特集 清潔・衛生と繊維製品(2)/素材・加工剤メーカー/清潔・衛生な生活を支援

2018年11月28日 (水曜日)

 モノや人が国境を越えて移動するグローバル時代。ライフスタイルの変化に伴って清潔や衛生に対する消費者のニーズは一段と高度化している。こうしたニーズに応える繊維素材・加工を提供することで、素材メーカーや加工剤メーカーの存在感はさらに高まる。

〈抗菌+αの提案に重点/クラボウ〉

 クラボウは抗菌加工として実績のある「クランシル」、抗ウイルスと抗菌をマルチに実現する機能加工技術「クレンゼ」など多彩な機能素材を擁している。特に近年は抗菌防臭加工が定番化していることから、“抗菌+α”の提案に力を入れている。

 抗菌プラスアルファの機能で注目されるのがクレンゼ。ISOやJISが定める抗菌性試験、抗ウイルス性試験方法で対象となるウイルスや細菌、カビのほか、約20種の微生物に対する効果を確認している。こうした特徴を生かし、食品白衣やメディカルウエアといったユニフォーム、寝装、雑貨など幅広い用途への提案が進む。最近では部屋干し臭の原因菌であるモラクセラ菌に対する抗菌性への評価も高い。

 他の機能素材との組み合わせにも力を入れる。例えばユニフォーム用途では近年、ストレッチ生地のニーズが一段と高まっているが、こうした機能素材にも抗菌防臭や消臭といった機能を付与することで一格上の差別化を進めている。

 話題の電動ファン付ウエア用の生地に対する消臭加工の要望が高まってきた。このため既存の消臭加工に加えて、新たに高性能な新消臭加工の開発にも取り組んでいる。自家に染色加工の徳島工場を持つことも同社の開発・製造面での強みとなっている。

〈注目高まる防虫加工/ダイワボウノイ〉

 清潔・衛生に焦点を当てた機能素材を多彩に用意するダイワボウノイ。現在、特に力を入れているのが防虫加工素材「モスキュート」。さまざまな虫に対する効果も研究することで用途拡大を目指す。

 モスキュートは、蚊を対象とした機能試験で高い効果を確認している。現在、防蚊性試験方法のJIS化が進められているが、JISで採用予定の試験方法にも対応した。蚊だけでなくトコジラミに対する効果を確認する実証研究も進める。人間の吸血性寄生昆虫であるトコジラミへの対策は、旅館・ホテル業界などからのニーズが高い。このため寝装・寝具用途への拡大を目指す。

 そのほか、防汚加工「エコリリース」「ミラクルリリース」、抗菌防臭加工「ミラクルセット」など実績も豊富。繊維評価技術協議会の「SEKマーク」も積極的に取得する。機能加工剤は全て繊維製品の安全性に関する国際規格である「エコテックス規格」による認証を取得したものだけを採用している。

 今後はさらに機能加工素材を同社のサステイナブルプロジェクトに組み込むことで清潔・衛生と環境を融合させた開発と提案に力を入れる。

〈臭いの悩みを加工で解決/富士紡ホールディングス〉

 富士紡ホールディングスは肌着に関連した臭いの悩みを解決する加工のレパートリーを数多く持つ。部屋干し臭に対応した「デオサラット」、抗菌防臭と消臭を併せ持つ「デオエレガンス」などを展開する。

 “スメルハラスメント”や加齢臭に悩む中高年の増加を背景に、汗臭、加齢臭の消臭に加え、ミドル脂臭の抗菌防臭機能を併せ持つ複合加工「デオフレスカ+デオコンフォート」もある。

 この加工はアンモニア、酢酸、イソ吉草酸などに起因する汗臭、ノネナールによる加齢臭の消臭加工に、30~40代の男性の後頭部や首の後ろから発するミドル脂臭の発生源とされるジアセチルの抗菌防臭機能を組み合わせた。耐久性は洗濯10回後でも機能を確認済み。加工はフジボウテキスタイル和歌山工場で行う。

 和歌山工場は新たな機能加工の開発拠点でもある。今年に入って、吸汗速乾、抗菌防臭、さらに汗消臭機能をも併せ持つセルロース100%素材「デオスカイ」を開発した。機能の一つ一つは良く知られたものだが、一つの素材に3機能が複合されているのはデオスカイが初めてという。高付加価値インナーで展開する。

 これまで吸水速乾性と汗の消臭加工の両立は難しいとされてきたが糸構造や加工で工夫することで実現。吸水速乾力では一般的に、乾きやすいとされるポリエステルにも劣らない性能を実証済み。

 抗菌防臭機能は臭いの原因になる細菌の増殖を抑えることで実現。消臭機能は汗に含まれるアンモニア、酢酸、イソ吉草酸のそれぞれで臭い成分を70%以上減少させることに成功した。いずれの機能でも優れた耐洗濯性を持つ。

〈天然由来で防虫レーヨン/ダイワボウレーヨン〉

 ダイワボウレーヨンは得意の練り込み法によるさまざまな機能レーヨンを開発してきた。最近では注目が高まる防虫機能もレーヨンで実現している。

 同社が開発した防虫レーヨン「バグノン」と「マイテクト」は、天然由来の防虫成分であるケイ皮酸誘導体をレーヨンに練り込んだもの。ケイ皮酸誘導体は香料などにも広く使用されており、安全性が確認されていることも特徴となる。

 バグノンは蚊を対象とした試験で効果を確認しており、国内だけでなく海外からも引き合いが多い。中国や東南アジアでは蚊を媒介とする伝染病も多く、バグノンの機能への期待は高い。一方、マイテクトはダニを対象とした試験で効果を確認した。こちらは布団中材など寝装・寝具への提案を進める。いずれも練り込み法のため洗濯耐久性の高さも強みとして打ち出す。

 同社はこのほか、部屋干し臭の原因菌であるモラクセラ菌に対する抗菌性を確認した「ビスクリーン」など清潔や衛生に焦点を当てた機能レーヨンを多数ラインアップする。練り込みによる機能レーヨンは後加工工程を省略できることから、省エネや水資源節約にも貢献できる素材としても打ち出す。

〈天然由来成分で機能加工/シキボウ〉

 シキボウはこれまでも清潔や衛生に寄与する機能加工を得意としてきた。特に抗ウイルス加工はパイオニアと言える。その同社が現在、天然由来成分を活用した機能加工に力を入れている。

 同社はこのほどユーカリから抽出した成分による抗菌・抗ウイルス加工素材「ユーカリーブ」を開発した。抗菌性と抗ウイルス性はいずれもJISやISOに基づく試験方法で性能を確認している。ヤシの実から抽出した成分による撥水(はっすい)加工生地「ヤシパワー」やアロエ成分による抗菌加工生地「アロエージュ」もラインアップする。

 婦人服やカジュアル分野では、従来の有機合成化学で作られた成分による機能加工ではブランドのコンセプトや世界観とうまく組み合わせることが難しく、採用が見送られるケースも多い。一方、天然由来成分による機能加工は“ボタニカル”や“エコロジー”といった切り口からファッションブランドの世界観と親和性を持たせやすく、新たな市場開拓の可能性が広がる。

 そのほか、防虫加工生地「防虫アーマー」も開発した。蚊を使った実験で防虫性能と安全性を確認した。後加工のため、UVカットなど他の機能加工との併用も可能な点が特徴となる。

〈試験設備生かし開発加速/大和化学工業〉

 大和化学工業(大阪市東淀川区)は自社の試験設備を生かし薬剤開発に取り組むとともに、顧客の商品開発のスピードアップにも貢献していく。

 中でも抗ウイルス加工剤では、2015年から自社にウイルスを扱う試験室を設け開発体制を強化してきた。これにより、SEKマーク対応の「アモルデンV―100JM」をこのほど発売した。同商品はインフルエンザウイルスに加え、薬剤耐性が高いネコカリシウイルスにも効果を発揮するため、フィルターなどの用途に向け提案を進めている。

 さらに、防蚊加工についても自社で効果の試験が可能。新しい設備を導入し、今後のJIS化にも対応する。「アニンセンPCR」シリーズはピペリジン系化合物を使用した防蚊加工剤であり、主流だったトルアミド系に比べ、皮膚に安全で、臭いも少ない。ノンホルマリンタイプも用意した。

 抗菌加工剤「アモルデンNAZ」シリーズや消臭加工剤「ザオバタックNANO」シリーズなど洗濯耐久性を向上した加工剤もそろえる。工業洗濯50回後でも効果を発揮するなどでユニフォーム分野もターゲットに訴求する。

〈芳香カプセルで抗菌防臭/三木理研工業〉

 三木理研工業(和歌山市)は抗菌防臭機能も持つヒノキやヒバ、ハッカの精油を入れた芳香マイクロカプセルを展開する。

 ホルマリンを含まないウレタンタイプのマイクロカプセルもそろえる。ヒノキなど約15種類を用意するほか、顧客ごとの別注にも対応している。少量から対応していることもあり、オリジナルを求める客先から好評だ。

 除虫菊などの成分を配合したマイクロカプセルでは、防蚊効果を訴求する。既に採用しているアパレルによる試験では高い忌避効果を示したという。

 除虫菊は殺虫剤や蚊取り線香の原料にも使用されている。除虫菊以外にも防虫効果のある天然由来成分と一緒にマイクロカプセルへ閉じ込めることで、より高い効果を実現した。マイクロカプセルに閉じ込めるため、中の成分が肌に触れる機会も少ない。

 マイクロカプセル以外でも抗菌防臭加工剤「リケンレヂンDPC―11」を展開。抗菌効果はもちろん、耐洗濯性も高く、吸水性や風合いを損ねず、加工時の変色リスクも少ないのが特徴。特に肌着やタオルなどの用途で好評。