特集 アジアの繊維産業Ⅰ(9)/わが社のアジア戦略

2019年03月28日 (木曜日)

〈C+1の流れを意識/素材連携や人的交流進める/クラボウインターナショナル〉

 クラボウインターナショナルのアジア縫製の取扱数量は、中国、インドネシア、バングラデシュ、ベトナムの順。今後も「チャイナ・プラス・ワンは自然の流れとして進む」とし、インドネシアの縫製拠点、アクラベニタマ(AKMガーメント)の活用や、タイのグループ製造拠点であるサイアム・クラボウ(SKC)、タイ・クラボウ(TKC)、タイ・テキスタイル・デベロップメント・アンド・フィニッシング(TTDF)との連携強化によるベトナム縫製などに力を入れ、周辺のミャンマーやカンボジア縫製体制も整えていく。

 商量が最も多い中国事業では、同社駐在員事務所とクラボウの現地法人を活用した外・外ビジネスを軌道に乗せつつあり、クラボウと連携を取りながら今後も強化拡大する。主な対象は欧米向け。

 インドネシアはAKMガーメントの活用がポイントになる。昨年から同工場の運営を主体的に行うようにし、対日ユニフォーム縫製だけでなく、内販も同アイテムを軸に拡大を図る。同国では最低賃金の上昇が顕在化しており、安価な人件費を求めて協力工場が郊外に移転する動きも目立つが、占有ライン契約などで“囲い込み”を進め、安定供給につなげる。日本の竹田工場や村上工場などとの人的交流も図り、人材育成にも努める。

 バングラデシュは価格訴求型商品の縫製拠点として活用する。トラブルが発生するケースも少なくない同国だが、「協力工場との関係をしっかりと深める」ことで対応し、将来は内需にも目を向ける。

 ホーチミンに駐在員事務所を置くベトナムは、タイのグループ製造拠点との連携がポイントになる。「素材メーカー系商社としての力を発揮していく」という考えがその背景にあり、素材開発にも力点を置く。

〈海外生地生産本格化へ/日本のメーカーと一緒に/澤村〉

 繊維商社の澤村(大阪市中央区)は、「産地メーカーと共に、日本で培ってきた生地生産のノウハウを発揮して海外生産を拡充していく」として今後、アジアでの生地生産本格化を目指す。

 「日本からの輸出だけでなく、海外生産を拡充する必要がある」との認識。背景には、欧米のメガブランドなどがアジア縫製拡大に伴ってアジアでの生地調達を増やしているものの、コスト、納期、ロットの面でミスマッチとなり日本への発注がほとんどないという現状がある。日本の生地の評価は高いが、そのニーズは中国、韓国、台湾などに取り込まれているという現状を踏まえ、アジアで日本品質の生地を作ることでこのニーズを日本企業に引き寄せることを狙う。

 同社の生地生産の発注先は、福井支店も構える北陸産地が大半。トリコットを軸に丸編み地、織物を展開し、輸出も堅調に伸ばす。

 海外生産拡充は主力のトリコットから先行する。既に同生地の需要が欧米メガブランドで高まっていることや、中国や韓国、台湾のトリコット生産スペースが空いていることも調査済み。そのスペースに日本の技術力を介在させることで需要を取り込んでいく。

 海外生産を拡充する際に前提とするのは、「国内産地メーカーとの取引を維持拡大した上で」という点。北陸産地を中心とした国内の生産スペースが不足しているため海外生産が必要との見解だが、「単純にシフトするのでは意味がない」と考える。澤村、北陸のニッター、アジア現地メーカーの3者が協業し、互いに利益を享受するような取り組みを目指す。既にシャツ地向けのトリコットではベトナムで一貫生産可能な体制を整えた。他の生地にも応用する。

〈素材や一貫体制を訴求/現地調達に対応する/「アセアン縫製用素材展」〉

 日本の2018年のアパレル輸入は前年比6・3%増の3兆2044億円。うちASEAN地域は8797億円と18・2%増で、全体に占めるシェアは10年前の6・3%から27・5%に上昇した。中国シェアは59・9%と6割を切る。ASEANシフトは進むが、生産面で「素材」調達が課題となっている。中国に比べ素材の現地調達が難しい。日本繊維輸出組合が2月下旬に「第5回アセアン縫製用素材展」を東京都港区のテピアで開いたのも、そのため。

 同展には13社が出展した。ASEAN地域を中心にして開発した素材を提案するとともに、縫製まで一貫したサプライチェーンも訴求した。

 一村産業は、紡・織・染を一貫して手掛けるベトナムの生地開発を訴求。現地では主にユニフォーム向けを生産しており、18年に駐在員を配置し現地の体制整備を進める。

 日鉄住金物産は今回から、ベトナム素材の展示を開始した。婦人服なども出品し、コスト要求に応えながら品質を維持できる生産体制を披露した。興和も、生地を中心にベトナムを縫製拠点とする製品を展示。現地では、環境に配慮した生産も推進している。

 豊島は、ASEANを含め海外に張り巡らした生産ネットワークを前面に打ち出した。インドネシア、中国、ベトナムなど各拠点に素材の担当者を常駐させ、現地開発素材の高度化を図る。スタイレムは、インドネシアを強化する。現地の工場と協力し、原料の開発から取り組む。得意とするプリントデザインの能力を高めるため、定期的に熟練した技術者を日本から派遣している。

 ユニチカトレーディング、帝人フロンティア、東洋紡STC、東レグループは、ASEANの生産拠点を背景にした素材を提案。今後は副資材の集積も注目される。