19秋冬ボディー&レッグファッション(4)/素材編~インナーの価値高める~

2019年06月21日 (金曜日)

〈ヴィオレッタ/国内工場の生産性向上/ヤギと連携強め販路開拓〉

 ヤギグループのヴィオレッタ(大阪市城東区)はガードルや補整下着に使われるストレッチ性の高いラッセル編み地メーカーだ。売上高の8割がガードル用生地やブラジャーのパーツによる。石川県加賀市の工場に32台、大阪府岸和田市の協力工場に10台のラッセル編み機を持つ。

 5月1日付で、ヤギ執行役員、イチメン(東京都渋谷区)専務などを歴任した外薗勝氏が社長に就いた。ヤギ入社以来、丸編み業界で30年近くビジネスをしてきた外薗社長は「いかに国内2工場の生産性を高めていくかが重要」と強調し、「インナー以外の売り先の開拓、新たな生地開発のためにヤギグループとの連携を強める」方針を示す。

 アウターの売り上げ比率はまだ少ないが、着実に採用実績が増えている。これまでナイロンなど長繊維を主体とした素材がメインだったが近年、綿高混率のパンツ素材の商品化に成功した。今後も綿など短繊維混のアウター素材の開発を続ける。

 2019年2月期は増収減益だった。主力のインナー素材で売り上げを底堅く伸ばした一方、エネルギーコスト、原料費、輸送費などのコストアップが減益要因となった。20年2月期は今期並みを予想する。

〈栄レース/創意工夫で新鮮な企画/アウターでも採用増加〉

 栄レースはリバーレースで世界市場の6割以上のシェアを占める。リバーレースは、量産可能なラッセルレースに比べ、より繊細で奥行きのある柄表現ができる。

 高級なレディースインナーのパーツとして使われることが多いが、同社は近年、リバーレースならではの表現の多彩さをドレスやジャケットといったアウター向けにもアピールしている。最近では海外の著名なブランドからの採用も増加しており、アウター素材としての認知度も高まっている。

 アウターでも存在感を高めている背景には、新たな柄、斬新なデザインを日夜、生み出し続けていることがある。デザイナーの発想や創意工夫をリバーレースならではの表現や技法と掛け合わせてできるレースが、アパレルの企画にこれまでにない新鮮さを与えるためだ。

 新たなレースのデザインを創造する自社デザイナーは日本、タイ、中国合わせて約30人を擁し、年間500柄を超えるリバーレース新柄を世に送り出す。

 生産はタイと中国がメインとなっている。青島工場には35台のリバーレース機がある。タイではチェンマイとメソートの2カ所に拠点を持ち、20台のラッセルレース編み機、52台のリバーレース機を持つ。

〈旭化成アドバンス/サステイナビリティーを重視/「ベンベルグ」「ロイカEF」前面に〉

 旭化成アドバンスは「ベンベルグ」やスパンデックス「ロイカ」による商品開発を強化しており、20春夏に向けては「サステイナビリティー(持続可能性)を意識した企画提案」に取り組んできた。

 ベンベルグや再生原料で生産する「ロイカEF」、国内外のメーカーから調達するリサイクルポリエステル、同ナイロン、アセテート、コットンなどを組み合わせた素材群を構築し「究極のエコ素材として打ち出したい」考えだ。

 同社はサステイナブル素材を冠ブランドに集約して打ち出す販促活動を検討しており、20秋冬をめどに新しいブランド戦略としてスタートさせる。

 このほか、春夏では商品科学研究所との共同で持続冷感素材群を開発。ベンベルグの優れた吸放湿性能をミックスした企画もラインアップし、持続冷感シリーズとしての売り込みに力を入れている。

 輸出の拡大にも意欲を示しており、中国拠点との協業、外注拠点の育成に取り組んでいる。香港のアンテルフィリエール展、インターテキスタイル上海などへの出展を通じ、中国を中心とするユーザー開拓を促進。現状で10%前後の輸出比率を21年度には20%に倍増させる。

〈東洋紡STC/好調「サイプス」の用途を拡大/原糸輸出を伸ばす〉

 東洋紡STCは20春夏に向けて、綿100%の吸汗速乾素材「爽快コット」やダウンウエア向けのヒット素材をインナー向けにアレンジした「シルファイン・プレミアム」、経編み用にビームで供給する「サイプス」などを重点的に打ち出している。

 中でも、ライバルの撤退でオンリーワン素材となったサイプスを「もっと幅広く活用したい」と言い、ドレスシャツやユニフォーム、婦人ボトムなどへの用途拡大を目指している。

 18年度でサイプスの販売量を1.5~2倍増へと引き上げており、19年度も拡大路線を維持したい考えだ。設備増強ではなく当面、現場ワーカーのシフト増で旺盛な需要に応えていく。

 同社はすでに20秋冬向けの総合展を開催している。インナー市場では「天然繊維が注目されている」と見ており、新たに開発した綿100%による吸湿発熱・保温素材「エアーエクシード」、通常レーヨンの2倍の性能をもたせた超吸湿発熱素材「セルフホット」を前面に秋冬商戦に臨んでいる。

 2019年度は、サイプスによるインナー以外の販路開拓、新素材の拡販でシェアアップを目指すとともに、中国内需をターゲットとする取り組みを強化し原糸輸出の拡大を計画する。

〈レンチング/原着、細繊度をインナーに/生分解性繊維のキャンペーンも〉

 レンチングはインナー用途にHWMレーヨン「テンセル」モダールの原着タイプと細繊度タイプを提案する。特に原着わたは環境負荷を抑えるエコ原綿として打ち出す。再生セルロース繊維の特徴である生分解性を訴求する消費者キャンペーンもスタートさせた。

 テンセルモダールの原着タイプは、欧州で野菜ネットなど包装資材用途で豊富な実績がある。染色が不要なことから、エネルギーや水資源の節約と廃水処理の環境負荷を抑えることができると同社は指摘する。

 こうしたエコ素材としてインナー用途にも提案を進める。約10色を用意し、他素材と混紡することで染色せずに杢(もく)調を表現できるのも特徴となる。一方、細繊度タイプは単糸繊度1デシテックス(T)と0.8Tをラインアップ。ソフトでラグジュアリー感のある風合いを表現できる。

 テンセルを環境に優しい繊維として打ち出す同社は、消費者向けに“メイク・イット・フィール・ライト”キャンペーンも開始した。ウェブサイトを通じて消費者に商品の品質表示を確認し、環境のために生分解性素材が使われた商品を選ぶことを呼び掛ける。日本語版サイトを開設することも検討する。

〈オーミケンシ/美容系の機能糸拡販へ/肌の保湿やpH調整効果〉

 オーミケンシは、インナーやレッグウエア用途で保湿や肌に優しいといった美容に関連した機能糸の販売を強める。

 その一つが機能糸「パフレ」。2018年上半期に開発し、加古川工場で生産する。混用率はマイクロアクリル60%・レーヨン25%・アクリレート系繊維15%。肌への保湿効果と肌を弱酸性に保つpH調整機能・消臭効果もある。

 保湿機能は、スクワランを練り込んだレーヨン「パポリス」によるもの、pH調整効果はアクリレート系繊維「サプリ」の機能だ。サプリは酸・アルカリを中和するため消臭機能も発現する。

 インナー、レッグ向けで環境をテーマとした商材もある。その一つが天然の植物由来のオイルをレーヨンに配合した「ボタニフル」で、ひまわり、アボカド、紅椿などがある。

 これまで短繊維での販売が中心で、フェースマスクなどの製品で売られてきたが、18年から糸での展開をスタート。全国各地の特産の植物からオイルを抽出しレーヨンに練り込むという“ご当地オリジナルレーヨン”の提案も行い、特産品開発をサポートする。

 両素材の販売はGSIクレオスと連携する。オーミケンシが糸で販売しGSIクレオスが製品や生地にするという商流もある。