合繊メーカー 20年3月期決算見通し/増産投資で上乗せ狙う/まだら模様の利益見通し

2019年05月30日 (木曜日)

 合繊メーカーは2019年度(20年3月期)決算で、クラレ(19年12月期)を含む全6社が増収を計画する。営業利益では3社が増益、1社が前年並み、2社が減益とまだら模様を呈している。長期化しそうな米中貿易摩擦、中国経済の減速といった逆風が見込まれる中、各社は19年度をどう乗り切っていこうとしているのか。(堤 貴一)

 合繊メーカーは18年度決算でクラレを含む全6社が増収を達成し、東レ、旭化成は過去最高を更新した。一方、原燃料価格高騰の直撃で、過去最高を更新した旭化成を除く5社が営業減益を強いられた。

 19年度で中期経営課題の最終年度を迎えた東レ。課題では繊維事業の目標を売上高1兆1200億円、営業利益920億円に設定していたが、19年度は1兆円、700億円にとどまるとみている。

 原燃料価格の急騰や先行投資に伴う償却負担で利益は伸び悩んだものの、「売り上げを伸ばすことが重要」と言う。エアバッグ関連やスパンボンド不織布、人工皮革などの増設効果を着実に発現させ、成長路線を今後も維持する考え。全社ベースでは次期中期課題で売上高3兆円、長期ビジョンで5兆円を視野に入れる。

 旭化成は19年度、新しい中期経営計画をスタートさせた。4月1日付で組織再編を実施し、繊維、高機能ポリマー、消費財をパフォーマンスプロダクツ事業本部に統合した。同社も、人工皮革、スパンボンド不織布などで拡大投資を続けてきており、19年度も増収増益を計画。2年連続で繊維営業利益の過去最高更新を目指している。

 帝人は炭素繊維複合材料やアラミド繊維で設備投資を伴う拡大戦略を続行。中でも、航空機向けや自動車向けでこの間、打ってきた布石の具体化を急ぐ。繊維・製品事業では生販一貫による取り組みを強化し、成長シナリオを推進する。

 東洋紡はエアバッグ事業での拡大戦略に意欲を見せる。火災事故の影響で18年度はブレーキがかかってしまったが、「工場再建の暁には当初プランに戻せる」との手応えを示している。19年度は全社で365億円の設備投資を計画。そのうち100億円をエアバッグ用ナイロン66の新工場建設に充てる。候補地としてタイを有力視している。

 ユニチカは19年度で中計最終年度を迎えている。昨年の宇治工場での火災事故の影響を織り込み、19年度も利益が伸び悩むとみている。一方、タイ・タスコのスパンボンドやインドネシア・エンブレムアジアのナイロンフィルムで増産投資を進めており、この効果を次期中計で発現させる。繊維事業では、この間の取り組みを通じ、利益の大幅回復を見込む。