合繊メーカー 個性光る 婦人服地(下)/機能や感性に好機を見る

2019年08月20日 (火曜日)

 「機能素材でどれだけフェミニンさを表現できるかになる」――合繊メーカーの一社は20春夏向け婦人服地販売のポイントをそう説明する。サステイナビリティー(持続可能性)や環境対応への注目度は高まりつつあるが、機能や感性も欠かせない要素。「婦人ファッションにはフェミニン化の流れも見え、好機」と捉えている。

 東レは、革新複合紡績技術「ナノデザイン」から生まれた生地を打ち出す。ナノデザインは、従来の技術では制約があった複合繊維の断面形態を任意かつ高精度に設計でき、ポリエステル超極細微細捲縮(けんしゅく)糸使いの生地「ユーティーエス フィット」などが生まれている。

 ナノデザイン技術を駆使したものでは、このユーティーエス フィットに加え、ストレッチ生地「プライムフレックス マイクロタイプ」の訴求を強める。そのほかでは、高い遮熱性と紫外線遮蔽(しゃへい)性を持つ「ボディシェルEX」を展開。これまでスポーツ分野が中心だったが、婦人分野に初めて提案する。

 帝人フロンティアは、新フィブリル調ポリエステル織・編み物「フィブリット」を開発した。最高級シルクである天蚕(てんさん)の再現を目指して商品化した生地で、開発には過去のシルク調ポリエステル素材の高次加工技術を見直しながら新技術要素を取り入れた。

 優しい手触りと上質な外観を実現した。従来のフィブリル生地には、洗濯耐久性や防シワ性に弱点があったが、それらを克服。洗濯50回後もドレープ性とフィブリルを維持(同社調べ)する。薄地から中肉地まで幅広いバリエーションをそろえる。ブラウスやアウター用途などに提案する。

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、スポーツやユニフォーム用途は盛り上がりを見せるが、「五輪以降の減速」(合繊メーカー)を心配する声もある。衣料品市場全体の活性化に向けて、婦人分野への期待感は高まっている。それを支えるのが各社の素材力と言える。

(おわり)