しい切り口で提案するなど、デニムの採用範囲拡大を図る。

 衣料用途では数年前から、ワークウエアやアスレジャーなど、従来とは違うジャンルの開拓を強化している。

 今年1月に大手造船会社の常石造船(広島県福山市)が、創業100周年を記念し、デニムを使ったユニフォームを導入した。労働現場では、デニムならではの色落ちや傷みなど、これまで欠点とされていた部分が利点と受け取られるような意識変化が現れている。

 ワークウエア用途のデニムは強度が求められることから、糸や織布に工夫をこらし、各種機能も追求されている。

 同様に機能を持ったデニムの開発が進む中で、スポーツ系ブランドへの提案が実りつつある。2017年の後半からアスレジャー用途などで機能を持ったデニム採用が進む。特にカジュアルアパレルメーカーがスポーツ系の提案を重視する傾向が出ており、合繊使いのデニムの採用機運が海外市場で高まりつつある。

 一方、衣料用途以外の販売では、まだ規模が小さいが、「さまざまな分野からのデニムを使いたいという要望も増えてきている」(貝原淳之専務)。

 今年2月には、田島ルーフィング(東京都千代田区)が建築用床材に、同社製デニムを採用した「経年変化を楽しむ」床材の販売を始めている。

 貝原専務は、「いろいろな分野でデニムのプラットフォームを長期的に確立していきたい」と展望する。