特集 ビシュウ・マテリアル・エキシビション(2)/ビシュウ・ヤーン・フェア/ウール中心に幅広い種類の糸

2019年10月04日 (金曜日)

 BMEの併催で開かれる糸の展示会「ビシュウ・ヤーン・フェア」(BYF)。新規を含めて意匠撚糸メーカーや商社、染工場など合計9社が出展する。ウールをはじめとした天然繊維を中心に幅広い糸を展示するほか、BMEと同様にサステイナビリティー(持続可能性)を意識した糸も並べる。

 出展するのは浅野撚糸、近藤、三幸毛糸紡績、滝善、豊島、豊島紡績、モリリン、高田編物、森保染色の合計9社。BYFは2016年から開催しており、今回で4回目となる。川上企業に情報発信の場を提供するとともに、川上から川下までの意思疎通の機会を創出し、新たな販路開拓を目的とする。

 昨年はBMEとBYF出展企業とのコラボ企画でエコをテーマにしていたが、今回からはコラボを取りやめ、各社単独によるオリジナルのサステイナブル(持続可能な)素材を打ち出している。会場を入った正面にサステイナブルゾーンを設け、約60点の生地を展示する。

 BYF出展企業も再生ポリエステルや美濃和紙、オーガニックウール、再生ウールなどの素材を使いサステイナビリティーを訴求。ウールそのものが天然繊維で生分解する素材であることや、吸湿や消臭、難燃、保温といった多様な機能を持っていることを訴求する企業もある。

〈浅野撚糸/特殊撚糸の和紙を提案〉

 浅野撚糸は高級タオル「エアーかおる」で使われている特殊撚糸「スーパーゼロ」のシリーズから「和紙」を中心に訴求し、スーパーゼロが持つ気化熱の機能もアピールする。

 スーパーゼロは紡績糸と水溶性糸を交撚し、紡績糸の撚りの逆方向へ2倍撚る。水溶性糸だけを溶かすことで、逆撚りが元撚り方向に戻ろうとするため隙間が生じ、膨らみが出るのが特徴。

 スーパーゼロの製法を生かして開発したのが和紙のスーパーゼロ。ストレッチ性やソフトな風合いに優れるのが特徴で、従来の和紙は糸切れが発生することが多かったが、ストレッチ性を付与したことで織りや編み立て性能を向上させた。

 スーパーゼロは吸水発散性が高いため、発汗すると気化熱で体を冷やし、その後保温する機能もある。

〈近藤/サステ、和紙、機能がテーマ〉

 近藤はサステイナビリティー(持続可能性)、和紙、機能性をテーマに新作の糸を打ち出す。基本は春夏向けで、一部秋冬向けの商品も出展する。

 キュプラと再生ポリエステル混の「エコナンシー」は、定番のキュプラとアクリル混の「ナンシークール」をリニューアルした。アクリルを再生ポリエステルに変更しサステイナビリティーを訴求する。

 和紙とポリエステル混の「カルタストレッチ」は、和紙のデメリットである糸の切れやすさを解消。和紙の原料である木材パルプやマニラ麻を独自の比率で混合した上でストレッチ性を持たせ、織布や編み立て性を向上させた。

 機能性ではキュプラと異素材の組み合わせでバリエーションを増やした。風合い重視でプラスアルファとして吸放湿性などの機能を備える。

〈三幸毛糸紡績/織物からニットまで対応〉

 三幸毛糸紡績はモヘアやウール素材を中心とした糸で織物からニット向けまでを対応できることを提案する。モヘア、ウールはともに天然繊維でありサステイナブル(持続可能な)素材としても訴求する。

 モヘア100%のタムタムヤーンは鮮やかなグラデーションが特徴。これまではニット向けの糸として捉えられることが多かったが、織物にも使えることを改めてアピールする。

 ほかにもウール100%のスラブ糸やモヘア100%のループ糸など形状にこだわった糸もそろえる。梳毛とモヘアを組み合わせた糸もあり、ウールが持つ吸湿や発熱性といった天然の機能を生かし、オールシーズン対応できることもアピールする。

 同社のモヘアは南アフリカ産で動物愛護を遵守している業者から仕入れている。

〈高田編物/新作の特殊リリヤン訴求〉

 高田編物は改造した設備を用いて開発した新作の「ツイスト・コード・リリヤン」「スラブ・リリヤン」「スイッチング・リリヤン」を出展する。

 ツイスト・コード・リリヤンは編みと撚糸を同時に行い、内糸に隙間なく糸を巻きコード風に仕上げた。従来のコード撚りに比べ軽くて柔らかく、内糸に使用する糸によってストレッチ性も付与できる。

 スラブ・リリヤンは1本のリリヤンで編み度目を変えて編むことにより、スラブのようムラを作り出す。度目が詰まっている箇所は撚りを入れることでより細くすることもできる。最大で約3倍の度目差を付けることができる。

 スイッチング・リリヤンは1本のリリヤンで異なる素材、色の切り替えができる。素材、色で最大6パターンの組み合わせが可能。

〈滝善/得意の美濃和紙を提案〉

 滝善は得意とする美濃和紙を基本としながら、ウールや綿といった素材を組み合わせた差別化糸を訴求する。和紙を使うことでのサステイナビリティー(持続可能性)も提案する。

 美濃和紙と綿混のストレート糸「ブーマーC」は毛番換算で27番単糸。これまで和紙使いの糸は太番が主流であったものの、編み機が限られることが多かったため、細番にすることで生地の用途を広げた。

 美濃和紙使いではほかに、レーヨン・綿混の「ネロ」やポリエステル・綿混の「ミギー」といったストレートタイプの交撚糸もそろえる。いずれも多くのカラーを備蓄しており即納に対応する。

 さらに、昔から秋冬の定番である糸もそろえた。「コーラル」はアンゴラ・ウール・レーヨン・ナイロン混のトップ糸。光沢やソフトなタッチを特徴とする。

〈豊島/綿・毛・合繊で差別化糸〉

 豊島は「BYF」の常連組であり、今回展でも綿糸、梳毛糸、合繊糸でさまざまな差別化糸を打ち出す。

 綿糸では「サイロスパン」精紡のコンパクト糸「スプレンダーツイスト」、スペイン産ピマコットン使いでサイロスパン精紡による甘撚り糸「サンリットメローズ」、トルコ産オーガニックコットン使いを訴求する。

 梳毛糸では再生ウールを使った「アプリクション」やノンミュールシング羊毛使い「ローバー」に各種ファンシーヤーン、合繊糸ではナイロン66「コーデュラ」のほか、ウールライクなポリエステル長繊維「ウールナット」や麻調ポリエステル長繊維「FLD」などを提案する。

 廃棄予定の食材を染料に使用する「フードテキスタイル」の新提案も間に合えば出品する予定だ。

〈豊島紡績/トライスピンの意匠糸展示〉

 豊島紡績はタム糸やループ糸、ブークレ糸などのファンシーヤーンや新作のバルキー糸を展示する。サステイナブル(持続可能な)素材としてはオーガニックウールを提案する。

 ファンシーヤーンは自社のトライスピン機で紡績。素材はモヘアやノンミュールシングウール、シルクなどを使い、ハリ・コシや光沢感などを表した。

 新作はアクリル90%・ウール10%の「グリフィー」。バルキー糸ならではの軽さと柔らかさが特徴で24色備蓄販売する。主にセーターや靴下などの用途を狙う。

 ほかにも、ループが鈴なりに連なったブークレ糸「ランディーマルチ」に加え、これまで展開してきた糸もブックで展示する。

 横編み、丸編み、織物向けでオーガニックウール100%のモノ作りも訴求する。

〈森保染色/羊毛の素晴らしさ訴求〉

 森保染色(愛知県一宮市)は「ビシュウ・ヤーン・フェア2度目の出展になる。今回展では「羊毛の素晴らしさ」を訴求するとして、スケールをそのまま残すことで洗える防縮ウールなどの提案に重点を置くほか、各種機能加工はじめさまざまな加工技術を打ち出す。アラミド繊維紡績糸の染色技術や次世代を」にらんだ金属メッキによる導電糸の提案もその一つになる。

 羊毛は冬は暖かく、夏は涼しい、撥水(はっすい)性、吸湿性、難燃性はじめさまざまな特徴がある。その特徴を維持しながら、独自技術により、弱点である収縮性などを抑える技術を打ち出す。

 導電糸によるスマートテキスタイル提案も行う。5~10年後の本格化を見据えたもの。タッチセンサーなど製品を出品することで来場者の同分野への関心を高める。

〈モリリン/エコ、サステな機能糸〉

 モリリンは「BYF」に毎回出展するが、今回展は「クールマックスエコメイド」をメインにしながら各種差別化糸を提案する。

 吸水速乾ポリエステルとして知名度の高い「クールマックス」。その原料の97%をペットボトルなどの再生資源としているのが、「クールマックスエコメイド」になる。20春夏向けに衣料から資材まで幅広い展開を見込む。

 同社はエコロジー、サステイナビリティー(持続可能性)を重視しながらも、機能性を持つ素材販売に力を入れている。クールマックスエコメイドのほか、オーガニックコットンとUVカット機能を持つ「テンセル」モダールとセルロース繊維をわた段階で改質することで消臭効果を付与した「デオセル」の3者混による「セルエコロ」も機能エコ素材になる。

〈学生向け情報コーナーも〉

 BMEでは会場の中央にインデックスコーナーを設け、各社が共有するネリーロディー社のトレンドコンセプトを基に開発した生地120点に加え、その一部を製品化したガーメントも展示する。さらに、4月の春夏展に引き続き学生を対象とした就職情報コーナーも置く。

 今回のネリーロディー社によるトレンドコンセプトは「アウトドアフィーリング」「アーバンバイブレーション」「アルカイックフューチャリズム」の三つ。出展企業はそれぞれのコンセプトに応じたモノ作りを行った生地を並べる。

 就職情報コーナーは4月の春夏展で初めて実施。学生と尾州の企業の橋渡しを担い、両者をマッチングする。産地の魅力を発信するために、尾州の企業で働く人をクローズアップしたパネル展示も行う。