合繊メーカーの不織布事業/次をにらんだ布石相次ぐ/増設・増産で海外需要取り込む

2019年08月07日 (水曜日)

 不織布事業で次代をにらんだ布石を投じる合繊メーカーの動きが活発化している。日本の不織布生産は輸入原反などに押され伸び悩みを強いられており、素材の高度化や輸出市場の開拓を目指す取り組みが盛んになってきた。合繊メーカーの次の一手を追った。

(堤 貴一)

 紙おむつ向けにポリプロピレンのスパンボンドを展開する旭化成と東レ。“爆買い”が一段落した影響で中国市場が失速していることへの懸念を強めているものの、「中期的にアジアの市場が拡大することは間違いない」(両社)とみており、今後の需要増を取り込んでいくための拡大戦略を緩める気配はない。

 旭化成は旭化成スパンボンド〈タイ〉を年産3万5千㌧から同5万㌧に増設する設備投資を進め、2021年3月に稼働させる。ソフト感を引き上げた新タイプの評価に取り組み、手直し、改良を重ねた後、新設備による量産に着手する。

 東レは紙おむつのプレミアムゾーンで需要増が続くとみて、このゾーンでの拡大戦略を中国・仏山、インドでの増設を交えながら20年度からの中期経営課題に織り込む。同社も次世代型素材の開発を急いでおり、「来年度中に出せれば」との構え。全社の不織布関連売上高を19年度で1千億円台に乗せる中期戦略を推進しており、「ほぼ達成できる」との手応えを示す。

 ポリエステルを主力にスパンボンド事業に取り組むユニチカと東洋紡。

 ユニチカは17年夏、タイの拠点、タスコを年産4千㌧から同1万㌧に増設しており、ここでの早期フル稼働に全力を挙げる。日本との連携で輸出市場の開拓を改めて強化し、グループとしての海外比率を19年度で40%台に引き上げるとともに、「早急に50%超に乗せる」。

 東洋紡は4月1日付の組織改正で、スパンボンド事業部をAC事業総括部と統合。AC・SB事業総括部に改称し、その傘下に新組織・不織布拡大戦略部を設立した。

 不織布使いのフィルターや吸着剤などを主力に展開してきたAC事業とスパンボンドやグループ会社の呉羽テックなどとを統合し、不織布事業トータルとしてのシナジー発揮を目指す。不織布、フィルターの両事業を一体化させ、「グローバルなマーケットに打って出る」戦略をスタートさせた。

 東レはポリエステルスパンボンド「アクスター」も展開している。17、18年度と大幅増販を達成し、「そろそろ増産を検討しなければ」との意欲を見せる。

 クラレクラフレックスはメルトブロー不織布を年産1800㌧から同2700㌧へ増設し、20年度(12月期)下半期に新設備による生産をスタートさせる。これまでは西条工場に設備を構えていたが、新設備を岡山工場に導入。

 岡山工場で生産するスパンレース不織布や乾式「クラフレックス」との複合品、多層構造品で早期に新原反を具体化したいとの考えを示す。

 クラフレックスでは輸出を拡大。製品展開する「カウンタークロス」を一定のボリュームに拡大させた時点で、カウンタークロスの裁断、箱詰めなどを行う物流拠点をアジアのどこかに開設する。