特集 2018秋冬オフィス&サービスウエア(3)/総合力、さらに進化/商社編

2018年07月03日 (火曜日)

 好調な企業業績を受け、商社各社のユニフォーム事業のODM/OEMは堅調に動く。外国人観光客の増加、2020年の東京五輪といったユニフォーム更新が期待できる動きが続く。各社は18年度も素材調達や生地開発、物流まで幅広く手掛ける海外ネットワークを顧客に提案する。

〈色と柄、豊富に提案/カジュアルの強み生かす/豊島〉

 大都市圏の建築ラッシュを追い風に、豊島のユニフォーム需要は堅調で、幅広い業種に向けて製品開発を進める。今春開いた19春夏のオフィス、サービスユニフォーム向け素材展では、プリント柄や夏らしいカラーを企画の中心に据えた。

 19春夏はグラデーションがかかったストライプや、チェックをプリントで表現した。カラーも「爽やかなマリンテイストを意識した」(東京二部二課)と言い、年間を通して着用できる素材を使いながら、ブルーやネービー、黄色といった夏らしい色を投入した。

 オフィスウエア向けでは、オリジナルのポリエステルと「テンセル」の混紡素材を軽やかなジャケットやスカートで見せた。

 これまでサービスウエアとして提案が多かったトリコットは、ボーダーなどの表情豊かな柄でオフィス用にも取り込んだ。昨年販売を本格化したストレッチに優れた、布帛調ニット「ワンダーシェイプ」のパンツも紹介した。

 オフィス、サービスウエア以外では、ワークウエアを担当する東京二部三課が今春、プロジェクト「3/2WORKS」を立ち上げた。4月下旬に東京ビッグサイトで開かれた展示会では、パンツやオールインワンなど20品番を披露し、国内外の新規顧客を開拓した。カジュアルに強い同社の特徴を打ち出す。

〈顧客との対話重視/海外工場の情報発信/丸紅〉

 丸紅の2018年3月期のオフィス、サービスウエアのOEMは数量、売り上げともに前年と同水準で動く。機能繊維部の田口亘ユニフォーム課長は「東京五輪を前に更新需要が見込まれるが、市場の期待感よりは別注がやや少ない印象だった」と話す。

 ただ、五輪以外にも期待できる流れはある。外国人観光客の増加で「おもてなし」の機運が高まり、商業施設の清掃や、ビルメンテナンスといった業種でもウエアのデザインを重視するようになった。人手不足の中で、ユニフォームに快適性を求める動きが強くなり、ニットのオフィスウエアの要望も高まっている。

 生産面では、中国からASEAN地域に拠点がシフトする中、モノ作りの難度が上がっているという。田口課長は「ここ1、2年で欧米企業との競争が激しくなり、工場の半年先のラインを確保することも厳しいケースもある」と説明する。

 こうした中で求められるのが、顧客や工場との日々のコミュニケーションだ。顧客の販売状況や経営判断を聞き取り、生産数量を読み、工場にいかに早く先の計画を伝えるかが重要になる。田口課長は「工場の情報を顧客に発信しながら、生産と供給の精度を高めたい」と話している。

〈ウエアラブルで強み/デジタル分野に投資/日鉄住金物産〉

 日鉄住金物産のユニフォームのODM/OEM事業は、2018年3月期も堅調だった。繊維事業本部機能衣料第二部の岸本孝男部長は「東京五輪を2年後に控え、大きな物件が出始めている」と話す。

 新中計の開始年度の今期は、ユニフォーム市場で注目されるウエアラブル分野への投資を進める計画を立てる。従業員の健康管理に役立つとされるウエアラブルは、建設現場などで活用が期待されている。グループで鉄鋼、産機・インフラ事業を行う同社は「建設現場などの需要を探りやすい」(岸本部長)と言う。ユニフォームメーカーへの周知も進める。

 生産面では、17年5月に開設したミャンマー3カ所目になるネピドーの工場が順調で、同国でさらに設備投資する。物流費が高騰する中、海外工場で着用者のウエア一式を梱包(こんぽう)し、最寄りの港に送ることで輸送コストを抑える。

 「人口減少といわれているが、ユニフォームを着る人は増える」。岸本部長はこう強調する。定年延長して働く高齢者や、外国人労働者が増えるためだ。こうした需要を見据え、生地調達や素材開発、物流、ウエアラブル分野で商社の強みを発揮する。

〈ニッポンレンタカー/ユニフォームにも環境配慮/再生ポリエステル採用〉

 サステイナビリティー(持続可能性)への関心が高まる中、ユニフォームにも環境に配慮した素材を取り入れようという動きが出ている。ニッポンレンタカーは、今年2月、再生ポリエステルを採用したウエアにリニューアルした。

 ニッポンレンタカーを運営するニッポンレンタカーサービスは、ハイブリッドカーをそろえた「エコクラス」をいち早く設定するなど環境に配慮した取り組みを進めてきた。2019年に創業50周年を迎えることを記念した、今回のリニューアルでもエコロジーのコンセプトを打ち出した。

 再生ポリエステルを使ったジャケットは、伸縮性に優れたニットを採用した。個性が光るのがジップタイプのフロント部分で、ジップを引き上げるとブルゾン風に、開くとフォーマルな印象が出せる。接客や洗車など業務によって雰囲気の違いを出すことができる。

 以前は各自が用意していたパンツも統一。フロントタックが消えにくい加工を施し、女性用にキュロットタイプも用意した。監修は環境に配慮した素材を使ったユニフォームを企業や自治体に提案する、リバースプロジェクト(東京都港区)が手掛けた。

 ニッポンレンタカーは11月から乗用車とワゴン車の全面禁煙に踏み切るなど、東京五輪を前に健康や環境に配慮した取り組みを加速する。