特集 シルバー・介護ウエア(4)/商品開発の視点さまざま

2019年09月26日 (木曜日)

〈軽失禁対応下着が順調/DgS販路けん引役に/帝人フロンティア〉

 帝人フロンティアの生活資材本部ウェルライフ部は、軽失禁対応下着の販売を伸ばしている。吸水量や吸水力などが認められ、ドラッグストア(DgS)での扱いが始まったことで数字が拡大した。2019年度は取り扱い店舗数の増加やGMSでの展開も始まり、一層の成長を目指す。

 軽失禁に対応する下着では国内で生産している「ウェルドライ」シリーズ、中国の協力工場で作る「ヘルスケアラボ」シリーズなどを販売している。通信販売を主販路としていたが、DgSでの取り扱いがスタートしたことで一気に広がり、2018年度(2019年3月期)の売り上げは17年度の2倍になった。

 ウェルドライは、超極細繊維の「ミクロスター」による優れた吸水性が特徴のシリーズ。吸水3層パッド構造が横漏れをしっかりとガードするほか、抗菌防臭加工によって気になる臭いにも対応する。ヘルスケアラボの高機能吸水パンツシリーズは、シームレスタイプなどをそろえる。

 19年末から来春には紙おむつの発売を検討しており、“中失禁”市場にも参入する。今年4月から9月まで介護施設で着用モニターを行ったところ好評で、手応えを感じている。

〈吸水パンツの販売強化/モノ作りの発想も転換/片倉工業〉

 片倉工業は、軽失禁に対応する吸水パンツの販売を強化する。一般インナーで使われている肌触りの良い生地を採用するなど、モノ作りの着眼点を変えた。「これまでは、最初から高齢者向けに焦点を当てていた。そうではなく、通常のインナーを高齢者に合わせる形」に転換した。

 その発想から生まれたのが、20春夏に販売を始める「ケアするインナー」で、肌に優しいインナー「ケアコットン」シリーズの素材を活用する。改質した原綿を使い、生地表面を肌に優しい弱酸性に近づける。

 紳士では吸水トランクス(吸水量40㏄)のほか、半袖と七分袖のワンタッチ肌着を用意。婦人は吸水ショーツ(吸水量40㏄)、三分袖と八分袖のワンタッチ肌着をそろえる。病院売店や量販店などが販路となるが、通信販売での拡販を狙いたいと言う。

 紳士の軽失禁対応では「タフガード」も重点訴求。染み防止タイプ(吸水量5㏄)を販売してきたが、20春夏で吸水量が15㏄のパッド付きを新投入する。パッドの厚さは2・5ミリで、見た目は通常のボクサーブリーフと変わらず、洗濯して繰り返し使用できる。通販や量販、ドラッグストア販路を狙う。

〈「カインドケア」が伸長/海外市場への進出も/カインドウェア〉

 カインドウェアは、アクティブシニア向けのライフスタイルブランド「カインドケア」の販売を伸ばしている。ハイブランドに使われるような上質生地を使った衣料品、靴下、つえ、自助具など幅広い商品をそろえ、国内の約80店(直営店含む)で取り扱われている。海外での展開も検討に入った。

 カインドケアは、幅広い年齢層の高齢者をターゲットにしている。ただ、シニアや介護を切り口とするのではなく、親子2世代、孫を含めた3世代でも着用できるようなデザインが特徴。使用者の視点に立った商品開発を進めており、19秋冬では裏起毛を施して風を通りにくくした婦人ジャケットなどを投入する。

 販売は順調に推移し、これからも継続して力を入れるが、国内の高齢者向けビジネスの競争は激化するとみて、海外市場への進出を目指す。モノ作りの面では「19秋冬物から「世界市場を見据えている」と話し、早い段階でアジア市場の開拓に着手する。英語版のサイトも立ち上げる。

 海外での販売は、電子商取引(EC)サイトやOEM、シニアショップへの卸などを想定しているほか、ニーズがあれば直営店の開設も考えると言う。

〈トピックス/日本フイルコン/消臭レーヨン拡販へ/介護分野にも可能性〉

 日本フイルコンは、高機能吸着材「アドセップ」消臭レーヨンの販売拡大を図っている。肌着などでの採用が進む衣料品分野ではわたの提案をさらに強めると同時に、自社製品の充実にも力を入れる。アドセップ消臭レーヨンは高い機能を誇り、介護関連にも広がりを見せる可能性がある。

 両性イオン交換体とビスコースを分子レベルで融合することで、アンモニアや酢酸などの水溶性臭気成分に対してバランス良く消臭効果を発揮するとともに、瞬間消臭機能も持つ。消臭効果は洗濯によって回復する。吸湿性も向上するため、蒸れによる不快感の軽減にもつながる。

 アドセップ消臭レーヨンを使った糸は、19春夏で大手インナーメーカーの肌着に採用された。20春夏では「展開アイテムが拡大される話も聞いている」と言う。19秋冬シーズンからは靴下での展開が始まる。衣料向けは積極的に伸ばす。

 抗菌性をはじめとする別機能の付与やポリエステル複合(現状は綿との複合)などの開発を進め、自社製品も増やす。「ニオクリン」ブランドで展開する自社製品は靴下やタオル、肌着類が中心だが、20春夏では婦人インナーの販売を始める。