特集 19春夏 オフィス&サービスウエア(3)/安定供給へ設備投資/商社編

2019年01月31日 (木曜日)

 ユニフォームの更新需要を受け、OEM事業を行う商社の業績も堅調に動く。一方で、生産拠点である中国やASEAN地域の人件費や物流費は高騰し、海外の有力アパレルとのライン獲得競争も激しい。各商社は、海外工場への投資や人材育成で生産性を高める。

〈ベトナムに自社工場設立/豊島〉

 豊島は2018年4月、ベトナムのレディースアウター工場を買収し、オフィスウエアを生産する「トヨシマ・ロンアン・ガーメント」を設立した。東京二部の中駄淳部長は「自社工場を持つことで、オフィスウエアに求められる高い品質、多品種小ロットのユニフォームを生産できる。市場を取っていく上で重要な拠点」と位置付け、年間15万着の生産を目指す。

 19年6月期の上半期(18年7~12月)は、20年に迫った東京五輪・パラリンピックの更新需要の追い風を受けて、オフィス、サービスウエアとも増収で堅調に動く。

 19秋冬向けオフィス・サービスウエアの素材展では、スポーツ向け素材を取り入れたオフィス商材を提案した。「着心地の良さや機能性の高さが評価され、2年ほど前から結果が出ている」(担当者)と言う。トレンドのチェック柄やピンソニック加工を施した素材などカジュアルなラインアップも充実させた。

 全社挙げて環境に配慮した取り組みも進める。18年1月に日本環境設計の第三者割当増資の引き受けと、再生ポリエステル事業への参画を発表。素材と製品の部署が連携したプロジェクトチームを作り、素材開発を進める。オーガニックコットンを通して社会貢献とビジネスを両立するプロジェクト「オーガビッツ」も積極的に活用する。

〈ミャンマー工場に設備投資/日鉄住金物産〉

 2019年3月期の日鉄住金物産のオフィス・サービスウエア事業は堅調に動く。海外工場への設備投資、人材育成を進め、生産性を上げる。

 同社は早くからミャンマー生産に力を入れてきた。17年には首都ネピドーに新たに工場を立ち上げた。ASEAN地域の人件費や物流費が上昇する中、複数あるミャンマーの協力工場のうち、2社に設備投資した。生産性を高めてコストを抑える工夫を図る。ベトナムとインドネシアでは生地開発も進めている。

 現地スタッフの育成にも力を入れる。繊維事業本部機能衣料部の岸本孝男担当部長は「現地の母国語を話せるスタッフのほうが円滑なコミュニケーションがとりやすく、工場全体のレベルアップにつながる」と説明する。

 顧客との取り組みでは、鉄鋼やインフラ事業を手掛ける日鉄住金グループの強みを最大限に生かす。実際にユニフォームを着用する人たちがどのような機能を求めているか丁寧なヒアリングを行い、商材開発につなげる。岸本担当部長は「単なるOEMではなく、顧客であるメーカーの企画提案力、当社が持つ物件情報との機能を補完しながら取り組みを進めたい」と話す。

 働き方改革や労働環境の改善が進む中、グループ会社が開発した従業員の見守りサービスの試験運用も始まっている。ユニフォーム分野での活用を探る。

〈コスト以外も提案/丸紅〉

 2018年の丸紅のユニフォーム事業は、食品工場向け白衣、メディカル、ワークウエアを中心に好調に動いた。

 機能繊維部の田口亘ユニフォーム課長は「数量ベースでは順調だが、生産コストは国の区別なく確実に上がっている」と話す。原料や素材の値上げに加え、人件費の高騰で海外の縫製工場の加工賃は上昇している。

 生産コストの課題がある中で、丸紅グループを挙げて生産管理の強化と安定供給に取り組む。同社は、ASEAN地域に現地法人や出張所があるため、新規工場と取り組む場合でも審査や手続きがスムーズに進むメリットがある。元々ベトナムの生産比率が高いが、近年はワークウエアを中心にインドネシア生産にも力を入れている。

 田口課長は「ユニフォームの強みは安定的な生産や高い品質基準がある点」と説明する。技術的に優れた縫製工場を巡り、海外の有力アパレルと競争が激しくなる中で、一般衣料にはない強みを打ち出す。

 顧客には企画提案力や安定性などコスト以外の部分もアピールする。例えばワークウエアでは長くODMを行っている。シーズン初めにコンセプトから提案したり、素材を軸に製品に落とし込む。今後もOEMと並んで、ODMの機能を高める。

〈ユニフォームネット/安心する病院事務服は?/一般市民千人が投票〉

 ユニフォーム販売代理店のユニフォームネット(東京都千代田区)は、メーカーの商品開発に役立ててもらおうと病院事務服の人気投票を行った。1019人が参加し、カーシーカシマ(栃木県佐野市)の「エンジョイ」が1位に輝いた。

 投票は、10月上旬の3日間、福島県郡山市で開かれたイベント会場で行った。メーカー8社のウエアを展示し、来場者に安心感、信頼感があるスタイルはどれかを聞いた。

 エンジョイは華やかなピンクのスカーフと同系色のベストが目を引き、投票総数の24%を占めた。ユニフォームネットは「スカーフなどのアクセサリーは、着用者からは『派手にしたくない』などの意見があるが、来院する立場の人たちからは明るい印象が好まれたのでは」とみる。

 2位はフォーク(東京都千代田区)の「ヌーヴォ」、3位はサンペックスイスト(同中央区)の「グロウ」が続いた。全体の傾向では、かわいらしさを出したユニフォームよりも、きちんとした印象のウエアが上位だった。

 カーシーカシマは「医療現場で求められる親しみやすい雰囲気に合ったのでは。今後もユニフォームを通して医療を取り巻く環境を良くしたい」とコメントしている。