再生ポリエステルを進化・拡張/バイオ由来・生分解性もラインアップ/合繊メーカーのサステイナビリティー

2019年10月16日 (水曜日)

 サステイナビリティー(持続可能性)に配慮した素材を前面に打ち出そうとする合繊メーカーの機運が高まってきた。昨年あたりから再生ポリエステルへの引き合いが高まっていたが、「欧米スポーツアパレル企業との商談ではエコ素材でなければ相手にしてもらえない」「どこもかしこも環境一辺倒」という最近の状況を踏まえメーカーは、エコ素材トータルをプロモートするブランド戦略や消費者のリサイクルへの意識を高めるための取り組みを強化し始めた。各社の動きをまとめた。(堤 貴一)

 ユニチカトレーディングはあらゆる用途をターゲットに、ケミカルリサイクルで生産する再生ポリエステル「エコフレンドリー」による企画提案を進めている。同社はエコ素材としてポリ乳酸繊維「テラマック」などもラインアップしており、来年度スタートさせる新しい中期計画で「エコ素材全体をひとくくりにして売り込んでいきたい」との意欲を示す。

 旭化成アドバンスは、キュプラ繊維「ベンベルグ」や再生スパンデックス「ロイカEF」、再生ナイロン、同ポリエステル、アセテートといったエコ素材を統合した新しいブランド戦略を近々立ち上げる。11月の独「パフォーマンス・デイズ」でデビューさせ、その後、国内のスポーツ展、アウター展などで披露する。GRS(グローバル・リサイクルド・スタンダード)やブルーサインのような認証を早急に取得し国内外に発信する。

 東レは新たに「&+(アンドプラス)」を導入した。協栄産業と連携し、異物や黄ばみを除去した高品位な原料から生産するペットボトル再生ポリエステルを開発。白度の高い多彩な品種を構え、生活資材を含む衣料全般に展開する。2020年に300億円の販売を計画。約3万トン(糸・わた換算)のペットボトルに相当するという。東レはペットボトルをリサイクルする活動を社会的なムーブメントに引き上げ、循環型社会の構築に貢献したいとしている。

 東洋紡STCは、12月に開催する「東洋紡グループ繊維総合展」で、バイオ由来の原料から製造するポリエステル「エコールクラブ・バイオ」、生分解性素材「ダース」を出展し、販促活動を本格化させる。

 エコールクラブ・バイオでは、ポリエステル長繊維によるテキスタイルを投入。東洋紡本体が展開する生分解性原料の繊維化でダースの開発を進めており、海外メーカーへのOEMで量産に移行したいと考える。

 帝人フロンティアは、衣料繊維、産業繊維の双方でエコ素材の拡販に取り組み、現状で販売量(生地換算)の30%を占めるエコ素材の比率を20年度には60~70%に引き上げる。

 クラレトレーディングは、今日16日開幕の「北陸ヤーンフェア2019」に部分バイオポリエステル「バイオベース」を出展し、販促を開始する。三菱ケミカルは、トリアセテート繊維「ソアロン」だけでなく再生ポリエステルも今後多用していく。

 一方で課題もある。再生素材の生産には相応のコストがかかる。このコストアップをサプライチェーン全体で「分かち合うという形にもっていかないと、一過性のブームで終わってしまうのでは……」と懸念する声が少なくない。