特集 アジアの繊維産業Ⅱ(4)/わが社のアジア戦略/帝人フロンティア/多彩なバリューチェーン構築

2019年03月29日 (金曜日)

 帝人フロンティアは、アジア地域で衣料繊維から産業資材まで多彩なバリューチェーンを構築している。さらなる拡大に向け、タイ、インドネシア、ベトナムの各地での取り組みが加速した。

〈さらなる増産検討/TPL TJT〉

 ポリエステル長・短繊維製造のテイジン・ポリエステル〈タイランド〉(TPL)とテイジン〈タイランド〉(TJT)は、2019年度(20年3月期)の重点戦略として構造改革の成果を発揮しながら、さらなる増産に向けた具体的施策を検討する。

 TPL、TJTともに18年度は好調に推移した。不織布向けポリエステル短繊維が全体をリードし、原着わたも自動車向けが堅調。新規用途の拡大もあった。ポリエステル長繊維は衣料向けでスポーツ用途が堅調だった。工業用もゴム資材向けが安定している。

 堀井哲也TPL社長兼TJT社長は、供給がタイト化している短カットわたや原着わた、堅調な工業用ポリエステル長繊維などについて「次の増産をどのように実現するか。19年度内に結論を出したい」と話す。自社での増設に加えて委託生産の活用も選択肢となる。

 再生ポリエステルも強化する。世界的に廃プラスチックの輸出入規制が強化されていることから、現地で使用済みペットボトルを回収する取り組みを開始。再生ポリエステルフレークの製造ラインを立ち上げ、3月から試運転に入った。「まだ商業レベルの規模ではなく、CSR活動の一環」だが、リサイクルシステムの方法をタイ国内に認知させることを目指す。

〈ロス削減で競争力維持/テイジンフロンティア〈タイランド〉〉

 テイジンフロンティア〈タイランド〉は2019年度(20年3月期)の重点課題として産業資材分野でのロス削減などによる競争力の維持を掲げる。

 18年度はカーシートが合成皮革などとの競争激化で勢いがない。ゴム資材は堅調に推移し、タイヤコードは生産を担うテイジン・FRA・タイヤコード〈タイランド〉でタイヤメーカーの品質承認が進んだことで販売が増加した。

 ただ、全体としてバーツ高の影響が大きく、利益面を圧迫する。衣料用テキスタイルもバーツ高で対米輸出が苦戦。ファッション素材も市況が低迷している。

 このため鎌田進社長は19年度の戦略として「ロス削減などで競争力を維持し、利益を確保することが重要になる」として生産・販売での合理化・効率化に取り組む。好調のゴム資材はシングルエンドコード加工を担うテイジン・コード〈タイランド〉で小規模な増設も実施する。タイヤコードは増産分の安定的な販売に取り組む。

 衣料用テキスタイルは日本と連携してスポーツ用途を重点に、内販の拡大にも取り組む。「場合によっては縫製品での販売も視野に入れる」。

〈資材や不織布販売で拡大/テイジンフロンティアインドネシア〉

 テイジンフロンティアインドネシアは、工場や車両などの資材用繊維、生理用品などの衛材用繊維で業績向上を狙う。江成俊一社長は「総じて2019年度は良好な事業環境になる」と予想する。

 資材用繊維はこれまで現地の工場新設や自動車、2輪車販売数の伸びを追い風に売り上げを増やしてきたが、新たに前期から仕掛けてきた生理用品向けの繊維販売が来期(20年3月期)から実績になる見通し。

 一方、縫製品事業では帝人の機能素材を使った独自の生地開発に取り組む。これまで縫製品は現地素材メーカーの定番生地を使った商品が多かっったが、顧客から高付加価値素材を使ったアイテムの要望が増えているためコンバーターとしての機能を強め新たな商品の開発を強める。

 縫製品販売を手掛ける製品部と生地の開発・販売を担うテキスタイル部とが連携し、製品部によせられたオーダーをテキスタイル部で開発し両部の相乗効果を狙う。一部の縫製品には帝人独自の高機能素材を使う。

 中東の民族衣装向け生地販売は最悪の状態を少しずつ脱しつつある。

〈蓄積したノウハウが強み/テイジンフロンティア〈ベトナム〉〉

 テイジンフロンティア〈ベトナム〉は同国内に協力縫製工場約10軒を抱え、自家縫製工場も持つ。これらを采配して対日縫製品を安定供給する。2001年設立の自家工場で蓄積してきたノウハウと、長く深く連携してきた協力工場の力が強みだ。

 2018年度(19年3月期)は、不透明感が漂っていた19春夏向けが拡大したことから全体の受注数量が伸びた。昨年秋の台風で副資材や生地の運搬が滞ったとき以外は自家工場、協力工場とも順調な稼働を続けた。

 スポーツ関連を中心とした自家工場がほぼフル稼働だったため19年度の受注数量は横ばいを見込むが、協力工場を活用してスポーツ以外の分野で拡大を狙う。

 「ここ3年ほどで少しずつ増えている」(三ツ股健次社長)というこの分野の開拓は、子供服、レディース、メンズなどが対象。今後の拡大に向けてMDを増員し、チームも編成した。

 閑散期対策も改善課題に据える。現状は「極端に差がある」。日本本社と一体となって顧客と話し込んだ上で早めにスケジュールを組むなど円滑な工場稼働を実現していく。

〈スポーツ中心に増販ねらう/タイナムシリインターテックス〉

 織布・染色加工のタイナムシリインターテックスは2018年度(19年3月期)も好調な販売が続いている。このため19年度はさらなる拡販を狙う。

 衣料用は中東民族衣装向けが市況低迷で苦戦もスポーツ向けが好調に推移し、織物だけでなくニット生地も拡大した。産資用の受注はカーシートがタイ国内での自動車生産量増加で好調だった。このため全体での販売量は前年度比10%増で推移している。ただ、輸出比率が60%を超えるため、バーツ高で利益面は売上高ほど伸びていない。

 19年度に関して山口尊志社長は「衣料用はスポーツを軸に増販を狙う」と話す。ポリトリメチレン・テレフタレート繊維「ソロテックス」など機能素材を活用したストレッチ品やメガブランドを中心にニーズが高まる再生ポリエステル使いなどに力を入れる。カーシートも増産を計画する。

 設備投資も積極的に行う。エアジェット織機16台を更新するほか、液流染色機も2台更新する。「今後も順次、設備更新を進める」と話す。